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9.収納石

『お!ここは装備品置き場か!ケラ、この辺の物手当たり次第に収納していけ!』

『本当にいいの?泥棒じゃない?』

『馬鹿野郎!俺の体盗んだお前が言うな!それにこの世の全ては俺の物なんだよ!』

『ちょっとそれ強欲過ぎじゃない?』

『魔王ってのはそういうもんなんだよ!それに武器や防具があるから争いが起きるんだ。だったら俺が回収して争いを未然に防いた方がいいだろ?』

『!!!おお!確かに!!』


 この時は魔王の勢いに飲まれてそう思ったけど、後から考えたら、人と争い起こしている魔王が言う のおかしいよね?




 そうして建物の中に入り、手当たり次第扉を開けて、魔王が指示してくるもの・・・っていうか目についた物全てを収納していく。・・・・机とか役に立つのかな?

 たまに追いかけてきた兵士さんに扉の前を塞がれて、部屋に閉じ込められたりもしたんだけど・・・。


『あいつら入口塞いで良い気になってんぞ!ガハハハ!!!そんなんで俺を閉じ込めたつもりか!出口が無ければ作ればいいんだよ!ケラ!壁をぶち破れ!』

『ぶち破るとか出来ないよ』

『うるせえ!やれって言ってんだよ!とにかく強く当たれ!それで無理ならまた考える』


 絶対無理だろうなあ。と思いながらも魔王の言う通り、壁に体当たりすると、簡単に壁が壊れた。




・・・・・・・



この建物見た目より、作りはしっかりしてないみたいだ。ただ、見た目に騙されていたのか、兵士さんが驚く。


「はあ?嘘だろ!」

「あいつ無茶苦茶だ!」

「馬鹿野郎!驚いてないでさっさと止めろ!」


 驚いているうちに壁を抜けて隣の部屋に行くと、兵士さんが僕を追ってくる。


『よーし!ケラ!適当に壁を突き破って上への階段探せ。あと、俺が指示した物は収納していけ!アーハハハハハ!おもしれええ!』


 何が楽しいんだろう。




 こっちは捕まれば怒られるから必死なのに!




■

 あれから魔王の指示通り、階段を見つけて2階にあがり2階の物も片っ端から回収、そしてまた上の階へ上ってを繰り返してたら、4階は無くて屋上に出た。見た感じ特に何もないし、隠れる所もないから、いよいよ追いつめられたかもしれない。これはもう観念するしかないね。




「ごめんなさい、許してください」


暫く待つと、ようやく追いついてきた兵士さんに僕は頭を下げて許しを乞う。全部魔王のせいなんです。


「はぁ、はぁ、き、貴様。はぁ、ようやく・・・追いつめたぞ」

「頼むからもう逃げるな」

「これ以上建物を壊さないでくれ」

「その常に謝っているのは、煽りか?」


 ようやく追いついてきた兵士さん達は、疲れて息を切らしている人もいれば、こっちに頭を下げたり、泣きそうな顔した人もいる。みんな僕との追いかけっこでかなり疲れたみたいだ。・・・僕?僕は全く疲れてないなあ。流石魔王の体、体力もバッチシだ。


『先に謝っちゃったけど、もう終わりでいいよね?』

『うーん、ここから飛び下りて逃げるって手もあるんだが・・・こいつらの様子じゃ多分もう追ってこねえだろうな。よし!今日はここまでにして捕まるか。こいつらがここから何してくるかも気になるしな』

『今回の懲罰室は長そうだよ 。楽しんでいるけど、フィロスさんの方はいいの?』

『ケラを成仏させて、俺の体取り返せねえとどうにもならねえだろ。あいつはいつか殴ればそれでいいや。それよりも今はこっちだ!楽しくて仕方ねえ!』




 うーん。魔王は目の前の楽しい方に飛びつくタイプなのかな?



 そうこうしているうちに、兵士さんに捕まり、いい加減見慣れてきた懲罰室まで連れてこられて、いつものように鎖のついた枷を手足に嵌められる。ここからはいつも通り、兵士さん達からボコボコと殴られる。昨日までと違うのは今日は、普通に僕を殺す気で攻撃している事だ。何人か普通に剣で斬りかかってきたんだもん。びっくりしたよ。


