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3.魔王の防御力

うん、何度思い返しても魔王の体を乗っ取った理由は分かんないや。そして魔王も落ち着いたのかの罵詈雑言も治まったので、色々情報交換を始める。


『取り敢えず、てめえが悪霊になって、俺に取り憑いたってのは分かった』

『うっ!・・・悪霊とか言い方酷くない?』

『俺からすればケラは悪霊だろうが!何も間違っちゃいねえ』


 確かにそうなんだけどさあ。別に呪い殺してやろうなんて考えてないよ。そもそも魔王なんて話の中だけでしか聞いた事無いし。それに呪うならスグシや村長、村の人達の方だと思うんだけどなあ。


『それで?てめえはどうすれば成仏すんだ?』

『・・・・・分かんない』

『てめえ!ふざけてんのか!』

『ふざけてないよ。魔王には悪いけど本当に分かんないんだよ。出来れば今すぐにでも体を返したいと思っているよ』


 この言葉に嘘はない。本当に魔王には悪いと思っている。体もすぐに返してあげたいけど、どうすればいいか本当に分かんないんだ。


『・・・・うーん・・・じゃあ、教会だな』


 困っていたら、魔王が聞いた事無い言葉を口にした。


『キョーカイ?』

『何でてめえが知らねえんだよ。人は死ぬと教会行くって聞いたぞ。違うのか』

『知らない。僕の村では誰か死ぬと村長がお祈りした後に燃やして、骨を村の共同墓地に埋めてた』


 その埋める穴掘りは僕の仕事だったけど。


『チッ、ケラはどんだけ田舎に住んでたんだよ。まあいい、とにかく教会だ。街を探して教会に行くぞ!てめえに拒否権はねえからな!!』


 言われなくても分かってるよ。



 ただなあ、このまま成仏して大丈夫かな?って考えも生まれた。だって、僕が成仏したら、魔王は絶対また仲間を率いて、人と戦争始めるかもしれないからね。




 ただ・・・



 そうなった時は、僕は成仏して、この世にいないはずだから・・・・・





 気にしても仕方ないか!



■

『それで?ここはどこなんだよ?』


 魔王と話した結果、ここにいても仕方ないので、どこかを目指そうって事になった。




・・・・



 


『そんなの僕が分かる訳ないじゃないか!僕は生まれて初めて村から出たら、速攻で死んだんだよ。多分村が見えない限りどこか分かんないよ』

『チッ!使えねえなあ。だったら魔法でこの辺一帯の木を薙ぎ払え!』





・・・・・・・





『どうやるの?』

『は?』


出来たら道も見つけやすいだろうから、魔王に聞いたら戸惑った声が返ってきた。


『いや、どうやるの?って俺の体だから魔法使えるだろ?』

『今まで魔法なんて使った事ないから、どうしたらいいか分かんない』


 魔法自体見た事ないんだよ。もしかしたら僕が知らないだけで、村の誰か使えたのかもしれない。けど、僕は一度も見た事がない。


『はああ?マジか?そんなん手を出して魔法出ろー!的な感じで出るだろ』

『説明下手?』

『うるせえよ!いいからやれ!!』

『もう!いちいち怒鳴らないでよ。うるさいなあ』

『早くやれって言ってんだろ!ぶっ飛ばすぞ!』


 ずっと怒鳴ってて疲れないのかな?とは思うけど聞くとまた怒り出すから、魔王の言う通り、手を前に出して、魔法出ろーと声に出す。



・・・・・・・



『出ないよ?』

『馬鹿やろう!気合が足りねえんだよ!もっと腹に力入れろ!』


 言われた通り、手を前に出して少し腰を落とし、お腹に力を入れる。



ブーーーーーー!!!!!!




おならが出た・・・・いや、もしかして・・・・



『これが・・・魔法?』

『そんな訳ねえだろ!何で魔法じゃなくて屁こいてんだよ!てめえの尻の穴ガバガバじゃねえか!』


 その言葉そっくりそのまま自分に返るの分かってないのかな?



 ・・・・いや、そんな事よりもだ。!今、後ろで茂みが揺れた音がした!


