予言は現実に
ランドルフ様の予言めいた言葉に、そんなまさか、と返したのが数日前。
「コトハ嬢。婚姻を前提に交際していただけないでしょうか」
その日もお父様に用事があっての訪問とばかり思っていたのに、アレン様に呼び出されたのは私だった。私室から応接室へと向かい、入室するなり渡されたのは大輪の花。
「ランドルフ殿が贈られていたような特別なではなくて申し訳ないですが、ベルナール領で育った花たちなんです」
憧れの人から贈られた花は、こんな状況でなければ飛び跳ねる程に嬉しかっただろう。けれど、今の私は複雑な心境だ。喜びよりも色んな方向に思考が散らばってしまう。
これは、本当に【蜂】の謀略なのだろうか、とか、しおちゃんが居たら、告白に野草なんか持ってくるな、なんて言うかもしれない、とか。
そういえば、ここ暫くしおちゃんとの通信が繋がらない。元より突発的に繋がったことしかなかったけれど。けれど、しおちゃんのことだ。私と数日連絡が取れなくとも、きっといつも通り過ごしているのだろう。
「…………あの、コトハ嬢? やはり、ご迷惑でしたか?」
「えっ? あ、あの、違います」
思考の深みに嵌ってしまい、うっかりアレン様の言葉を無視するような形になってしまっていた。彼の言葉で、漸く現実に引き戻される。
今は、このお申し出への返事をしなければならない。
アレン様は、私のことを好いて交際を申し込んでくれたのではない。それを分かっているから、心がささくれ立ってしまうけれど、返す言葉は決まっている。
「……あの、嬉しいです。……宜しくお願いいたします」
アレン様は、【蜂】の手駒。
シオン様とランドルフ様は、そう言っていた。
【蜂】は、アレン様という手駒を使って私を手に入れようとしているのだ。
直接自分のモノにしなくとも、私を利用出来る状態を作れたならば、それで良いのだから。
自主的なものなのか、脅されたりしているのか。アレン様がどういった思いで【蜂】に協力しているのか不明だけれど、これはチャンスだ。敵の懐へ飛び込んで、実態を探り、これからの手立てを考える。
つまりは、囮作戦だ。




