密かな助け
「……ま、俺もフォローするから。安心しろよ」
そんなことを口にするランドルフ様に、どうやって、と思ったのが数日前。
やはり、前回同様お二人の予言通りに、アレン様から王宮へ向かわないかとお声が掛かった。
「すみません、コトハ嬢もお忙しいでしょうに。私の予定に合わせていただいてしまって」
王宮の長い通路を歩きながら、アレン様と視線が合う。歩幅を合わせてくれるところや優しい声音に少しだけときめいてしまうが、今は作戦中だ。あちら側だと分かっていても、長年の憧れは未だ心に残り続けている。
アレン様は、余程【蜂】の信頼を得ているのだろうか、私的な挨拶ならば謁見の間では無く執務室で良いとのことで、此度の目的を考えるならば幸いだった。
「陛下。アレン・ベルナールです。婚約者のコトハ嬢と共にご挨拶に参りました」
「入れ」
重さのある扉をアレン様が開く。共に入室すると、【蜂】──、いや、陛下は積み重なった書類のうちの一枚を指先で摘みながら、自らの眼前で揺らし眺めていた。
「執務のお邪魔だったでしょうか」
「いや、良い。挨拶に来いと言ったのは私だしな。で、改めて君たちの口から報告してもらおうじゃないか」
「改めまして……、先日ぶりです、陛下。このたびは、此方のコトハ嬢との婚約の報告に参りました」
「コトハ・バークリーです。先日に引き続き、お時間を作っていただきありがとうございます」
「ああ、めでたいな。私が懇意にしているアレンと、国の宝である【乙女】コトハ嬢が縁を結ぶとは。自分のことのように嬉しいぞ」
陛下は以前相見えた時より気安い態度で、もっと近くに来いと私たちを手招きした。
今机上にある中に狙いのものがあるかは分からない。だけど、見極めないといけない。不審に思われない程度に、文字列を捉えないと。
けれど、これがなかなか難しい。平均的な動体視力の私では、仔細まで捉えることは困難だった。
「陛下。例の件の進捗はいかがですか?」
「ん? ああ、まあ程々だな。だが、仕事の話は良いだろう。コトハ嬢との馴れ初めでも惚気でも。今は二人の話を聞こうじゃないか」
「ええ。コトハ嬢とは昔馴染みだったのですが……」
アレン様が想い出話を始めるが、少しだけ耳を塞ぎたい気分になってしまう。実際の出来事を回想しても、共に語られる当時のアレン様の気持ちは、きっと真実では無いのだろうなと分かってしまっているから。
心に薄闇が掛かったような気分で居ると、陛下の後ろ側──、中庭に続く窓の端に紫色の影が掛かるのを見つけてしまった。




