4.鉱山へ
おおー。森を抜けた。けど目の前には草原が広がって、道は見えないなー。
このまま、また当ても無く彷徨うのは嫌なので、まずは近くの木に登り、周囲の様子を伺うと、草原の向こう側に道が見えた。
やった!道だ!
『魔王、魔王。道を見つけたよ』
『・・・・・んが?・・・ああ?俺寝てたのか・・・・この状態でも寝れるもんだな。ってそんな事より道を見つけたのか?』
『うん、あっちの方に見えるでしょ?』
『おお!見えるぞ!そんでどっちが街に近いと思う?』
『いや、分かんないよ。道があるからどっちも集落はあると思うけど、街じゃなくてスグ村みたいに小さい村かもしれないよ』
『その可能性もあるか。でもここで悩んでも仕方ねえ、取り敢えず道まで向かえ』
そう言う魔王の指示で道に向かい進むと、何事もなく辿り着いたんだ。けど・・・。
『何か分かる?』
『分かる訳ねえだろ!』
道の先を見たけど特に街や村が見える事はない。そして道は踏み後や荷馬車が通った後があるけど、どっちに向かっているかはよく分かんない。2人して途方に暮れていると、遠くから荷馬車を引いて歩いてくる5人組が見えたので声を掛ける。
「おーい!すみませーん!僕達道に・・・」
その人達に向かって手を振り、声を出して近づいていったら・・・手に持つ鍬や鋤、農業フォークがこっちに向いた。
「動くな!」
「それ以上近づけば敵とみなす」
「こ、こいつ、魔族だ!」
かなり向こうに警戒されてしまった。魔族だって言っている人もいるけど、頭の角やっぱり目立つのかな?
「ま、魔族じゃありません。半魔です!僕は半魔なんです」
「半魔?にしては偉く角が長くねえか?」
「俺らの村にいる半魔は角はもっと短いぞ」
「レビの街でも半魔見るけど、こいつみたいに長い角持った奴はいねえぞ」
思わず半魔って答えたけど、よく考えたら今魔王の体だから頭に長い角があるはずだ。この人達は誤魔化せそうだけど、街に行くまでに角も隠さないといけないな。
「そ、そうなんです。僕は半魔ですけど、ちょっと角が長くて良く魔族に間違われるんです。大体こんな所に魔族がいるとかおかしくないですか?」
普通魔族は戦争している所や自分の陣地にいるって教えて貰ったからね。1人でこんな所にいるなんてかなりおかしいはずだ。
「言われてみればそうだな」
「そもそも魔族って問答無用で襲い掛かってくるって話だぞ」
「って事はお前は魔族じゃなくて半魔なのか?」
「はい。・・・ただ気付いたら森の中に捨てられてて困ってたんです」
僕の言葉に3人が顔を見合わせる。
「ど、どうする?村に連れて行って労働力にするか?」
「いや、待て。森に捨てられたとか言っているぞ。見た所武器も持ってないから、役立たずで捨てられたんじゃねえか?」
「それだと村に連れて行っても役に立たねえんじゃねえ?」
「だな、村に入れちまうと俺らが面倒みないといけなくなる。それよりかレビの街に押し付けようぜ」
聞こえてるよー。けど村よりも街の方が探しているキョーカイがある可能性が高いから黙ってよう。
「ああ、分かった。それならこの道を進めばレビって街に着く。そこで街の兵士に相談してみろ」
そう言うと、5人組は僕をおいてレビとは逆方向の道に消えていった。
『ねえ、魔王、なんか静かだったけどどうしたの?』
『ああ?人の事はよく分からねえから気を利かせて黙ってたんだよ。有難く思え』
『ふーん。それでさあ、この道を行くとレビって街に着くみたいだけど、色々考えないと駄目っぽいよ』
『だな、まずは捨てられたってのは聞いていた限りだとあんまり良くねえ感じがしたな』
それは僕も思った。使えるって思われたら、強制的に村に連れて行かれて労働力にされそうな気がしたもん。
『そうすると、旅しているってしとくか』
『目的は?多分聞かれるよ』
『そりゃあ、悪霊を払う旅に決まってんだろ。後は魔界に戻る方法を探すんだよ』
・・・・
いや、いいんだ。この体は魔王のだし、僕が悪霊みたいなもので、僕が悪いって分かってるからね。
『後は武器だな。手ぶらってのはヘンに思われるみたいだ。ケラ、収納石から適当に武器を選べ』
魔王の指示に従って耳の石を触って武器一覧をだしてみたんだけど、数が物凄い事になっている。
『多くない?しかも装備したら呪われそうな禍々しい見た目の武器も多いんだけど?』
『いいだろ。俺のコレクションだ。・・・・そうだ!その一番端の黒い剣装備してみろ』
『これ?見た目がすっごい嫌なんだけど?』
刀身と持ち手の間がなんかブクブクして、そこからどす黒い何かを吐き出しているように見える・・・。
『そいつはかなり昔から、魔族を呪い続けた魔剣だ。俺を取り込もうとして来たから、ねじ伏せて従わせたんだが、そいつならケラを追い払えるかもしれねえ』
『ええー。僕呪われたくないんだけど』
『うるせえ!てめえに拒否権はねえんだよ!さっさとやれ!』
そう言われたら逆らえないので、黒い魔剣を収納から出して手に持つ。そしたらなんと、取り出した魔剣が喋り始めたんだ。
「ケケケケ。どうしたカス魔王、この俺を呼びだして?まあどうでもいいぜ。今日こそてめえを取り込んでやる・・・・は?・・・・え?・・・・・きゃあああああ!何で魂二つ持ってんの?きめえええ!」
なんか1人?一本?で黒い魔剣は大騒ぎして、そして勝手に消えた・・・っていうより一覧に出ているからまた収納に戻ったみたいだ。試しにもう一回魔剣を取り出そうとしたら、画面に何か文字が出るようになって魔剣は出てこなくなっちゃった。壊したかな?
