1998年
家に帰ってからネットで1998年を調べた。年間の自殺者が三一、七五五人、前年の二三、四九四人から跳ね上がっていた。
僕の知識では、1998年という年は冬季長野オリンピックが開催された年であり、日本が初めてサッカーワールドカップに参加した年、そんな華やかな時代だった。
「そんな時代だったのか」
僕はスマホで写真に撮って保存しておいた学校新聞のコラムと、夢ちゃん先生から預かった冬也さんの手紙をもう一度見た。
不器用で硬派な、今の僕と同じくらいの年齢の、遠い昔の高校生。
どんな気持ちで、どんな期待を持って手紙を渡したんだろう。
きっと得意げに謎ときを説明して、そしてそのあとで気持ちを伝えるつもりだったんだろう。その瞬間を想像したらワクワクして夜も眠れなかったかもしれない。
でも、その瞬間は訪れなかった。
言いたいことがあったのなら、言える時に言わなければいけなかったと、後悔を背負いながら今でもどこかで暮らしているのだろうか。
暗闇に映った会議室のこちらと向こうのように、決して交じることもなく、触れることもできない幻でしかない記憶。
謎を解くまでもなく、コラムと手紙を見れば、「彼」がどういう気持ちだったのは明らかに思えるのに。
それでも、僕たちは謎を解かねばいけなかった。何が出てくるのかは分からないけれど、タイムカプセルを開かなければいけなかった。




