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哭き裂く天使  作者: Norn
第四章:共存と排除
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第35話:敵であるはずの背中

 夜の帳が下りる頃。

 燈朝市の外れ、高架下へと続く土手を歩く。

 足元の土が柔らかく、踏みしめるたびにわずかな跡が残る。


 周囲には、何もない。

 街の灯りも、人気も、音すらも遠い。

 ただ風と、水の流れる音だけが広がっていた。


 「……来ちゃった」

 小さく、呟く。


 呼び出されたから来た。

 それだけのはずなのに、足は少しだけ重かった。


 (燈莉は……どうするつもりなんだろう)

 脳裏に浮かぶのは、あの時の視線。

 正体を見られた瞬間。


 あの目は――

 敵を見るものだったのか、それとも。


 「……」

 考えても、答えは出ない。

 それでも。


 (逃げられない、から……)

 歩みを止める理由にはならなかった。

 やがて、高架の影が視界を覆う。

 暗がりの中へ、一歩踏み込む。


 その瞬間――


 「待ってました。白鷺さん」

 声が落ちる。

 影が、わずかに揺らぐ。

 その中から、人影が分離するように現れた。


 花守燈莉。

 静かに歩み寄ってくる。

 足音は、ほとんど響かない。


 「……燈莉」

 自然と、名前を呼ぶ。

 燈莉は数歩の距離で立ち止まった。


 その目は――

 まっすぐに、こちらを見ている。

 そして逸らさない。

 迷いを隠そうともしていない。


 「来てくれて、ありがとうございます」

 丁寧な言葉。

 だが、その声には僅かな硬さがあった。


 「……話って、何?」

 問いかける。

 燈莉は、ほんの一瞬だけ視線を落とし――

 すぐに戻す。


 「その前に、一つだけ確認させてください」

 空気が、張り詰める。


 「あなたは――」

 燈莉の指先が、わずかに震える。

 それでも、その声は揺れなかった。


 「あれなんですか?」

 風の音だけが、二人の間を通り抜ける。


 嘘は、つける。

 誤魔化すこともできる。

 だが。


 (それで、何が変わる?)


