↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

5.初めての祈り

 レビの街に着いたら入口の門番に当たり前のように捕まり、話をしたら僕の事を逃亡奴隷と決めつけられた。そこからは動きは速かった。その日の内に荷馬車に詰められ鉱山に出荷。そしてその道中・・・


『ふざけんなよ!街入るのに身分証がいるとか何でてめえは知らねえんだよ!人界の事だろ!』


 魔王が凄い怒っている。・・・・けどそんな事言われても、村しか知らない僕は身分証なんて初耳だったんだ。そもそも僕持ってないし、村長が僕の身分証を持っているなんて話も聞いた事がない。


『いやあ、でも「半魔」で「身分証無し」は「逃亡奴隷」って決めつけ早かったね』

『感心してんじゃねえよ!魔王の俺が「逃亡奴隷」って何だよ。はぁー。格好わりー』

『そうだよね。「逃亡奴隷」じゃなくて「追放魔王」だもんね』

『よし、ケラ!俺に喧嘩売ってんな?いいだろう買ってやるよ。かかってこい!』


 それって自分で自分を殴れってこと?相変わらず魔王はおかしな事を言うなあ。


『それよりさあ、鉱山に教会はなくても、神父さんってのがいるみたいだから、一応僕を成仏させる目標に一歩近づいたね』


 捕まった時に兵士さんに聞いたら、「鉱山に教会はねえが、神父がいるぜ。まあ、鉱山は神父の仕事が大量だからな。お前もいずれ神父の世話になるだろうよ。ケケケ」って教えてもらった。


『目標から5歩ぐらい下がってねえか??チッ!まあいい、ケラが成仏したら、その時は俺は自由の身だ。俺をこんな目に遭わせたんだ。フィロスをボコるより先に人界を荒らし回ってやんよ・・・いや先にこっちを征服してからフィロスの所に行くのもありだな』


 そんな感じで魔王と話ながらズタ袋を被る僕は、荷馬車で運ばれる事・・・・数日?よく分かんないけど気付いたら、鉱山に着いていた。



・・・・・

 

「地獄にようこそ!!今日からここがお前の仕事場だ。で、ここにいる連中がお前と同じ班の奴らだ。仕事の詳しい指示はそこにいる班長に聞け!」



 鉱山の警備兵みたいな人に引き渡された僕は、手枷足枷をされたまま、引かれるように案内されたのがここ3班の牢屋だった。



「ど、どうも。ケラって言います」


 まずは紹介された班長さんに挨拶をする。班長さん・・・っていうかこの班のメンバー全員やつれているなあ。・・・魔王じゃない時の僕みたいに骨と皮だけだ。!!あれ?みんな小さいながらも角がある!もしかしてみんな半魔なの?


「枷は外すけど、ここから逃げようなんて考えるなよ。かなりの数の兵士で見張っているからな!少しでも逃げる素振り見せれば即殺す!」



 僕の自己紹介に班の皆はチラリと僕を見ただけだった。代わりに付き添いの兵士さんが枷を外してくれながら、注意事項を教えてくれた。


「神父さんに会えますか?」

「・・・・・それは班長に言え。要望を挙げれば運が良ければ話を聞いてもらう事もあるみたいだ。そもそも・・・・」


 


・・・・・



 兵士さんが教えてくれて分かったことは、ここでは班単位で仕事と生活をするらしい。要望も班長から挙げられたものしか通らないそうだ。班長でない人が兵士にいくら言っても殴り飛ばされて終わりらしい。だから班では班長の権力が絶大で、誰も逆らえないみたいだ。


「おい!後の説明はお前らでやっておけ!」



 途中から説明が面倒になったのか兵士さんは、班のメンバーに指示を出してどこかに行ってしまった。





・・・・・・・




「あ、あのー。ぼ、僕はケラって言います」


 兵士が去った後も、班員が僕を警戒している感じがして、その空気に耐えられなくなり、もう一度自己紹介をしてみる。


「聞こえてるっての!」

「名前とか意味ねえんだよ」

「あー。・・・こいつ・・・多分半年持たねえぞ」



 自己紹介したのに結構な答えが返ってきた。あんまり友好的じゃないのかな?まあ、村で友好的な人なんていなかったけどね。





「行った」


 1人牢屋に顔を付けて耳を澄ましていた男がその言葉を口にすると、全員からの緊張が緩んだ気がした。


「よし、35番はそのまま見張ってろ・・・それで新人、お前にいくつか注意しておく。まずは兵士がいる時は話しかけてくるな!機嫌悪ければそれだけで罰を受ける。それから名前。ここじゃ名前じゃなくて番号で呼ぶってのが基本ルールだ。唯一班長だけは『班長』って呼んでもいいけどよ。そんでお前は3班の6番目だからこれからは36番がお前の名前だ。覚えておけ」


 そこからは班長に色々注意事項を教えてもらった。別に親切じゃなくて、僕がヘマすれば班全員が罰を受ける可能性もあるからだって。まあ、村での生活みたいに言われた事に文句言わずに働いてれば大丈夫かな。


 そうだ!神父!その話も聞かないと。


「神父?ああ、それなら前の日に誰か死んでれば朝飯前に食堂にきて祈りを捧げるぞ。って言っても来ない日の方が珍しいけどな」


 班長に聞いたらこの答えだ。要するにほぼ毎日誰かが命を落とす過酷な環境みたいだ。僕死なないかな?


