気持ちの変化
バークリー伯爵であるお父様を仲間に引き込めというランドルフ様とシオン様の言葉に、私は頷くしかなかった。母が何処で何をしているのか、生きているのか、それとももう会えないところに行ってしまったのか。そんなことすら話してくれないほど関係の希薄なお父様に、どうして私が説得など出来ると思うのか。
けれど、他に手立てはない。一応はシオン様もまたアゼツ家と接触してみるつもりらしいが、確実にこちらに付いてくれるとは限らないのだから。
「まあ、あのとーちゃんなら話聞いてくれんじゃねえの?」
「普段殆ど話さないのに?」
「それはな、なんつーか。でも、大丈夫だって思うんだよ」
夜の帷が落ち、穏やかな風の吹くバルコニーで。
ランドルフ様は、あれから毎夜壁を伝って現れるようになってしまった。そして、数分から長ければ一、二時間。他愛もない話をして帰って行く。別に嫌ということもないのだが、今までレティ以外でこんなに毎日会話する相手もいなかったので、少しばかり擽ったい。友人にはならないと言っていたランドルフ様は、前よりずっと優しい瞳で私を見つめてくる。それは、ただの知人への情というには、あまりにも感情のこもった瞳で。友人にはなれずとも、私のことを友人や知人ではなく妹や弟のように捉えているとでも言うのだろうか。
出会った時にはあんなにも胡散臭かったのに、もし最初からこんな表情で見つめられていたら、まんまと引っ掛かっていたかもしれない。彼の想い人を知っている今は、そんな勘違いをしようもないけれど。
「ランドルフ様。やはり、お友達にはなってもらえないのですか?」
「お? なに? 俺と仲良くなりたくなったとか?」
「それは……まあ、はい」
彼から私へ、ひとかけらでも情があるのならば、ランドルフ様と友情を育んでみたい。こうして喋るのは、どうしてか落ち着くから。
「それは……あー、どうすっか。ちょっと待って。今は無理だ」
すげなく振られてしまった。嫌われている風でもないが、断られるのには何らかの理由があるらしい。
「私に何か問題がありますか?」
「いや。問題っつーか……」
歯切れの悪いランドルフ様をシオン様ならきっと問い詰めるのだろう。けれど、それは長い付き合いで培った信頼関係があるからこそ出来るわけで。出会って数ヶ月の私が問い詰めたりなどしたら、嫌われてしまうかもしれない。友人にはなれずとも、せめて嫌われたくはないと思った。
だから、それ以上尋ねることはしなかった。
「まあ、いずれ話すから。それより、とーちゃんの説得だ。不安なら着いてってやるよ」
「いえ。それはレティに頼みます。変でしょう、他の人と婚約しているのにランドルフ様が家に来るのは」
「それもそうか。まあ、とーちゃんと話す前でも後でも、なんかあれば聞くからさ」
あっけらかんとした態度のランドルフ様と毎日話すうちに、いつの間にかアレン様との婚約の話題を口にしても、私の胸は痛まないようになっていた。
あとちょっとで完結出来そうですー。
もっと上手に掛けただろうなという反省点もいっぱいな作品でしたが、ハッピーエンドへ向かって頑張ります。この作品を手に取ってくださった皆さまに多大なる感謝を。ありがとうございます。
まったりまったり投稿でしたが今週はちょこちょこ投稿出来たらいいな、と。もし読んでくださって気が向いたよって方がいましたら、ブクマや評価を残していってくださるととても嬉しいです。
ギャグ調の完結済み前作もありますのでよろしければそちらも捲ってくださると舞い踊ります。一部十八万文字、二部十万文字弱くらいのボリュームで二部も一応完結してますが続きを書きたくなったときのために連載中のままにしてあります。
それでは、また次話で!