 でもまあ、流石魔王の体、剣で攻撃されても全くダメージが通らない。逆に剣をはね返すぐらいだった。一体何を食べたらこんな体になるんだろう。



『今日もいつも通りでつまんねえな。何か俺を楽しませてくれると期待してたのによお』

『もう、今日は兵士さん達も疲れたみたいだし、大人しくしとこう。ね』


 僕ももう今日で三日目だから、兵士さん達の動きに昨日程のキレがないのが分かる。昨日と違って手に持っているのは剣とかナイフとか殺傷能力高そうなものばっかりだけど。


『それじゃ楽しくねえだろ!もうひと捻りいくぞ!取り敢えず叩かれた衝撃を装って枷の鎖をぶっ壊せ』


 だというのに魔王はまだ楽しむみたいだ。


『あんまりすると兵士さん泣くかもよ』

『俺に攻撃してくる方が悪いんだ。むしろこの程度ですんで勘弁しろってんだ!ほら!ゴチャゴチャ言わずに早くやれ!』

『はあー。これ以上兵士さんを疲れさせたら、僕はもう、言う事聞かないからね』


 一応魔王に注意してから、手足に力を入れて枷に繋がっている鎖を引き千切る。出来るか疑問だったけど、普通に出来た。魔王の力って、こんなに凄いんだな。 


「おい!こいつ!」

「逆らうつもりか!押さえつけろ!」

「応援を呼べ!」


 魔王の力に驚いていると、辺りに笛が鳴り響き・・・次の瞬間。


 うわー。なんか凄い数の兵士さんが懲罰室になだれ込んできた!!っていうか殴られた時の衝撃で引き千切れた感じだしたよね?何でこうなるの?


 物凄い数の兵士さんが懲罰室に入ってきて、僕を取り囲む。


「さ、逆らいません!大人しくします!」


 あまりの密集度に怖くて、両手を挙げて害意が無い事を僕はアピールする。


「なら何で鎖をちぎった!」


 けど、すぐに兵士さんから大声で否定された。


・・・・・あれー?また僕の演技下手だった?


『お前くっそ演技下手!引き千切ったのもろにバレてるじゃねえか!』


・・・・・魔王、うるさい!


「ちぎってないですよー。体重かけたら千切れたんですって」

「嘘つけ!お前『フンッ!』って言っただろ!」


・・・・・


『言った?』

『言ってた。ブフッ!!フフ!!!ギャアハハハッハ!』


・・・・もう!魔王は!!笑ってないで教えてよ!


「いえ、言ってないですよ。その証拠に・・・ほら!全然大人しいでしょ?」

「信じられるか!貴様何を企んでいる!」


 企んでないです・・・って言っちゃ駄目?何で?・・・ええ・・・魔王の後ついて言え?


「えーっと。ウワーハハハハ!いい加減・・・大人しく・・・鎖に縛られているのも飽きた!・・・・俺を・・・楽しませろ!!・・・ウワーハハハハ・・・うええええ?魔王何言わせるの?」

「貴様!」

「やっぱり何か企んでんじゃねえか!」

「俺達は楽しくねえよ!」

「鎖に繋がれてる奴は、普通飽きたとかって言わねえぞ!」


 兵士さん達がすんごく怒り出した。


『うわあああああああ!魔王のせいで兵士さん達が凄い怒り出したじゃないか!』

『大丈夫だ。今日はここから逃げるつもりはねえから、兵士どもは疲れねえ。言われた事は守ってるだろ!次は向こうの出方だ。暫く待機してろ』




「くそが!これでどうだ!」

「鎖の数は手足それぞれ倍にしたから、これで動けないだろ!」


『やれ!』


 魔王の指示で今度は明確に鎖を引き千切る。もう演技しても誤魔化せないって分かったから、素直に従うよ。


「ああああああああ!!こいつまた!」

「何でそんな簡単に鎖引き千切れるんだよ!」

「こいつ絶対『経験者』だろ!誰だよ!こんなのここに連れてきたのは!」


 強制的に連れてきたのはそっちなのに、なんか酷い言われようだなあ。


『ハハハハ!よし!次は枷をぶっ壊せ!』

『えー。まだやるの?』

『うるせえ!文句言うならここから逃げる作戦に変更するぞ!』

『わ、分かったよ。やるよ』


 流石にここから逃げ出す作戦は今日は疲れた兵士さんが可哀想なので、魔王の指示通り、枷を掴んで引き千切る。


「うわああ!こいつ!手枷もぶっ壊しやがった!」

「誰か新しい枷を持ってこい!」

「一番ごっつい枷だぞ!急げ!」


 そうして必死に慌てる兵士さん達を見て、魔王はご機嫌で大笑いしている。


『アーハハハハハ!こいつら必死過ぎ!くっそ笑える!アーハハハハハ!』


 魔王は性格悪いなあ。




■

「くそ!頼むから大人しくしてろよ!」


 あの後、凄い大きな手枷を嵌められたけど、ちょっと力を入れたらすぐに壊れた。この時点で懲罰室に縛り付けられないと判断されて、何故か3班の牢屋に僕は戻された。・・・・何で?よく分かんない。



そして魔王?



 戻ってくる途中で満足したのか「寝る」とか言ってそれから話しかけてこなくなった。





 魔王、ちょっと自分勝手すぎない?