 振り返ると、手に短剣を持った怖そうな人がニヤニヤしながらこっちに歩いてきた。あの笑い方は碌でもない事を考えているってのは、スグシ達で十分学んでいる。

 けど、もしかしたら、僕をボコボコにした後に、街道の方向を教えてくれるかもと思い、逃げずに様子を伺う。


「へへへ。かなり良い鎧持ってんじゃ・・・くせええ!何だ?この辺すげえくせえええ」


 ある程度の所まで近づいてきたら、唐突に怖そうな人が騒ぎ出した。


『魔王のおならが風で流れたみたいだね』

『俺のじゃねえよ!てめえのだろ!人のせいにすんな!』


「くせえな。何なんだ今この臭いは?・・・・いや、そんな事より、おい!中々良い鎧持ってんじゃねえか。それ俺にくれよ!」


『あんな事言っているけど?』


 確かに僕が着ている鎧は金色に輝いていて、とても高そうに見えるからこうやって欲しがる人もいるのは分かる。って事で持ち主の魔王に聞いてみた。


『ああ?やる訳ねえだろ!俺の装備はかなりの金がかかってんだぞ!しかもその鎧回復機能もつけているから、見た目以上の価値なんだぞ』


 やっぱり駄目か。そうなると目の前の人の提案を断るのは僕の役目?あれ?これって僕が怒られない?


「えっと、この鎧の本来の持ち主が駄目って言ってます」

「・・・ん?どういう意味・・・いや、そうか渡すつもりはねえって事だな」


 僕の言った言葉を理解した怖い人は、手に持つ短剣をこれみよがしに派手に動かす。手に棒を持ったスグシや村の人がこんな動きをした後は、手に持つ棒でしこたま叩かれたんだけど・・・この人短剣だよ・・・まさか僕を刺そうとかしないよね?






「あ、あの、、やっぱりこの鎧差し上げます」


 怖くなった僕はそう申し出た。


『ああ!!ケラ!てめえ勝手に決めんな!何で魔王の俺が奪われないといけないんだよ!逆だ逆!俺が奪う側なんだよ!てめえ体代われ!俺がこの馬鹿ぶっ殺してやるよ!!』


 当然魔王が頭の中で怒鳴り散らすが、無視して鎧を外そうとする。


「あれ?これってどうやって外すの?すみません、手伝ってもらってもいいですか?よくわかんなくて」

「・・・・・なんかてめえ気持ち悪いな。まあいい!殺してから奪えばいいだけだ」


 おーい、あげるって言ってるのに何でそんな答えになるのさー。


 そう思った次の瞬間、首に何かが当たった。見れば地面にさっきまでは絶対に無かった矢が落ちていた。


『おい!ケラ!あいつら俺に攻撃してきやがった!殺せ!絶対に逃がすな!』



 魔王の怒鳴り声は聞こえてはいるけど、頭に入ってこない。


 い・・・今・・・首を攻撃してきた?え?運よく助かったけど、今の下手したら死んでない?



 今まで村で理不尽な暴力は何度も受けたけど、死の恐怖というのは、小角犬に殺されるまで感じた事は無かった。けど、今実際に敵が僕を殺そうと明確に攻撃してきた。そう思ったら急に恐怖が襲ってきた。


「ひ・・・・ヒイイイイ!!!」

『馬鹿野郎!俺の体で情けねえ悲鳴あげるんじゃねえよ!』


 慌てて矢が飛んできただろう方向と怖い人とは逆方向に走り出す。


「おいおい、逃がす訳ねえだろ」

「ハハハハ!いいねえ。その恐怖に引き攣った顔」


 けど、どこに隠れていたのか、逃げ出した先から、また怖い顔の人が二人姿を見せた。振り返ると最初の怖い人と弓矢でこっちを狙っている人が見える。


 完全に囲まれた。・・・ヤバい、ヤバい。ど、どうする?何とか謝って許して・・・いや、問答無用で殺そうとしたから謝っても絶対許してもらえない。


『ケラ!見た感じ大した数じゃねえし、動きもクソ雑魚だ!このままぶっ飛ばせ!』


 魔王が無茶苦茶言ってくる。


『無理だよ!それよりも逃げられそうな策を考えてよ!』

『魔王が逃げるとかねえよ!策とかチンケなモンはいらねえんだよ!正面からぶっ飛ばす!これが魔王のモットーだ!』


 ああ!もう魔王とは考え方が違うから役に立たないや。こうなれば、どこが一番被害が少ないかを見つけて逃げるしかない。


 そう考えて周囲に目を配る。最初の人は短剣、後からの2人は長剣と鉈、多分僕の首を射った人は弓を持っている・・・そうなると弓の人が一番怪我が少なくて済むだろう。そうと決めたら、弓の人に向かって、恐怖を振り払う為に声をあげて走り出す。


