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首吊り死体が呪う村、痣のスミレの狂い咲き  作者: 藤野
第六章 戻らない日常
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松園壮一郎

 次の日の朝も、雨はひどく降っていた。

 起きてから居間に行くと、姉さん達とスミレさんがいる。どうやらお母さんは、まだ寝ているらしい。


「疲れてるよね……」

 僕が呟くと、愛花姉さんは、

「お母さん、優しいから」

 そう真顔で言った。

 すると何か思う間もなく、玄関の方から扉を叩く音が聞こえた。

 かなり焦っている様子だ。


「すみませーん!」

 大声が聞こえる。この声は……瀬戸さん?

「ちょっと待っててくださーい! すぐ開けます!」

 愛花姉さんが答えるように叫んで、行ってしまった。


「瀬戸さん、ですよね」

 スミレさんに耳打ちする。

「多分……」


 ざわざわしながら待っていると、顔を真っ白にした愛花姉さんと瀬戸さんが居間に入ってきた。


「壮一郎さんが……亡くなったって……」


 愛花姉さんが、たった一言、そう呟いた。


「……茂さんと私が見つけたの。村を、案内してもらってて……。首を、吊ってた」

 瀬戸さんが続ける。明らかにこんなに首吊りが続くのは異様だ。それを皆感じているからか、漂う空気に恐怖が色濃く滲み出ている。


「場所は? 場所はどこなんです?」

 結愛姉さんがたどたどしく言うと、瀬戸さんは、

「お墓の周りに生えてる木だよ」

 そう言った。


「そんな……まさか縄垂らしじゃ……!」

 結愛姉さんが怯えた表情をして言う。

「結愛ちゃん、大丈夫。もし本当に縄垂らしだったんなら、壮一郎さんは参拝を怠ったってことだよ。結愛ちゃんがしっかり参拝すれば、大丈夫」

 瀬戸さんが優しい声色で言って、結愛姉さんの背中をさすった。


 でもきっと、瀬戸さんは縄垂らしがやったなんて思っていない。

 そしてこの中で確実に人がやったと思っているのは、瀬戸さんとスミレさんと千愛姉さんと僕だ。

 結愛姉さんは完全に縄垂らしを信じきっているし、愛花姉さんは半々だろう。


 もし、この村に伝わる怪談の縄垂らしそのものならば、確かに参拝を怠れば出てくるはずだ。

 でもきっと亡くなった人達は参拝は怠っていないだろうし、妖怪に殺されたわけでは無いだろう。誰かが殺意を持って、何らかの動機で殺した。



 ……誰が?



 その誰かは、いつ誰にその殺意を向けるのだろう。例えば急に僕が殺されるかもしれないし、スミレさんも……。

 犯人の頭の中ではもうすでに殺す人を決めていて、その中にスミレさんが入っていたとしたら……。

 計画の一つ一つをただただこなすような殺人だ。そこに感情が働いているように思えないから、人がやっているんだと思ってもどうしても縄垂らしの存在がちらついてしまう。


 ——気味が悪い。


「取り敢えずさ、皆……参拝に行こっか」

 愛花姉さんのその一声で、それぞれ立ち上がった。

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