『俺の体使ってんだから死ぬ訳ねえだろ!』

『あ、そうか!魔王の体って攻撃全然効かないもんね。

『攻撃が効かねえ訳じゃねえよ。ただ、ある一定以上の強さの攻撃じゃねえと、俺が普段垂れ流している魔力を抜けねえだけだ。現にフィロスの攻撃はダメージ受けただろ?』


 言われてみれば、フィロスさんに殴られた時は結構なダメージを受けた気がする。あれ?そう言えばその時のダメージはいつの間にか無くなってる。


『鎧に回復機能があるって言っただろ』


 そういえばそんな事言ってた覚えが・・・。


『あ!でも病気とかにはなるんじゃない?』  

『病気?なった事ねえな?ある程度の魔力があれば病気にならねえって話だぞ。だから最強の魔力持ちの俺は病気や呪いなんてかからねえんだよ!』



・・・・・



『僕に取り憑かれているけど?』

『さっさと俺の体から出て行け!!病原菌野郎!!』




 ひどいなあー。




■

翌日


 牢屋から出された僕達は大きな部屋・・・食堂に連れてこられた。僕達は毎日ここで食事を食べるようだ。僕達と似たような人達が食事の準備をしているのが見える。


 班のみんなの後について歩くと、唐突にみんな足を止め、近くの椅子に腰掛けた。


「ほら、36番、ここが俺達3班の場所だ。お前の席はここ。間違えるなよ。それとここでは無駄口を叩くな」


 班長が指示した場所に座り、食事が始まるのを静かに待つ・・・・風に見えているだけで、頭の中で魔王と話をしている。


『こうやってみると結構人いるね』

『ああ、100人ぐらいか?しっかしどいつもこいつもシケた面してんな』

『あ!魔王!あの人が神父さんじゃない?』


 周りを観察していると、明らかに兵士とも僕らとも身なりの違う人が部屋に入って来た。そうして部屋の中心までくると、昨日は1班の〇番、11班の〇番が亡くなったから祈りを捧げましょうと言い、何か不思議な言葉を言い始める。


『お!ケラ!これ多分祈りの言葉だ。これでお前も成仏出来ねえか?やってみろ』


 よーし!成仏したい!成仏させて下さい!魔王に体を返したいです!





・・・・・・・・・




・・・・・駄目っぽくない?



何も反応がないし、何も感じない。


『駄目っぽ・・・』

『諦めんな!もうちょっと気合入れろ!成仏したいって気持ちが足りてねえんだよ!』


 駄目っぽいって言う前に魔王から熱い激励の言葉が飛んできた。いや、確かに僕が諦めたら魔王はずっと今の状態だから必死になるのも分かるよ。けどさあ、本当に何も感じないんだ。手応えとかコツみたいなものも掴める気がしない。でも魔王の為に更に熱心に祈ろう・・・としたんだけど。


「それでは皆様、神に感謝を!」


 神父さんのその言葉と同時に班長や班員、他の班の人々もご飯を食べ始める。どうやらこれで祈りは終わったみたいだ。








 いや、それじゃあ困るんだ!



「ちょっと待ってください!」


 僕は食堂に響く声を出して立ち上がった!!!


「馬鹿!」

「ふざけんなよ!」

「おとなしくしてろ!」



 立ち去ろうとする神父に声をかけて立ち上がると、班長や班員が慌てて僕を座らせようと動く。



 けど、流石魔王の体、ビクともしない。


「そこ!何をしている!席に座れ!飯抜きにするぞ!」


 近くにいた兵士さんが鉄の棒?を手にこっちに数人向かってきたので、班長達は指示に従い席に戻った。


 けど僕は今がチャンスだと思い、椅子に座らず立ち去る神父さんに近づいていく。


「こ、こいつ!!」

「こいつ昨日入ったばかりの新人だ!教育しろ!」

「おらおらおら!」

「指示に従え!!!」


 神父さんに近づく僕を、棒を持った兵士さんが囲んで殴ってくる。けど流石魔王の体、痛みは全くないので、気にせず神父さんの方に歩いていく。


「こ、こいつ!!」

「反抗するか!!てめえ!もう手加減しねえぞ!」

「おい!誰かこっち来て手伝え!」



「神父さん!ちょっと待って下さい!」

「・・・うん?何か・・・・ええ??」


 立ち去ろうと背を向けていた神父さんを呼び止めて、振り向かせる事には成功した。



 多くの兵士から殴られている僕を見て、神父さんはおかしな声をあげたけど・・・。まあ、これは別にいいか。それよりもお願いを聞いて貰わないと!