 澄羽は、ゆっくりと息を吐いた。

 そして。


 「……そうだよ」

 短く、答える。

 その瞬間、燈莉の表情が、わずかに歪んだ。


 だが――

 崩れない。


 「……やっぱり」

 小さく呟く。

 その手が、腰の武器へと伸びる。


 「ごめんなさい」

 静かな声。

 だが、その意味は明確だった。


 「私は――見過ごせない」

 己に言い聞かせるよう、呟く。

 刃が、抜かれる。

 冷たい金属音が、夜に響く。


 同時に。

 澄羽の内側から、声が響く。

 『来るぞ』

 ネヴ=ソスの冷静な警告。


 澄羽は一歩下がる。

 だが、視線は逸らさない。


 燈莉もまた、一歩踏み込む。

 距離が、縮まる。


 「……ここで決める」

 小さく。

 だが、はっきりと。


 その宣言が落ちた瞬間――

 空気が変わった。

 張り詰めていたものが、戦闘へと変質する。


 澄羽の身体が、軋む。

 骨が、軋み、肉が蠢く。


 「……変身」

 呟きと同時に、重力が歪む。

 異形が、夜の中に展開される。


 十数の目が開く。

 天使が、現れる。


 対する燈莉は、構えを低く落とす。

 視線は逸らさない。

 恐怖は確かにあった。


 それでも――

 踏み込む。


 「行きます」

 その一言と共に――

 二人の距離が、一瞬で消えた。


 鈍い金属音が響き、火花が散る。

 燈莉の剣と天使の剣がぶつかり合う。

 そこへ、余った片手の剣で追撃。


 咄嗟の判断で追撃を避ける。

 彼女の視界には幾何学的情報が流れ込んでいる。

 天使との戦闘でも最適解を導くべく、カイメラは蠢いていた。


 しかし、燈莉には違和感があった。

 剣のコンマ何秒といった間での軌道の予測、回避の補助。

 ここまではいつも通りだ。


 しかし――その先が見えない。

 まるで、最適解そのものが成立していないかのように。


 「これも力の差ってこと……?」

 地力に差があれば通用しない。

 この現象もそれが原因だと燈莉は理解する。


 直後、天使が消えた。

 否、消えたのではない。

 背後へ高速で移動したのだ。


 「……!」

 気づいた時には、天使の剣は振るわれていた。

 カイメラの解析も追いつかなかった。


 しかし、剣は空を斬っていた。

 当てるのは容易なはずだった。


 「……? どうしてですか?」

 一撃を外した天使を、燈莉は見つめる。

 外せるはずがない距離だ。

 なのに、外れている。


 燈莉は剣を構え直す。

 適応進化(アダプト・コード)構造崩壊(ストラクト・ブレイク)を最大出力で放ちながら斬りかかる。

 しかし、構造崩壊(ストラクト・ブレイク)も天使の前では役に立たなかった。

 片腕を自己崩壊させることで精一杯だった。


 「これもそこまで効かないか...! いったいどうすれば...!」

 燈莉は構えたまま、思考を巡らした。

 視界に数多の情報が流れ込む。


 直後、視界を埋め尽くしていた情報が一点へ収束する。

 折り重なり、圧縮され――ひとつの形、ドリルを成した。


 数多の情報が消えゆく中、燈莉はそれに手を伸ばす。

 視界がいつもの光景に戻った時、右手にはガントレットに取り付けられたドリルが装着されていた。


 それが回転を始める瞬間、腕に赤い亀裂が走る。

 亀裂は玲司のものと同系統であると考えられるものだった。

 体の輪郭が捻じれ、肉体の形状が著しく変化していく。


 やがて、天使より一回り小さい融合体へと変化した。

 その瞬間、いつもは黙っているカイメラが笑った。

 その意味が何なのか、今の燈莉には理解できない。


 それでも、目の前の敵を排除する狙いがあることは理解できた。


 『必ず避けろ。 あれは質が違う』

 片腕が再生し、ネヴ=ソスは忠告するが遅かった。


 「殲滅螺旋(オルレンジ・ハザード)

