贈り物
「そもそも、何で自分で石ころを持ってねーんだよ。それがありゃ、誘拐なんざされなかったかもしれねえのに」
「あれは、練習用に庭で拾ったただの小石で……、せいぜいお守り程度の気休めにしかならないと思っていたのです」
だから、自分で持つことはしなかった。けれど【乙女】の力が籠っているというだけで、有難がる人は居る。だから、私にごく近しい使用人で、それを欲しがる人にはこっそりと渡していた。
もし、きちんとした宝石に自分の力を込めたのなら、危機回避の手段になり得るということは認知していたが、私は個人で宝石を所有していない。【石の乙女】などとは呼ばれているが、特別宝石に思い入れがあるわけではないし、護衛だって居るのだからと必要としなかったのだ。
「でしたら、私がコトハ様に贈らせていただきます。お好きな石があれば仰ってくださいませ。特に希望が無いのなら、こちらで選んだものを。数日待っていただければ、私の力を付与した花も贈りますわ。癒しに特化した力ですので、どこまで守護出来るかはわかりませんが」
「そんなことまでしていただくわけには……」
助けに来てくれて、従者の無礼にも怒ったりせず。シオン様は、とても素敵な方だ。だからこそ、これ以上お世話になる訳にはいかない。
「……はっ。俺がやった花は迷惑そうにしてたくせに、シオンには随分態度が違うじゃねえか」
「ランドルフ」
シオン様から咎めるように名前を呼ばれたランドルフ様が、ぐっと言葉を呑み込む。
迷惑だったのはそうなのだが、ランドルフ様だって、本心から私に贈り物をしてくれたわけではなかろうに。
「……ちっ。ああ、着いたぞ。クロンビー邸だ」
ランドルフ様の家では無いというのに、幼馴染で付き合いが長いからなのか、馬車を降りてからは我が物顔で客室まで案内してくれた。シオン様が何も言わないあたり、いつものことなのだろう。
「さて。温かいお茶を淹れさせますからね。お掛けになって、まずは体を休ませてくださいませ。侍女の方も、遠慮なさらないで。……さ、怖かったでしょう」
「……私にまで……、クロンビーのお嬢様。改めて、先程は申し訳ございませんでした」
シオン様のお心遣いに感銘を受けたレティが、深く頭を下げた。ランドルフ様は相変わらず面白くなさそうな様子だけれど、シオン様本人はといえば慈しむように私達を見つめている。
「良いのです。主人を守りたいというお気持ち故でしょうから。そのお気持ち、これからもずっと大事にしていってくださいね。さあ、そのようにずっと立っていては余計に疲れてしまいますわ」
なんともお優しいシオン様のお言葉に甘えてソファーに腰掛けた私達だが、ランドルフ様だけはシオン様の後ろで立ったまま、つまらなそうに腕を組んでいた。
「……さあ。推測混じりにはなってしまいますが、分かる範囲で今回のことについてお話いたします」