 で。3班の牢屋に入れられたら、兵士さんからこの言葉だ。魔王ももう寝たみたいだし、無茶な事は言われないだろうから、大人しくしているよ。

 





「はあ?食いものや装備品だけじゃなくて、着替えやベッドも?何言ってんだ?」

「マジでヤバイぞ。あれだけ大量の物を誰がどうやって盗んだんだ?」

「いや、信じられねえよ。俺ちょっと見てくるわ。っていうか明日からの飯どうなんだよ!」



 兵士さんの姿が見えなくなってしばらくしたら、遠くから大声で騒ぐ兵士さん達の声が聞こえてきた。


・・・・あー。魔王が手当たり次第収納しろって言ったから、兵士さん困ってるじゃないか。やっぱり返してあげた方が・・・・。


「明日からはあいつらの飯で我慢するしかない」


・・・ん?


「じゃあ、あいつらの飯は?」

「しばらくは無しでいいだろ」

「大丈夫か?何人か絶対死ぬぞ」

「死んだらまた攫ってくればいいだけだ」



・・・・・・ふーん。折角返してあげようと思ったけど、兵士さん達そういう事言うんだ。それならやっぱり返すのやめーた。



「36番、少し話がある」


 兵士さん達の会話が聞こえなくなってしばらくしたら、班長さんが話かけてきた。結構深刻そうな顔しているけど、何かあったのかな?


「まず、お前今日は体大丈夫か?結構痛めつけられただろ?」

「大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」


 僕の事を心配してくれるなんて、なんていい人なんだ!


「それでな、連日で情けねえんだが・・・」

「ああ!分かりました、またお腹空いているんですね?いいですよ、今日は一杯手に入りましたから」


 そう言ってさっき貰って来た兵士さんの食べ物を取り出した。班長や班のみんなはそれを見て目を輝かせたけど、すぐに曇った表情に変わった。どうしたんだろう?


「情けねえ話で悪いんだけど、他の班の連中も腹を空かしているんだ。分けてやっちゃくれねえか?」

「ああ!そういう事ですか!だったら今日たくさん貰ってきたから分けてきますね」


 今日兵士さんから貰ったのは魔王の物じゃないから、僕が勝手にあげても文句は言わないだろう。3班の牢屋から出て他の班の牢屋に行き、人数分のパンと干し肉を配ると、みんな夢中で食べてくれた。


 そうして配り終わって自分の牢に戻ると班長が出迎えてくれた。


「36番、ありがとう。マジで助かるぜ。ただ、ずっと聞きたかったんだけど、お前食べ物何処から出してんだ?」


 そっか。知らない人からしたら、全然分かんないもんね。って事で僕は一から説明する。


・・・・


「・・・・・収納石・・・いや、ねえよ!」


 説明を最後まで聞いた班長達の言葉がこれだ。確かにすぐには信じられないとおもうけど、本当の事なんだ。そもそも収納石っての自体知らないんだろうか。


「収納石ってのも無いんですか?」

「似たようなのに魔法鞄ってのが出回っているが、名前の通り見た目まんま鞄だぞ。お前の耳についた石に収納なんて聞いた事ねえよ。それに、お前の収納石の収納量おかしいからな」


 普通は見た目の10倍ぐらいの容量だそうだ。って事は魔王の耳についた小さな石は、収納量が明らかにおかしいレベルだって事は分かった。けどまあ、魔王の持ち物だし、こんな凄いの持ってても不思議じゃないかな。


「実際見たからその石の事については信じてやるよ。それよりもそんな凄いの持っているって知られたら、奪われるから黙っておけよ」


 確かに普通ならそうなんだろうけど、流石魔王の持ち物、その辺はしっかり対策されている。


「大丈夫です。僕の魔力以外だと収納も取り出しも出来ません」


 何故か魔法は使えないけど、魔王の魔力は流れているみたいだから、収納石は使えるって魔王が言ってた。


「それでも奪う奴は絶対でてくるぞ」

「それも大丈夫です。見ててください」


 そう言って僕は耳に着いた収納石を取り外して牢屋の外に投げる。その行動に驚く班長。


「おい!あんな小さな石見つけるの大変だぞ!お前、何がしたいんだよ」

「大丈夫です。ほら、この通り」


 そう言って既に石が戻ってきている耳を見せる。これも聞いてもよく分かんなかったけど、魔王の体から3秒以上離れたら自動で戻ってくるすごい機能がついているんだって。

 

「ど、どうなってんだ?いや、俺もそこまで物知っている訳じゃねえけど、そういうものが出回る所には出回ってんのか?」

「さあ、どうなんでしょう?」


 そう聞かれても、これ魔王のだからなあ。聞きたいけど今、寝てるから起きてから聞いてみよう。

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