 ドリルが射出され、一直線に天使へと飛ぶ。

 螺旋状に放たれた力は分散せず、ただ一点に圧縮し、敵を殲滅する。


 間に合わない。

 天使は咄嗟に双剣を交差させ、受け止める。

 それでもドリルは貫通を成立させるかのように、勢いを止めなかった。


 天使は防ぐために力を全振りした。

 出力だけなら拮抗していた。

 だがそこに、最適化された一点突破が重なる。

 天使の防御は、構造ごと押し切られた。


 天使が吹き飛ばされた後に双剣は砕かれ、螺旋が横腹を貫通した。

 体表を破り、肉体を削り取られ、鮮血が宙を舞い、地を染める。


 『澄羽! 生命維持を優先しろ!』

 ネヴ=ソスは、焦りを隠せなかった。

 貫通した箇所に外殻を生成、体表を再生させた後、肉体の再生に取り掛かった。


 融合体の燈莉はどこかおぼつかない足取りで向かってくる。

 天使は振り向く。

 背後には川が広がっていた。

 背水の陣というにも、状況は悪化していた。


 「白鷺さん、ごめんなさい」

 燈莉はゆっくりと剣を構える。

 天使はそれを見つめることしかできなかった。


 断罪の剣が振るわれた。


 ……はずだった。


 地面に剣が落ちる。

 燈莉はそのまま俯いた。


 「……私には、できない」

 融合体の体に亀裂が走った。

 変化への兆しではない。

 肉体の崩壊の直前を表していた。


 「私、は……」

 言いかけたその時だった。

 背後に複数の気配を感じた。


 A.E.O.I.の戦闘員が四人、立っていた。

 それぞれが異なる武器を装備していた。


 「天使と融合体が一体ずつ。 隊長、判断を」

 隊長らしき人物が、ボウガンを燈莉に向ける。


 「天使よりも不安定な個体を優先する」

 今の燈莉は力では天使に劣る程度。

 しかし、肉体が崩壊する直前の今は――


 連射式ボウガンから矢が発射される直前、天使は再生しきっていない身体で駆け出した。

 燈莉を抱え、背後に飛ぶ。


 その身が川に堕ちる直前、お互いの身体は崩壊し、人間態へと戻った。

 夜闇の中であるため、正体を知られることはなかった。


 しかし、ボウガンの矢が三本、澄羽の胸を刺した。

 澄羽は燈莉を抱きかかえたまま、川へと落ちた。


――――――――――――――――――――――


 A.E.O.I.中央基地宿舎のラウンジ。

 玲司は報告書が広がった机でうたた寝していた。

 新たな体の変化と、技が増えたことにより、書面による報告(面倒くさい作業)が彼を襲っていたのだ。


 そんな彼を、端末の振動が揺さぶり起こした。


 「……? 居眠りしていたとは」

 瞼をこすり、体を伸ばす。

 それから端末を見た瞬間、彼は驚愕した。


 燈朝市の外れ。

 市兼県境の高架下の河原。

 そこには天使と燈莉が表示されていた。

 親しい隊員を登録していれば、その位置も共有されるシステムだ。


 「すぐに行かなければ……!」

 彼は槍を掴み、報告書を放置したまま走り出した。


 出発した輸送車両を追いかけるように走る。

 ただ、このまま付いていけば確実に遅れる。


 玲司は行き先を変更した。

 川の下流地点から向かうルートだ。

 そこならば、輸送車両で来る隊員達と挟み撃ちにできるかもしれない。


 玲司は体力消費をなるべく抑えつつ、走り続けた。



 やがて川が見える平原にたどり着く。

 そこから目標地点に向かおうとした。


 その時だった。


 「こんな時間に、この先へどのようなご用事で来たんですか?」

 女性が目の前にいた。

 年齢は玲司よりも少し年上に見えるかどうか程度。

 突然現れたのか、以前からいたのか見当も付かない。


 「A.E.O.I.の者です。 この先には融合体がいるんです。

危険ですのでここから離れてください。」

 しかし、玲司の忠告を女性は気に留めていなかった。


 「一人で来て、大変ですね。 ……ですが、この先は通せません。」

 女性は玲司を見つめる。

 その目は、生命を蝕む邪眼のようだった。


 玲司は無意識に槍を構える。

 この女性はただの人間ではない。


 「――妹に、触れないでください」


 妹……?

