↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/39

クロンビー邸への招待


 あれから、落ち着いた日々を送っていた。依頼をこなしては休憩がてら絵を描いて。変わったことといえば、毎日だったランドルフ様の訪問が、二、三日置きになったこと。反対に、アレン様は我が家に訪れた際には必ず私にも声を掛けてくれるようになった。


 仕事の方も順調だった。レベルを上げて、【守り】だけでなく、【富】の付与も安定してきた。【乙女】の力に目覚めてから、出会った人々の本心がどうにも掴み切れず不安だったけれど、逆に言えば憂いはそれだけだった。


 傍らには、信頼の置ける侍女が居る。


 もう二度と会えないと思っていた親友の声が聞ける。


 憧れの人との距離が少しだけ縮まった。



 順風満帆。穏やかな日々に、慢心していたのかもしれない。

 危険なんて、何もないと思っていた。


 人より大きな力を持つ者が狙われないわけがないのに。



「コトハ。シオン様から招待状だ」


 ある日、お父様から渡された手紙。それは、シオン様から邸に遊びに来ないかというお誘いの手紙だった。

 彼女とお会いしたのは、王宮での一度だけ。本当にシオン様からかと疑ったものだが、これを機に親睦を深めませんか、という内容が綴られていた。

 お断りする理由もないので、二つ返事で了承の手紙を書いて、三日後。約束の日がやって来た。



「クロンビー家の庭園は王宮のそれ以上に素晴らしい花々が咲き誇っているとか。楽しみですね、お嬢様」


 クロンビー家へ向かう馬車の中、お供のレティが浮足立った様子で話し掛けてくる。


「私より浮かれてるじゃない、レティってば」


「【花の乙女】のシオン様といえばコトハお嬢様のライバルですが、それはそれとしてクロンビー邸の庭園は一度観てみたかったのです」


「ライバルじゃないけどね。シオン様は、素敵な方よ」


 かく言う私も、この日を楽しみにしていた。

 立派にお務めを果たしているシオン様のことは尊敬しているし、そんな方からのお招きに緊張もしている。けれど、ずっと【石の乙女】として扱われてきて、同世代の女の子からこんな風に誘われるなんて初めてだったし、畏れ多くもこれをきっかけにお友達になれないだろうか、なんて期待をしてしまう。


 きっと楽しい時間を過ごせるだろうと胸を躍らせていた。


 なのに、なのに。




「お嬢様っ。レティが、レティが、必ずやお嬢様だけでも逃がしてみせますからっ……!」


 隣には、涙目のレティ。


「はは。やれるものならやってみな。しかし、【乙女】なんて言っても、実際はただの非力なお嬢ちゃんなんだな」


 眼前には、屈強な男が二人。どう見ても堅気ではない。


 私とレティの手足は、麻縄で固く拘束されている。所謂、誘拐だ。

 そう、先程のクロンビー家に向かう途中の馬車を襲撃されたのだ。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。