作戦会議
私がシオン様を信じるように、シオン様も私のことを信頼してくれているのを感じた。だから、目に見えるきっかけなく私がシオン様側に着いたことを疑ったりはされなかった。始めこそランドルフ様やレティは不思議がっていたが、やがて【乙女】同士でしか理解できない何かがあるのだろう、と納得した様子だった。
「それで、ベルナールのお坊ちゃまの求婚をお受けしたことについて、バークリー伯爵様は何か?」
【乙女】同士の交流を深めるという名目で、本日もクロンビー侯爵邸に招待されていた。無論、ランドルフ様もレティも一緒だ。
「お父様は、対して私に興味がないので。そうか、とだけ」
「次期領主として坊っちゃんが頑張っちゃいるが、あの現状じゃ娘の嫁ぎ先として喜ばしい相手とは言えないだろうに。俺が嬢ちゃんをオトしに掛かってた時も感じたけど、ドライなもんだよなー」
ベルナール領もベルナール伯爵家も、どうにもならないほどの困窮をしているわけではない。ただ、現在のベルナール伯爵ご夫妻が病弱なことにより、次期領主のアレン様が仕事の殆どを担っている。当然、経験も浅い彼一人でご夫妻二人分の仕事を担えるわけもなく、溢れた分は使用人の仕事だ。割り当てられる作業の増えてしまった伯爵家に仕える人々の雰囲気は、良くないと聞く。
もし実際に嫁いだとしたら、私にもたくさんの仕事が割り振られるだろうし、邸内も心地の良い環境ではないだろう。
「……お嬢様。私はお嬢様のことを家族と思っております。伯爵様と違って、婚家にも着いていけますしね」
私が落ち込んでいるとでも思ったのか、レティが手を握って励ましてくれる。落ち込んだりなどしていないが、その心遣いにはじわりと胸が温かくなる。
「ありがとう。でも、今更気にしてなんかいないわ」
「……それならば、良いのですが」
本当に、気にしてなどいない。お父様が私のことに関して興味がないのは、ただ昔からそうだったというだけなのだから。
「なあ、仲が良くて何よりだけどさ。作戦どーすんの? 向こうがなんか仕掛けてくる前に動かねえと」
「……そうね。コトハ様には申し訳ないですが、あの蛾……、いえ。ベルナールのお坊っちゃんは、【蜂】に婚約の報告をするため王宮に上がると言い出すでしょう。……コトハ様には、その折に抜き取ってきていただきたい書類があります」
「それは、つまり……抜き取るというか、」
「書類を盗むってことだな。バレたら重ーい処分が待ってるだろうが、なんたって、【石の乙女】サマだ。殺されたりは、ないだろうよ」
深刻な面持ちのシオン様とは対照的に、ランドルフ様は相変わらず飄々とした態度で口にした。




