過去のこと
後手に回れば回るほど悪手。ましてや、相手は肉親なのだからアポなど取らずとも直ぐに会話が出来る。
だから、私はあの話があった翌日、直ぐに一時帰宅をしてお父様の執務室を訪れていた。
「コトハ。王宮から、お前がまだ帰宅していないかと確認があった。シオン嬢のところに厄介になっていると返しておいたが……何かあったのか?」
やはり、王宮から確認があったらしい。きっと私の訪問のタイミングで消えた書類についてだろう。もし、あの時ランドルフ様が現れずに騎士に捕まっていたらと思うと、背中に冷たいものが走った。
「……お父様。今から私が何をお話しても、信じてくださいますか?」
「内容による」
「大事なことなんです」
「……私は陛下の臣下だ。もし、コトハが国王陛下に仇なすような行動をしていたなら、迷わずその御前に突き出すだろう」
……ランドルフ様の、嘘吐き。
この場にいない彼を責めても仕方がないが、あのとーちゃんなら話をきいてくれる、そんな一言に縋っていたのも事実で、お父様の態度に私は言葉を詰まらせてしまった。
無論、後ろに侍るレティも、何も発言をする気配はない。
けれど、此処まで来たら引き下がることも出来ない。私は一枚の紙をお父様の前に突き出した。
「なんだ、これは」
「武器の輸出、輸入記録です。それに混じって、鉱石……はともかく。花までリストに入っているのはおかしいと思いませんか? 他国に攻め入り、私やシオン様を軍事利用する気であるとしか」
「……鉱石は武器の素材、花だって薬の原料になることもあるだろう」
「はい。私やシオン様の力を使えば、より質の高いものが出来上がりますね。……花や草木ならば、使いようによっては毒の精製も可能でしょう。そもそも、武器や薬を欲し、戦争の準備をしているかのような動きが問題なのです」
今度は、お父様が言葉を詰まらせた。何か言い返せないか探しているのだろうが、私たちはもう、お父様に何を言われようが確信を持ってしまっている。【蜂】は──、現国王陛は、自分たちの敵であると。
「旦那様。私の憶測をお話しても宜しいですか?」
「レティ?」
それまで控えめに傍に侍っていたレティが、初めて口を開いた。許可を出すか迷っている様子のお父様の返事を待たずに、レティが次の言葉を続ける。
「……奥様が亡くなった際のこと。国王陛下が関係しているのでは」
「……っレティ! 口が過ぎるぞ!」
お父様の焦った姿など目にしたのは、それが初めてだった。私とてお母様がもうこの世にいないということを聞かされたのは初めてで、それなりの衝撃ではあったけれど。もしかしたら、と予想もしていた。
「レティは、お母様のことを何か知っているの? 何故今まで話してくれなかったの?」
「申し訳ありません。お嬢様。……確信が無かったのです」
「レティ。どんな想像をしているかしらないが、それはお前の勘違いだ」
お父様の制止も聞かず、レティが続けた。
「奥様は……テレサ様は、陛下に殺されたのではないですか?」




