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百花繚乱の勇者  作者: あおいろぱりお


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2-5.科学とオカルト班

 第5の魔法陣。

 そこでは、論理と混沌が真っ向から衝突していた。


「……非合理的だ。やり直しを要求する」


 No.004 (くろがね) 鋼太郎(こうたろう)

 薄汚れた白衣、機械仕掛けの左目。彼は手にしたエナジードリンクを一気に飲み干すと、不快そうに仲間を見渡した。


「なぜ科学の徒である私が、このようなオカルト集団と同じ班なのだ? 質量保存の法則を無視するな」


 彼の視線の先には、ふわふわと宙に浮いている少女がいた。


「……ふふっ。怒ってる顔も素敵……呪ってあげる」


 No.085 (かすか) レイラ。

 ゴシックな喪服ドレスを着た彼女は、重力を無視して数センチ浮遊している。

 その背後には、青白い人魂が揺らめいていた。


「浮くな。重力に逆らうな。推進剤も見当たらないのに浮遊するなど、物理法則への冒涜だ」

「えー。……だって私、幽霊だもん。足とかないし」

「幽霊など存在しない。それは何らかのホログラムか、未知の磁場干渉だ。あとで解剖して証明してやる」


 鋼太郎がガトリングに変形させたスパナを向けるが、レイラは「わぁ、怖い」と笑うだけで動じない。


「あー、うるせぇなぁ。爆発していいか? なあ?」


 貧乏ゆすりをしながら割り込んできたのは、赤毛のツンツン頭の少年だ。

 No.074 轟木(とどろき) バク。

 彼は退屈そうに、手の中のリモコンスイッチをカチカチと鳴らしている。


「科学だかオカルトだか知らねぇけどよぉ、吹き飛ばせばみんな同じ灰だろ? 俺のC4がお前らの内臓を見たがってるぜ」

「……野蛮ね。これだから男は嫌いなの」


 ふわり、と甘い香りが漂う。

 No.056 アロマ・カオル。

 豪奢なドレスを着た彼女は、不釣り合いなガスマスクを首から下げ、扇子で鼻を仰いだ。


「オイル臭い科学オタクに、火薬臭い爆弾魔。……ここはゴミ捨て場かしら? 私の鼻が腐りそうよ」

「あぁん? んだと香水女。てめぇも爆破すんぞ」

「おやめなさい。貴方の体臭が広がるでしょう?」


 一触即発の空気。

 だが、その隅で、ガタガタと震えながらビデオカメラを回している少年がいた。


「ひぃっ……! け、喧嘩はやめようよぉ……! 怖いよぉ……!」


 No.087 恐山(おそれざん) キョウ。

 彼はフードを目深に被り、殺伐とした光景に怯えていた。


「……怒号……暴力……血しぶき……うぅ、想像しただけで……く、来るっ!」


 キョウが悲鳴を上げた瞬間、彼自身の影から「血まみれの包丁を持った大男」がぬるりと出現した。

 スキル『幻覚実体化フィアー・マニフェスト』。彼がビビればビビるほど、最強の怪物が生まれてしまう最悪の能力。


「うわあああ! 出たあぁぁ! 自分で呼んだのに怖いよぉぉ!!」

「……チッ。エネルギー保存則はどうなっている」


 鋼太郎が舌打ちをする。

 科学、オカルト、爆破、香り、ホラー。

 世界観が違いすぎる5人。当然、会話は成立しない。


 その時、システム音が鳴り響く。


『班分け完了。第5班を転送します』


 視界が白く染まる。

 彼らが飛ばされた先は――。


 錆びついた歯車やパイプが山のように積まれた、『廃棄工場エリア(スクラップ・ヤード)』だった。

 赤茶けた鉄の匂いが充満している。


「ほう。……悪くない」

 鋼太郎の義眼が輝いた。

 ここにある鉄屑は、全て彼の『設計図具現化(ブループリント)』の資材リソースになる。


「資材は十分だ。ここに前哨基地アウトポストを建築する。貴様らは私の護衛を……」


「ヒャッハー!! 最高の遊び場だぜぇ!!」


 鋼太郎の指示を無視して、バクが走り出した。

 彼は手近なドラム缶に触れると、満面の笑みでスイッチを押した。


「カチッとな!」


 ドガァアアアアン!!


 爆音と爆風。

 積み上げられた廃材が派手に崩れ落ちる。


「馬鹿者! 貴重な資材を!」

「うるせぇ! 芸術は爆発だ! もっと壊すぞオラァ!」


「……ケホッ、ケホッ! 埃っぽい……最悪……」

 カオルが咳き込み、香水瓶を取り出す。

消臭してあげるわ。……『沈黙のラベンダー(サイレント・スリープ)』」

 紫色のガスが噴出される。吸い込んだら即昏倒する猛毒の香りだ。


「うわぁぁん! 爆発音怖い! 毒ガス怖い! 死ぬぅぅ!」

 キョウが泣き叫ぶと、その恐怖に呼応して、瓦礫の山から無数の『ゾンビ』が這い出してきた。

「増やすな馬鹿者ォ!!」


 爆発、毒ガス、ゾンビの群れ。

 一瞬にして地獄絵図と化した工場跡地で、レイラだけが楽しそうに浮遊していた。


「あはは! 賑やかだねぇ。……ねえ、あのゾンビさん、生きてるの? 死んでるの? 握手してもいい?」

「触るな! 感染するぞ!」


 鋼太郎は叫びながら、巨大スパナを変形させ、ガトリングガンの銃口を回した。


「ええい、非合理的だ! 全員まとめて物理で制圧する!!」


 ダダダダダダッ!!

 銃弾の嵐が、ゾンビも味方も区別なく薙ぎ払っていく。


「ギャハハ! 戦争だァ!」

「野蛮人! 私のドレスに煤がついたじゃない!」

「ひぃぃぃ! 誰か助けてぇぇ!」

「わぁ、弾丸がすり抜けた。くすぐったい」


 マッドサイエンティスト、爆弾魔、女王様、ビビリ、幽霊。

 混ぜるな危険の劇薬チーム。

 彼らの行く手には、焼け野原(と更地)しか残らないだろう。

 

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