「祈りを!僕にも祈って下さい!!」


 魔王の指示で手を胸の前で合わせて、必死な感じを出して叫ぶ。



・・・・これで教会の人は言う事聞いてくれるらしい・・・流石魔王、色々詳しいなあ。






「・・・・・ほう、中々の信仰心ですな。兵士さん少しだけ手を止めてくれませんか?」


 やった!神父さん止まってくれた!


 引き攣った顔をしているけど、話を聞いてもらえそうだ。神父さんの言葉に兵士さんも僕を囲んだ状態で止まってくれた。


「それでは祈りとは?あなたに対して私は祈ればいいのですか?」

「僕を成仏させて下さい」


 僕と魔王の望みはそれ一択。迷わず答えると、神父さんは物凄い困った顔になった。


「・・・・・・・・・・・・は?」

「僕悪霊なんです。だから天に召して下さい」

「・・・・・・・・・うーん??・・・・あ!この過酷な環境から死をもって逃れたいという事ですか?」

「違います。僕は昨日ここに来たばかりなので、どう過酷な環境か分かってないです」

「・・・・・・・・・うーむ。あなたが何を言っているのか理解不能です。・・・・神の試練かな?」

「試練とかじゃないですって、僕を成仏させるだけの簡単な話です!」

「・・・・取り敢えず祈ればいいのですか?」

「最初からそう言ってます!」


 全然話が嚙み合っていないけど、僕の言いたい事が通じたのか神父さんが僕の為に祈ってくれた。






・・・・・・


 全然効かないや。






「駄目みたいです。全然効果無いですね」

「き!君は!私を馬鹿にしているのかね!!」


 僕の言葉に神父さんがすんごい怒り出した!何で??


『ブフッ!・・・ククク・・・』

『魔王?何笑っているの?』

『・・・・・・』


 ・・・・おかしい、魔王から返事が返ってこない・・・笑いを必死に耐えているような感じがする。



 それよりも今は魔王より怒った神父さんだ!何故かすんごい怒っている。


「いや!私だけではない!君のその言葉は主神でさえ馬鹿にしている!いずれ天罰が下りますよ!!」

「いや、今も罰を受け続けてるんですよ」


 多分受けているのは魔王なんだけど・・・正直に答えたんだけど、神父さんはまた、凄い怒り出した・・・・・。最近の知り合いはすぐ怒る人が多いなあ。



 取り敢えず怒り過ぎて何言っているか分からない神父さんは放っておいて、今の話で考え付いた事を魔王に聞いてみる。


『魔王が人界に戦争しようとしたから天罰受けてるんじゃないの?』


多分、これが原因だね。僕には分かる。


『そんな訳あるか!魔族は神とか信じてねえの!それなら俺より前に魔王名乗ってたあいつらが先に天罰受けるはずだろ?』


 魔王名乗ってたのって僕が見た4人?でしょ?受けてないのかな?よく分かんないや。それよりも、この状況どうしよう。怒って神父さんが帰っていったら、兵士さんが寄ってきて僕をバシバシ叩いてくる。全く効かないけど。


「おい!こいつ全然効いてねえぞ!」

「やせ我慢してるだけだ!もっと殴れ!」

「おらおらおら!」


・・・・なんかすんごい数の兵士さんに囲まれてるなあ。あ!それよりも朝ごはん!パンにスープとか鉱山のご飯は豪華だから食べ逃すとかありえないよね!


「おいおいおい、こっち来るぞ!」

「やべええ!逃げろ!」

「巻き込まれるぞ!お前ら逃げろ!」


 僕が席に戻ろうと動くと、兵士さん達も動くから、班長や班員だけでなく周りの人も大騒ぎして逃げていく。


 けど僕は何よりもご飯が大事なので、気にせず自分の席に座り、パンとスープを死守しながら朝ごはんを食べ終えた。


「はああああ。美味しかった。パンとか久しぶりに食べたなあ」


 村では年に一度の収穫祭でしか僕は食べれないからすっごい満足だ。


「はあ、はあ、こ、こいつ何なんだ?」

「こいつ何でこれだけ殴られて痛がらねえんだ?俺もう無理」

「普通に飯食ってるし・・・俺ももう無理、腕が動かねえ」


 僕が食べている間も、バシバシ殴っていた兵士さん達はお疲れのようだ。


 さーてこの後は何すればいいんだろう。班長に聞かないと・・・・







 何でみんな引き攣った顔で、遠巻きにこっちを見てるんだろう?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。