『おい!何だこれ?「エラー」ってどうなってんだ?ケラ!てめえ何した!』
『いや、何もしてないよ。魔王も見てたから分かるでしょ』
『ど、どうなってんだ?・・・こんなの初めて・・・・チッ!それならそいつだ。その左端にある短剣を出してみろ。そいつはただの短剣だから、それも「エラー」が出たら、収納石が壊れたって事になる』
言われた通りにしたら、今度はちゃんと短剣が取り出せた。それを見て魔王が色々話してくるけど、全然分かんない。
『出きたって事は魔剣の異常か。そうなると・・・ケラ、今から俺が言う武器を一度取り出していけ』
・・・・・・
言われた通り取り出した武器は無言だったり、叫んだり、驚いたりと反応はそれぞれだった。けど、最後は勝手に一覧に戻って「エラー」が出るのは同じだった。
『・・・・・魔王ってどんだけ呪いの武器持っているの?一覧の半分以上が取り出せなくなったんだけど?』
『魔王になれば献上品とかで勝手に集まってくるんだよ。それに俺は力でねじ伏せれるから、呪いなんて効かねえ』
『・・・・・今は僕に呪われているけど?』
『・・・・・うるせえ!』
ごめん、今のは僕が悪かったよ。
『取り敢えず取り出せる武器から好きなのを選んで出せ』
『それじゃあ、これにしようかな』
僕が選んだのは模様や装飾等飾りっけが全くない普通のナイフ。ナイフなら普段から使ってたし、見た目普通だから、さっきみたいに盗賊に狙われたりしないだろう。
『それ、俺が下っ端の頃に使って何の特殊効果もない少し丈夫なだけのナイフだぞ、いいのか?』
『ナイフなら普段から使ってたからね。慣れない武器よりも慣れている武器の方がいいでしょ』
『まあ、ただの見せかけだけの武器だから何でもいいんだけどよ・・・・そして後は角か』
そう言うと少し黙り込む魔王。角も何か考えがあるのかと思い、僕は魔王が口を開くまで待つ。そうして暫く待つと考えがまとまったのか面倒くさそうに魔王は口を開いた。
『どうせ、人界だからバレる事はねえだろ。もしバレたらそん時考えればいいか・・・・って事でケラ、角の根本に金具があるはずだ。見つけたら角を引っ張りながらその留め具を外してみろ』
言われた通り頭の角の付け根辺りを触ると、金属の何かが手に触れた。多分魔王の言う金具だと思うので、適当にいじっていたら、何かが外れた感じがしたと思った次の瞬間には、角を引っ張っていた手が急に軽くなった。
・・・・・・
おおおおお!角が取れた!
手を見ると、禍々しい黒い角が僕の手に握られていた。
『よし、ケラ、反対もだ』
魔王の指示に従い、もう一つの角も同じように角を外す。・・・・触った感じ残ったのは短い・・・僕が触り慣れた大きさの角。
『・・・・えっとこれは?』
『まあ、早い話、俺も半魔ってだけだ。魔界でも半魔は馬鹿にされるから、隠してたって訳だ。知っているのは、今はフィロスしかいねえ』
えっと、それって凄い秘密なんじゃ?いいのかな、こんなに簡単にバラして?まあ、魔王がいいって言うならいいんだろう。それよりもこれで目立つ角も無くなったし、見た目も普通の服でナイフも装備した。出会った人に言われた注意点は全て直したから、これで問題なく次の街・・・・確かレビって名前の街に入れるはずだ。
僕は初めて見る街を想像して胸を躍らせて・・・魔王は教会で体を取り戻せると喜んでレビに向かった。
・・・・・・
「地獄にようこそ!!今日からここがお前の仕事場だ。で、ここにいる連中がお前と同じ班の奴らだ。仕事の詳しい指示はそこにいる班長に聞け!」
いやあ、まさか街に入れずに鉱山送りにされるとは思わなかったよ。




