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首吊り死体が呪う村、痣のスミレの狂い咲き  作者: 藤野
第六章 戻らない日常
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入れ替わり

 僕達が鳥居を潜ったとき、女の人達が喧嘩をしているような声が聞こえた。


 まさか……松園家と竹園家の?


「あ……。香寿さん、あそこです、見てください」

 スミレさんが遠くを指差す。

「愛さんと愛子さんだ。あの二人が喧嘩なんて、まさか家の入れ替わりのことじゃ……」


 不安になって、スミレさんと二人で木の影に隠れて近くまで行き、様子を伺う事にした。雨音も酷いというのに、ここまでハッキリと聞こえてしまう。



「そんなこと……! わたくし少しも存じませんわ」

 愛さんが叫ぶ。

「知らないことは言い訳にはなりませんのよ。決まりは決まりです」

 愛子さんが小馬鹿にしたような態度で言い、愛さんをますます怒らせている。


「茂さんも、なぜ愛子さんだけ贔屓にしてらっしゃるの? これじゃあいくら嫁がいないからと言って、ちょっと悪趣味すぎやしませんこと?」


 二人をなだめようとする茂さんを、愛さんは馬鹿にした。どうやら、茂さんと愛子さんが不倫関係にあったから、茂さんが愛子さんを贔屓したと言いたいらしい。

 もちろん、そんなことは無いんだけど……。


 怒った素振りも見せず、茂さんは言う。


「そらあね、愛さん。急に入れ替われだなんて無理でしょうから。別に、今日入れ替われなんて言いませんよ。ただ愛子さんが言った通り、これはこの村の()()()なんです。いやぁ、事前に伝えておけば良かったんですが、これは完全に私の失態です。……申し訳ありません」


 茂さんが頭を下げたので、愛さんは怒ったような絶望したような表情で行ってしまった。ずかずかと大きな歩幅で歩き、村人がそれを避けている。


 流石に泣いてはいなかったが、浩一さんが亡くなったときより、はるかに落ち込んでいた。それほど壮一郎さんは愛情を込めて育てられたんだろう。

 ……もっとも本人は愛情深く育ったとは思えないし、愛さんの〝愛情〟は、もっと歪んだものだったかもしれない。


 でもなんだか、痛々しい。


 人が死んでも自分達の地位が上がる事で満足気に微笑んでいる竹園家の人達が、僕はなんだか恐ろしかった。



「スミレさん……、参拝、しましょうか」

「はい」



 嫌な物を見てしまった。変に重苦しい空気の中、僕とスミレさんは、いつもと同じように、()()()()()()手を合わせた。


 ザーザー降る雨に、尚更憂鬱だった。

 明るい時間帯のはずなのに暗い空が不気味で、僕達は足早に神社を離れた。

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