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百花繚乱の勇者  作者: あおいろぱりお


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5/10

2-4.ナルシスト男子班

 第4の魔法陣。

 そこに漂う空気は、他のサークルとは明らかに異質だった。

 重い。

 物理的な重圧プレッシャーが、周囲の空気を歪めているかのようだった。


「……苦しゅうない。面を上げよ」


 開口一番、偉そうに言い放ったのは、真紅のガウンを羽織った男だ。

 No.050 (すめらぎ) ミカド。

 彼は腕組みをしたまま、傲然と他の4人を見下ろした。


「予期せぬ事態だが、余が指揮を執ってやろう。貴様らは余の手足となり、盾となればよい」


 その言葉に、あからさまに溜息をついた男がいる。


「やれやれ……。僕に指図するつもりかい? 下郎が」


 No.002 西園寺(さいおんじ) レオ。

 プラチナブロンドの美青年は、ハンカチで鼻と口を覆い、露骨な嫌悪感を露わにして周囲を見回した。


「最悪だよ。男、男、男……。むさ苦しくて吐き気がするね。ねえ、この中に『美しいもの(女の子)』はいないのかい? 僕の家具になりたい子はどこ?」


 彼は本気で、この場の男たちを「背景」か「汚物」としか認識していなかった。

 彼の興味は、自分のハーレムを作るための「素材」があるかどうかだけだ。


「なんだと? 貴様、王に向かってその口の利き方は……」

「王? 知らないなぁ。この世で価値があるのは『美』だけだよ。お前はただの装飾過多な成金だろう? 品がないね」


 バチバチと火花が散る。

 その間に割って入ったのは、ジャージ姿の厳つい男だった。


「こらぁっ!! 貴様ら、整列しろぉ!!」


 No.045 鬼瓦(おにがわら) ゲン。

 彼は竹刀を床に叩きつけ、怒声を上げた。


「自己紹介もなしに喧嘩とは何事だ! 協調性がないぞ! 連帯責任で腕立て100回だ!」

「……はぁ。うるさい」


 ため息をついたのは、周囲の気温を氷点下にまで下げている銀髪の少年だ。

 No.025 氷室(ひむろ) レイ。

 彼は呆れたように肩をすくめた。


「暑苦しい教師ごっこはやめろ。……それに、王様気取りに女好きのナルシストか。非合理的バカしかいないのか、ここは」


 支配者、ナルシスト、スパルタ教師、クールな皮肉屋。

 全員が「自分が正しい」と信じて疑わない。会話がドッジボールのように噛み合っていない。

 一触即発の空気。

 だが、そんな最悪の空気を読まずに、一人の男が爽やかな笑顔で踏み出した。


「まぁまぁ! みんな落ち着こうぜ!」


 No.001 天童(てんどう) 勇輝(ゆうき)

 燃えるような赤髪の少年は、白い歯を見せてサムズアップした。


「俺たちはこれから命を預け合う『仲間』だろ? 喧嘩してる場合じゃないって! 俺は天童勇輝! みんなで力を合わせて、元の世界に帰ろうぜ!」


 直球ど真ん中の熱血主人公ムーブ。

 天童が西園寺の肩に手を置こうとする。

 だが――。


「……触らないでくれるかい?」


 西園寺の声が、氷点下よりも冷たく響いた。


「君、汗臭いんだよ。僕の美肌に移ったらどう責任を取るつもりだい? ……あぁ、早く女の子の柔肌に触れて浄化されたいな」


 西園寺は天童の手をハンカチで払い除けると、蔑むような目で見下ろした。


「馴れ合うつもりはない」(氷室)

「私語は慎め! 背筋を伸ばせ!」(鬼瓦)

「余の配下になりたいなら、まずは跪いてみせよ」(皇)


「えぇ……? なんでみんなそんなにトゲトゲしてんの……?」


 天童ががっくりと肩を落とす。

 全員が「主役属性」持ち。誰も脇役に回ろうとしない、ある意味で最強、ある意味で最弱のチーム。


 その時、システム音が鳴り響く。


『班分け完了。第4班を転送します』


 視界が白く染まる。

 彼らが飛ばされた先は――彼らの熱量を反映したかのような場所だった。


 煮えたぎるマグマが川のように流れる、**『灼熱の火山帯エリア』**。


「あづっ!? なんだここ! サウナかよ!」

 天童が叫ぶ。

「……チッ。最悪の環境だ」

 氷室が即座に『絶対零度』の冷気を放出し、自分の周囲だけ気温を下げる。


「不快だねぇ……。汗をかくのは嫌いだと言ったはずだよ?」


 西園寺が不機嫌そうに魔剣『薔薇の棘』を一振りすると、襲いかかってきた火の粉が弾け飛んだ。

 彼はうんざりした様子で、マグマを見下ろす。


「こんな岩だらけの場所じゃ、可愛い女の子なんて期待できないじゃないか。僕のモチベーションに関わるよ」


 その時、マグマの中から巨大な岩塊が隆起した。

 全長10メートルを超える、溶岩のゴーレムだ。


『ゴオオオオオオ!!』


 圧倒的な質量と熱量。

 普通の生徒なら悲鳴を上げて逃げ出す場面だ。

 だが、彼らは違った。


「……ふん。余の力を試すには丁度よい案山子かかしだ」

 皇が王笏を掲げる。

「邪魔だよ、溶岩石。僕の視界を遮らないでくれるかな?」

 西園寺が鞭を構える。

「課外授業だ! 鉱物の硬度について身をもって学べ!」

 鬼瓦が竹刀を構える。

「……効率的に処理する」

 氷室がレイピアを構える。


 全員が、一歩も引かない。

 そして、誰よりも早く飛び出したのは――。


「よっしゃあ! 行くぞお前ら! 連携コンビネーションだ!」


 天童勇輝だった。

 彼は聖剣を輝かせ、真っ直ぐにゴーレムへ突っ込む。


「は? 勝手に仕切るな!」(氷室)

「余の前に出るな!」(皇)

「廊下(戦場)を走るな!」(鬼瓦)


 全員が文句を言いながら、同時に攻撃を放つ。


 皇の『王の号令』による強制バフ。

 鬼瓦の『愛の指導』による行動制限デバフ。

 氷室の『絶対零度』による足止めと脆化。


 そして、西園寺の魔剣がしなる。


「美しく散りなよ」


 『薔薇の棘ローズ・ウィップ』。

 的確に急所を抉る、精密無比な切断。


 意図せぬ形で、最強の波状攻撃が完成していた。

 そして――。


「うおおおおおお! 『限界突破リミット・ブレイク』ッ!!」


 天童の聖剣が、脆くなったゴーレムの核を一刀両断にした。

 轟音と共に、巨体が崩れ落ちる。


「……へへっ、やったな! 俺たちの勝利だ!」

 天童がハイタッチを求めようと振り返る。

 だが。


「勘違いするな。余が命じたから勝てたのだ」

「僕の美技のおかげだよ。君たちはただの壁だね」

「俺が足場を固めてやったからだろ」

「私の指導が適切だったからだ」


 誰も天童の手を取らない。

 全員が「自分がMVPだ」という顔をして、互いにそっぽを向いている。


「……えぇー。仲良くしようぜぇ……」


 天童の悲痛な叫びが、火山帯に虚しく木霊する。

 最強の個にして、最悪のチームワーク。

 第4班の覇権争いは、まだ始まったばかりである。

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