「うわああああああ!!!!」




 そうして僕が駆けだすと、弓の人が笑い声をあげた。


「ハハハハ!やっぱりこっちだよなあ。賭けは俺の勝ちな」

「チッ!またてめえの勝ちか」

「今度はその役俺にやらせろよ」

「油断して逃がすなよ」


 分かんない、4人が何を言っているのか分かんないけど、僕にとっていい話じゃない事は分かる。でもそんな事は今はどうでもいい。未だに弓を持っている人に向かいながら、どうにか躱せないか動くけど、動く先に矢が飛んでくる。・・・完全に動きを読まれている!


 仕方がないので強行突破する事にして全力で走る。矢ぐらいなら刺さっても何とかなる・・・そう思っていたのに・・・僕と弓の人がぶつかる直前、弓の人は弓を放り投げて肩の後ろに手を回したと思ったら、そこから背中に背負った剣を引き抜き僕に斬り下ろしてきた。


・・・あ、僕死んだ・・・。


 全力で走る勢いもあるので、今更止まれない。よく考えれば、腕にも鎧装備してたからそれで防げば良かったんだけど、この時はそこまで考えられなかった。ただ足を止めずに振り下ろされる剣が僕に当たる直前目を瞑った。


 そして頭に衝撃が来たと同時に体全体が何かにぶつかった感覚。そして「グエッ!!」とかいう謎の声。









・・・・・気付いた時には僕は崖?滝?よく分からないけど、そんな感じの底にいて魔物に取り囲まれていた





 ・・・というよりゴブリン達に絶え間なく攻撃を受けていた。





■


・・・・・






 うーん。ちょっと落ち着こう。どうしてこうなった?


 さっきの人達ゴブリン・・・じゃなかったよね?


『おい!何でゴブリン如きにボコられてんだ!どうにかしろ!』


 魔王が頭の中で大騒ぎしている。この感じなら魔王が状況を把握してそうだ。


 

『さっきの連中から逃げたけど、途中崖から滑り落ちて、そこがゴブリンの巣の前だったって言えば分かるか?』




 ・・・・・



『・・・・魔王って運悪くない?』

『俺じゃねえよ!ケラが運悪いんだろ!大体逃げる時は常に目を開けて逃げろ!』


 だって怖かったんだもん。って言うとまーた魔王怒るだろうから黙っておこう。それよりも今、ゴブリンからボコボコ殴られたり斬りつけられているこの状況だ。不思議な事に全然痛くも無いし、傷もつかない。


『ねえ、魔王。これだけ攻撃受けても全く痛くないんだけど?』

『俺がこんな雑魚どもの攻撃でダメージ受けるわけねえだろ!さっきも頭で剣を弾き返したのもう忘れたのか?』




・・・・





 あー。そうなんだ。上手く躱せたと思ったけど違うんだ。魔王の言葉を信じるなら頭で剣の攻撃を受けたけど弾き返したと・・・・・あれ?


『魔王って凄くない?』

『ハハハハ!ようやくてめえも俺様の凄さを理解したか。そうだよ!俺様は凄いんだ!大抵の攻撃は効かねえんだよ!分かったならさっさと俺に体を返しやがれ!』

『ごめん、それは本当にどうすればいいのか分かんない』

『何でだよ!!』

『一応さっきから何度も体返そうと思っているんだけど、全然うまくいかないんだ』


 これは本当。勝手に体奪うつもりなんて僕にはなかった。けど、そうなったから、頑張って返そうと思っているんだけど、全然うまくいかない。


『これってやっぱり魔王が言うように、キョーカイに行くしかないのかなあ』


 ボコボコ攻撃してくるゴブリンを無視して僕はまた当ても無く、足を進める。


『ならさっさと街を見つけろ!』

『あ!でもその前にこの金ぴかの鎧をどうにかしないと!こんなの目立って仕方ないよ。この辺に置いていっていい?』


 僕でも見ただけでこの鎧が高いって分かるから、また狙われる可能性は高い。特に街だと目立ちすぎて、さっきみたいな人がたくさん出てくるだろう。


『言いわけねえだろ!ったく!耳についている丸い石に触って『鎧を収納』ってイメージしてみろ!』


言われた通りにすると、鎧が一瞬で消え去った。


『うわ!何これ凄くない?』


 驚く僕の声は魔王に聞こえてないのか、ブツブツ独り言を言っている。


『何で反応した?あれは俺の魔力が登録されているから俺以外使えねえって話だ。俺の体なら俺じゃなくても使えるのか?それならケラは俺の体で魔法が使えるはずだよなあ?あー、よく分かんねえ!フィロスボコった後に聞いてみるか。それかあの実験馬鹿だな』


