守り石の共鳴
馬車を襲ったのは、如何にも破落戸といった男二人組。彼等は、人里離れた物置小屋のようなところへ私とレティだけを運び込んだ。私もレティも、両手足を麻縄で拘束されてしまって動けない。
男たちの顔に見覚えもなければ、誘拐される心当たりも全く無い。最初はあのうさんくさい笑みを浮かべたランドルフ様の顔が思い浮かんだが、彼だとしたら、今まで機会はいくらでもあったはずだ。普段の行動にどのような真意があったとしても、侯爵家のご令息が誘拐計画など企てる理由も無い。
そもそも、目の前にいるこの男達も、私を誘拐などしてどうするつもりなのか。国に重用される【乙女】に危害を加えたともなれば、どうなるかは容易に想像出来るだろうに。
だが、多少支離滅裂な出来事だとしても、ゲームのイベントだというなら説明が付いてしまう。そして、その推測が合っているならば、しおちゃんは必ず何かを知っているはず。そう思って通信を試みるけれど、繋がることはなかった。今までだって意図せず急に繋がったりだとか、しおちゃん側からのコンタクトが殆どだったのだから、当然だ。
「貴方達、何が目的なの?」
「ん? ああ。別に暴力を振るったりはしねえから安心しろ。場合によっちゃ今より良い暮らしが出来るかもな。貴族のことなんざしらねえけど」
「……何を言っているの? 【乙女】であるお嬢様の行方が知れずとなれば、沢山の人間が捜索に乗り出します。すぐにこの場所も見つかってしまうでしょうね」
レティが毅然とした態度で男達に喰って掛かる。やはり、私と同じ意見らしい。けれど、彼等は心底愉快というように、それを笑いとばした。
「……っ、ははっ! その、沢山の人間を束ねる側からの依頼だって言ったらどうする? そんなお偉いさんだからこそ、か。俺達には【乙女】の力がどうとか、何に使うとか分かりゃしないが。ちらっと聞いた話じゃ、地下深くに監禁だか軟禁だかするとかって言ってたな。ま、そんな特別な力を持ってんだ。良い暮らしどころか、奴隷にされるってのもあるかもな」
「…………」
その言葉を聞いて、初めて焦りのようなものが生まれる。先程までは、誰かが助けてくれるだろうという希望があったからこそ恐怖も感じていなかったけれど、依頼主によってはその前提も崩れてしまう。
「……依頼主は、クロンビー家のお嬢様ですか? もう一人の【乙女】であるコトハお嬢様を手中にし、そのお力すらも自らの功績にしてしまおうという魂胆でしょう! だって、実際に彼女からの招待に応じたせいでこんなことになったんですからっ」
「レティ。…………多分、違う」
言葉で上手く説明は出来ない。けれど、多分。いや、絶対に。シオン様ではないのだ。
いつの間にか首元にあった守り石のネックレスから、温かい何かを感じる。
【乙女】の力の共鳴とでも言うのだろうか。そこから、シオン様が私を心配してくれている気配がするのだ。
この誘拐の黒幕が誰であろうと、絶対に助けてくれる。そんな確信が、私を再び安堵させてくれた。




