暴かれたのは
「…………」
「………………」
シオン様と二人きり。
伝えたいことは、確かにあった。
けれど、それを口にするのは果たして今が正解なのか。
シオン様も、もしかしたらなんとなく気がついているのではないだろうか。
私は、もう知っていると。
「……ランドルフは、どうでしたか? きちんとコトハ様のお役に立てたでしょうか。口は悪いですが、あれでも私が信頼する幼馴染みですのよ」
「ランドルフ様を護衛として密かに付けてくださったのは、感謝しています。けれど、私とランドルフ様が出会った際の……ハニートラップのようなことは……あの作戦は、シオン様のご提案だったのでしょう?」
ランドルフ様は何とも思っていないようだったが、恋人にあのような真似をさせるのは宜しくない。
「ランドルフがお気に召しませんでしたか? やはり、野蛮すぎたでしょうか。コトハ様には優しくするようにと伝えていたのに。おまけに、今日は貴女を泣かせたのでしょう。まったく……まるで野犬ですわね」
「そうじゃなくて! 恋人を押し付けるようなことしないでよっ。もし私がランドルフ様に本気になっちゃったらどうするつもりだったの!!」
あまりにも白々しいので、ついタメ口が出てしまった。けれど、やはり。シオン様は驚いた様子もない。ただ、いつも通り優雅に微笑んでいる。
「ランドルフは、私に懐いてくれているだけで恋人などではありませんわ。大切な友人ではありますけれど」
「なら、尚更そんなことをさせたら駄目じゃない」
ランドルフ様は、どう見てもシオン様のことを慕っている。その恋心を利用して他の女子にあてがうなんてことはしてはいけない。
そんなことをさせる親友の姿も、見たくはなかった。
「…………ねえ、しおちゃん」
「あら、愛称で呼んでくださるの? 嬉しいですわ」
この期に及んでしらばっくれるつもりらしい。ボロが出てしまっていることにも、自分で気付いているくせに。
「ハニートラップなんて言葉、ランドルフ様には通じなかったよ」
「あら。ランドルフは他国の言葉には疎いですからね」
「蜂とか蛾とか、普通のご令嬢は人のことをそんな言葉で表さないんだよ」
「私は生来、口が悪いんですの。コトハ様は同じ【乙女】ですから。つい気が緩んで本音を零してしまうのですわ」
「…………」
どうあっても、認めないらしい。のらりくらりと躱されているうちに、タイムリミットもきてしまったようだった。ノックの音と共に、ランドルフ様とレティが戻ってきた。
「ただいま。話は出来たか?」
「ええ。とっても楽しかったわ。ね? コトハ様」
「…………はい。ランドルフ様、お茶とお菓子をありがとうございます。レティも、ありがとう」
「とんでもないです。お嬢様、少しお顔色が戻っていますね」
しおちゃん……シオン様は何も認めてはくれなかったけれど、それでも言いたいことを言えてすっきりはした。
「侍女ちゃんがバークリー伯爵に手紙出してくれたからさ、コトハは暫く此処に泊まってけば? その間は俺も居るし」
「お言葉に甘えましょう? お嬢様」
私が泣き喚いてしまったこと、ランドルフ様はレティに話したのかもしれない。恥ずかしいけれど、きっとランドルフ様なりの善意なのだろう。
シオン様自身も、先程宿泊を勧めてくれていた。
お言葉に甘えて、数日間お世話になることを決めたのだった。