 1人魔王が考えているのが頭に響く。魔法とか魔力とかって僕には分かんないから、好きに考えていればいいけど、その前にこっちも少し急ぎの用事が出来た。


『おーい!魔王!ちょっと考えている所悪いんだけど、緊急事態』

『ああ?ゴブリン程度無視しとけって・・・・・っておい!何ですっぽんぽんになってんだ?』



 そうなんだ、鎧ってのがどこまでか分かんなかったから、着ている物全部収納って考えたら、全部持っていかれたんだ。


『・・・・なあ、俺も馬鹿だとか頭悪いとか言われるけど、お前も大概馬鹿だろ?何でこんな所ですっぽんぽんになるんだよ』

『仕方ないだろ!使い方よく分かんないんだよ!それに僕は自分の事を賢いとは思ってないよ。だって計算とか出来ないしね』

『ハハハ!やっぱりケラは俺より馬鹿じゃねえか!俺は計算はフィロスに叩き込まれたから出来るぞ!』

『む!僕だって雑用や料理は出来るもん』

『馬鹿か!そういうのは出来る奴にやらせればいいんだよ』

『もう!その話よりも今は服の話!どうするの?流石に全裸で歩いていたら殴られるよ!』



 昔、スグシ達のいたずらで服を全部燃やされた時に、全裸で仕事してたら、『全裸でウロウロすんな!ボケ!!!』って殴られたからね。その時に外で全裸は駄目だって学んだ。

 


『さっきの丸い石に触って服を思い浮かべろ。そうしたら目の前に服の一覧が出てくるはずだ』


 さっきと同じように言われた通りにしたら、服の絵?が目の前に大量に浮かび上がった。


「な、な、何これーー??」

「ギャ、ギャギャアアア」


 思わず驚いて叫んだら、僕を攻撃しているゴブリン達が、興奮して攻撃が一段と激しくなった。



・・・・まあ、効かないけど。


『ほら、その中からどれがいいか選べ。俺が下町で遊ぶ用のあんまり目立たねえ服もあるはずだ』

『うーん。それじゃあこれにしようかな』


 魔王の指示で一番村人っぽい服を選んだ。そして魔王が言うには、その絵に触れた瞬間に着替えが完了するそうだ。ただ、絵?に触れる瞬間ふと気になる事が頭に浮かんだ。


『今の状況で服を着ると、ゴブリンにボロボロにされないかな?』


 未だに多数のゴブリンから攻撃受けている最中だ。魔王の体に傷一つないけど、服はそこまで丈夫じゃないだろう。


『ああ、大丈夫だ。俺の服は結構丈夫に作られてる』


 その言葉を信じて、絵に触れると本当に一瞬で服を着ていた。しかもゴブリンからの攻撃でも破れたりしない。魔王が言っていたように、この服かなり丈夫に作られている。



『それじゃあ、適当に進め。俺は寝るから道を見つけたら俺を呼べ』

『魔王って今どういう状態なの?睡眠必要なの?』

『俺が知る訳ねえだろ!睡眠も必要かどうか分かんねえよ!けど道を見つけるまで暇だから、俺も自分の状態を確認しておきたいんだよ!そもそもてめえが体返せばそれで終わりなんだぞ!』


 あー。また怒り出したよー。いや、確かに悪いのは僕なんだけど・・・。


 魔王の小言を聞き流しながら、森を彷徨うと、気付いたら魔王の小言も聞こえなくなっていた。多分寝たんだろう。そして僕をボコボコ殴っていたゴブリン達も諦めたのか、気付いたら姿が見えなくなっていた。そこからまたしばらく黙々と森を彷徨っていたら、道は見つからなかったけど、森から出る事に成功した。

明日も投稿します

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