 次の瞬間、視界が切り替わった。

 光も、音も、全てが消え――黒だけが残った。


――――――――――――――――――――――


 どうして……どうしてそんなこと言うの。


 ヒーローは、いるの。


 みんなを守ってくれるの。


 みんなの笑顔のために。


 私にそんな力が無いことぐらい、わかってる。


 でも、それでも、お姉ちゃんを守りたい。


 紘一がいなくて死んじゃいそうなぐらい寂しいけど。


 私は、お姉ちゃんのためだったら、何でもする。


 だから、そんな顔しないで……。


 もっと昔みたいに話そうよ……。


 笑顔で、一緒に……


――――――――――――――――――――――


 意識が戻った時、そこは川岸だった。

 先ほどとは風景が違う。

 そんなことより、胸が痛い。

 見てみると、矢が三本も刺さっている。


 一本、手で掴み強引に抜く。


 肉が裂け、血が周囲と服を染める。

 でも、刺さってるよりはマシだ。


 続いて、二本目、三本目と同様に引き抜く。

 意識が朦朧としてきたが、先ほどと同じだ。


 数十秒経ち、ようやく立ち上がる。

 少し離れたところで、倒木に燈莉が座り込んでいた。


 傷が再生していく中、ゆっくりと歩き出す。

 そして、燈莉の隣へ座った。


 言葉は、出なかった。

 それでも――離れる理由も、もうなかった。


 「……どうして」

 燈莉の声が、わずかに強くなる。


 「どうして、逃げなかったんですか」

 責めているのか、縋っているのか。

 自分でも分からない声音だった。


 澄羽は、少しだけ視線を逸らす。


 「……逃げたよ」

 小さく、答える。


 「一緒に」

 それだけ。

 言い訳も、取り繕いもない。


 燈莉は、言葉を失う。

 風が、砂埃を巻き上げた。


 「……私は」

 やがて、燈莉が口を開く。


 「何が正しいのか、分からない……」

 絞り出すような声。


 「任務としては、あなたを止めるべきで……でも……」

 言葉が詰まる。

 言い切ってしまえば、どちらかを切り捨てることになる。


 それが、できなかった。

 澄羽は、しばらく何も言わなかった。

 ただ、燈莉を見ている。


 そして。


 「……別に、分からなくていいんじゃない」

 ぽつりと、呟いた。


 「……え……?」

 あまりにも軽い言葉に、燈莉が顔を上げる。

 澄羽は、視線を外したまま続ける。


 「私も分かってないし」

 「……」

 「正しいとか、間違ってるとか……考えてる余裕ないから」


 その言葉は、綺麗じゃなかった。

 むしろ、雑で、不器用で。

 でも――嘘はなかった。


 「……でも」

 燈莉が、震える声で言う。


 「それじゃ……何をすればいいのか……」

 澄羽は、少しだけ目を伏せる。


 ほんの一瞬、迷うように。


 そして。


 「……助けたいって思ったなら」

 ゆっくりと、言う。

 「それでいいんじゃない」


 「……」

 燈莉の呼吸が止まる。


 「それが正しいかどうかなんて……知らないけど」

 澄羽はわずかに笑う。


 「少なくとも私は、それで動いてる」

 その言葉は、歪だった。

 矛盾していて、危うい。


 それでも――

 妙に、真っ直ぐだった。


 「……っ」

 燈莉の目が揺れる。

 納得はできない。

 受け入れたわけでもない。


 でも。


 完全には、否定できなかった。


 「……ずるいです」

 小さく、零れる。

 「そんな言い方……」


 澄羽は、少しだけ首を傾げる。

 「……そう?」

 「だって……それじゃあ……」


 言葉が出てこない。

 胸の奥で、何かがほどけかけている。

 でも、まだ掴めない。


 「……私は」

 ようやく顔を上げる。

 涙はない。

 それでも、どこか壊れかけている顔。


 「……まだ、分からないです」

 正直な言葉だった。


 澄羽は、それを聞いて。

 「……うん」

 それだけ返す。


 肯定でも、否定でもない。

 ただ、受け取っただけ。


 沈黙が、まだ残っていた。

 川のせせらぎだけが、かすかに耳に届く。

 燈莉に、何かを言うべきなのかもしれない。


 その時だった。


 『来るぞ』

 不意に、内側から声が響いた。


 『A.E.O.I.の部隊が接近している。 数は……四。

先ほどの連中と同一だ』

 澄羽はわずかに眉をひそめる。


 『隣の人間はいくらでも弁明の余地がある。

だが、君がこの状態で発見されれば、正体は確実に露見する』

 「……」

 言い返す余裕はなかった。


 『変身しろ』

 澄羽はゆっくりと立ち上がる。

 燈莉が、それを見た。


 「……白鷺さん?」

 ほんの一瞬だけ、目が合う。

