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百花繚乱の勇者  作者: あおいろぱりお


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9/10

2-8.サイコパス班

 第8の魔法陣。

 そこは、遊園地と処刑場を足して2で割ったような、異様な空気に包まれていた。


「あはは! 見て見てー! フワフワだよー!」


 No.092 風見(かざみ) ポップ。

 パステルカラーのアフロツインテを揺らし、道化師(クラウン)姿の少女が宙に浮いている。

 彼女の体には無数のカラフルな風船が結び付けられており、重力を無視して漂っていた。


「危ないっ!!」


 ガシャリ、と重厚な金属音が響く。

 No.091 久鎖(くさり) (れん)

 パンクファッションの少女が、スカートの下から伸びる無数の鎖を射出した。


「そんな高いところ、落ちたら痛いよ!? 骨折れちゃうよ!? ほら、降りてきなさい! お姉ちゃんが縛ってあげるから!」

「えー? やだー! お空たのしーもん!」


 ポップが空中で足をバタつかせると、鎖が空を切る。

 その鎖の流れ弾(?)に怯えたのは、日本人形のようなボブカットの少女だ。


「ひっ……! ご、ごめんなさい……来ないで……」


 No.093 糸井(いとい) (つむぎ)

 彼女は真っ赤な着物を翻し、逃げるように後退った。

 だが、彼女が指を動かした瞬間、周囲の空間に「キィン」という鋭い音が響く。

 不可視のナノ・カーボン繊維。うかつに近づけば、スライスチーズのように細切れになる殺意の結界だ。


「……もったいない。実に、もったいない」


 そんな危険地帯を、ボサボサ髪の男が這い回っていた。

 No.098 芥川(あくたがわ) (じん)

 背中に巨大なゴミ袋を背負い、ガスマスクをつけた彼は、地面に落ちた鎖の破片や、割れた風船のゴムをトングで拾い集めている。


「まだ使える……。素材(ジャンク)は宝だ……。そこの君、その風船、割れたら僕にくれたまえ」

「あはは! おじさんゴミくさーい!」


 混沌。

 会話が成立していない。

 だが、そんなカオスを一喝する、冷静な声が響いた。


「――静粛になさい。ここは手術室(オペしつ)じゃないのよ」


 No.064 神宮寺(じんぐうじ) イヨ。

 白衣を羽織り、眼鏡を光らせた彼女は、騒ぐ患者(メンバー)たちを冷徹に見渡した。


「騒ぐなら麻酔を打つわよ? ……特にそこの道化師(ピエロ)。浮いてると頚椎の解剖がしにくいわ」

「えー、お医者さんごっこ? ポップも混ぜてー!」

「……ふふ。いいわよ。貴女の身体構造(データ)がどうなっているのか、興味があるもの」


 イヨが黒曜石のメスを取り出すと、その瞳が怪しく光った。

 サイコパス、ヤンデレ、対人恐怖症、マッドエンジニア、ドS女医。

 まともな倫理観を持つ者が一人もいない。


 その時、システム音が鳴り響く。


『班分け完了。第8班を転送します』


 視界が白く染まる。

 彼らが飛ばされた先は――。


 冷たい石壁と、薄暗い松明の明かりが続く場所だった。

 湿った空気と、カビの臭い。

 『古代の迷宮(ダンジョン)エリア』。


「わぁ! 探検だー! 宝箱あるかなー!」

 ポップが風船で天井の鍾乳石に張り付く。

「……天井が崩れるかもしれない。危ない……ヘルメットの代わりに鎖を巻かないと……」

 蓮が過保護に鎖を展開する。

「……暗い……落ち着く……」

 紡が通路の曲がり角に糸を張り巡らせて巣を作る。

「宝の山だ……! 古代のガラクタ、素晴らしい……!」

 塵が落ちていた錆びた剣を拾い始める。


 それぞれの自由行動。

 だが、その静寂を破るように、通路の奥からカタカタと音が聞こえた。


『ギギギ……』


 骨だけで動く『骸骨騎士(スケルトン・ナイト)』の集団だ。

 錆びた剣と盾を構え、生者を排除しようと迫ってくる。


「キャアアア! 骸骨ぅ!?」


 悲鳴を上げたのは紡だ。

 彼女は恐怖のあまり、指を激しく動かした。


 ヒュンッ!


 スキル『幾何学切断(スパイダー・ウェブ)』。

 見えない糸が空間を走り、先頭のスケルトンが一瞬でバラバラに解体された。


「あはは! すごーい! バラバラだー!」


 ポップが天井から降りてくると、まだ動いている後続のスケルトンの頭部にタッチした。


「もっとバラバラになっちゃえー! 『膨張破裂(ポップ・アート)』!」


 パンッ!!

 乾いた破裂音。

 スケルトンの頭部が風船のように膨らみ、光の紙吹雪となって弾け飛んだ。


「あはは! 綺麗! 花火みたーい!」

「……もう、散らかるじゃない。データ収集の邪魔よ」


 イヨが呆れながら前に出る。

 残りのスケルトンが彼女に飛びかかるが、彼女は優雅にメスを振るった。


患部(コア)を摘出します」


 『生体改造(オペレーション)』。

 触れた瞬間に魔石の結合を切断。スケルトンたちは糸が切れた人形のように崩れ落ち、光の粒子(ポリゴン)となって消え去った。


 カラン、カラン……。

 消滅した敵の跡には、魔石や骨片だけが残された。


「……もったいない」


 最後に動いたのは、塵だ。

 彼はトングをカチカチと鳴らしながら、ドロップアイテム(戦利品)に近づいた。


「上質な素材(ドロップ)だ……。魔力も残っている……。これなら、強い兵隊(ゴーレム)が作れるぞ」


 『廃棄物再生(ジャンク・リボーン)』。

 塵が落ちていた骨片と魔石、そこら辺のガラクタを組み合わせると、ツギハギだらけの機械仕掛けの骸骨が立ち上がった。


「よーしよし、今日から君はボーン1号くんだ。僕たちの荷物持ちになってくれたまえ」


 一瞬で敵が全滅し、さらに味方(アイテム)が増えた。

 光る粒子が舞う迷宮で、彼女(と彼)たちは笑っていた。


「ここ、最高の遊び場だね!」

「怖い......」

「……怪我はない? 骨折してない?」

「……お掃除、完了しました……」

「レアアイテムは誰にも渡さんぞ!」


 破裂する道化、切断処刑人、再生の王、束縛の王、そして狂気の執刀医。

 迷宮に巣食うのは、魔物よりも遥かに恐ろしい「第8班」だった。


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