二人の機嫌
「領地のことで、陛下には気に掛けていただいているんです。私がコトハ嬢と旧知の仲……というのはおこがましいでしょうが、以前からの知人だと知った陛下が、ならば今度二人で一緒に会いに来たらどうか、と」
私は未だ国王陛下にお目通りしたことはない。けれど、【乙女】としての力が解放された今、どの道それは避けられないことだった。ただ、タイミングが早いか遅いかだけ。いずれにせよお目に掛かってご挨拶をしなければいけないというのは決まっていた。
「陛下とお会いするのは初めてなので、アレン様がご一緒してくださるのなら心強いですっ」
らしくなく声を張り上げてしまった。陛下の提案とはいえ、アレン様直々にお声をかけてくれたことが嬉しい。先にお父様にお会いしているはずだから、きっとお父様も了承済みなのだろう。
「良かった。では、三日後などいかがでしょう? 依頼も入ってきて忙しいでしょうし、コトハ嬢のご都合が宜しければなのですが、お迎えに上がります」
「大丈夫です。準備してお待ちしておりますわっ」
「……ふ。楽しみにしていますね、では」
楽しみ。
確かにアレン様はそう言い残して去っていった。
私と出掛けることが、楽しみだと!
『なあ、なんかご機嫌だな?』
通話の向こうのしおちゃんが、探るように尋ねてくる。
「あ、うん。ちょっと、良いことがあって」
『なになに? 付与のレベルが上がった? それともランドルフと付き合うことになった?』
「……付与の方、かな。前より大分上手くこなせるようになってきたよ」
親友のしおちゃんとは嬉しかったことを共有したいと思ったけれど、アレン様関連のことを口にするのは憚られた。
なぜか私とランドルフ様をくっつけたいらしいので、良い顔をされないのは分かりきっていたからだ。……正確には、顔は見えないので声で機嫌を判断することになるのだが。
そういえば、陛下にも良い感情を持っていないようだった。一緒に王宮へ行くなど、間違っても伝えたりしない方が良いだろう。
『そうか。こと、頑張ってるな。これなら……』
「これなら、なに?」
『いや、なんでもない。きちんと鍛錬してレベルを上げているなら、ゲームクリアが容易になりそうだなって』
しおちゃんの言うゲームクリアとは、何を指しているのだろう。ゲームのエンディングの時間軸を迎えたって、世界はその先も続いていくはずなのに。
親友だったはずなのに、身体と一緒に心まで遠くなってしまったようだった。