 迷いが、そこにあった。


 それでも――


 「……ごめん」

 小さく呟く。

 その直後、重力が歪む。

 空気が軋み、周囲の景色が引き裂かれる。


 肉体が捻じれ、膨張し、異形へと変貌する。

 複数の目が一斉に開き、世界を捉えた。


 天使が、再び現れる。


 数秒後。

 草を踏みしめる音と共に、四人の戦闘員が現れた。

 それぞれが武器を構え、周囲を警戒している。


 そして――

 その視線が、燈莉に向けられた。


 「花守燈莉! 無事か!」

 「……はい、何とか…」

 燈莉は立ち上がろうとするが、足に力が入らない。

 別の隊員が、天使へと武器を向けた。


 「天使を確認。交戦準備――」

 「待て」

 隊長が制止する。

 短く、しかし強い声。


 「今は戦力が足りない。無闇に突っ込めば全滅する」

 判断は冷静だった。

 そして、燈莉へ向き直る。


 「花守。 協力を頼む」

 「……っ」

 言葉が詰まる。


 「今は任務が最優先だ。 一時的で構わない。

目の前の脅威を排除する。 それが最善だ」

 理屈は分かる。

 でも――


 燈莉の視線が、天使へ向く。

 その奥にいる誰かを、知ってしまっている。

 剣を握る手が、震えた。


 (私は……)

 その時だった。


 空気が、変わった。

 風が止み、音が消える。

 まるで、世界そのものが息を潜めたかのように。


 「……なんだ?」

 隊員の一人が呟く。

 次の瞬間。


 それは、そこにいた。

 誰も、その出現を視認できなかった。


 ただ、いた。

 人の、女性の形をした何かが。

 静かに、立っている。


 その存在を中心に、空間が歪んでいるように見えた。


 「……」

 天使の全ての眼が、そちらを向く。

 ネヴ=ソスが、僅かに沈黙した。

 それだけで異常だった。


 やがて。

 その存在――グラ=ゼルが、ゆっくりと口を開いた。


 「……天使」

 感情も、抑揚もない。

 ただの確認のような声音。

 視線が、天使へと固定される。


 「他は、不要だ」

 次の瞬間だった。

 視界が、切断された。


 いや――

 空間そのものが、削ぎ落とされた。

 燈莉の目の前にいた隊員が、音もなく消えた。


 血すら、飛ばない。

 存在が、途中から無かったことになる。


 「――ッ!?」

 誰かが叫ぶ。

 だが、それも途中で途切れた。


 別の隊員の上半身が、遅れて消失する。

 反応する暇すらない。


 「下がれッ!!」

 隊長が叫ぶ。

 だが、その声も半ばで消えた。


 残ったのは――


 燈莉と、天使だけ。


 グラ=ゼルの視線が、僅かに動く。

 燈莉を捉えた。


 「……お前も不要だ」

 ただ、それだけ。


 燈莉の体が、わずかに浮いた。

 何もされていないが、理解した。


 (死ぬ)

 回避も、防御も、間に合わない。

 カイメラも沈黙している。

 最適解は――存在しない。


 その瞬間。

 視界が、揺れる。

 自分の体が後方へ弾き飛ばされた。


 否、弾かれたのではない。

 押し出された。

 地面に叩きつけられ、息が詰まる。


 視界を上げた時、そこにいたのは――


 天使だった。

 燈莉の前に立ち、全てを受け止めている。

 複数の眼が、グラ=ゼルを睨んでいた。


 外殻が、音を立てて崩れていく。

 それでも、一歩も退かない。


 「……どうして」

 燈莉の声が、震える。

 答えはない。

 ただ、背中だけがそこにあった。


 グラ=ゼルが、わずかに首を傾げる。


 「……守るのか」

 興味の無い声音だった。


 (この人は……)

 燈莉の胸の奥で、何かが決定的に変わる。

 空気が、完全に張り詰める。


 次の瞬間が来れば――


 だが。

 その背中から、目を逸らすことだけは――もう、できなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


本来であれば一昨日のうちに第35話を完成させて更新する予定だったのですが、体調を崩してしまい、お休みをいただいていました。結果として更新が遅れてしまい、申し訳ありません。


通信環境が戻ったばかりで「ペースを戻します」と言っていた直後だったこともあり、余計にお待たせしてしまった形になってしまいました。


現在は体調も回復してきているので、無理のない範囲で、改めて更新ペースを整えていければと思っています。


引き続き読んでいただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします!

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