17
そう言えばこんな友達がいた。
友達と言っても血入りのカレーを共に食べた友達である。
彼女は時たまカレーを作っては私を家に呼ぶやつだった。その味はいつも美味しかった。二十階以上もあるホテルの料理人と比べたらそりゃ敵わないが、まあ普通の人間が作ったにしては上等だった。
ただ、彼女は頬杖をつきながら食べてる時にいつもこう零した
「肉が足りない…」と
彼女は最高のカレーには人肉、それも鍋の前で斬り落としてすぐに混ぜてしまった様な新鮮な肉では無いとどうしても完成しない…と常に考えていた。
だが、完成した時に彼女は罪悪感から首に包丁を刺し、死ぬだろうと勝手に良くない想像をしていたのは私である。
ある時、私はこう提案した。
「私の血をカレーに入れてみてはどうか」と
今、振り返って見ればなんとまぁ、無茶苦茶な提案だったのだろう。だが、カレーを食べる度にどこか物憂げな表情を見せる彼女をどうにかしたかったのである
そうして、私は右手の小指に針を刺し、血をいくらか炒めた野菜に垂らした。
カレーはいつもと同じく完成した。
して、その味はと言えば少し辛かったが、普段と変わらない味であった。
「ごめん」私はとにかく頭を下げたが、彼女は笑いながら「いいの。これで」と
ささやかな声で言った。
「でも、悪かったわね。痛い思いさせちゃってこんな結果で」
「いやいやこっちこそ」
「これは私からのおわび」
そう言って、彼女は私の右手を自身の左手でそっと掴むと、小指を少しばかり咥えた。良くないとは思うけれど、私はすごくドキドキした。数秒間でありながら指が熱くて熱くて堪らなかった。
これが私たちの血入りカレーの全てである。
彼女は消息不明であるが、死んだとも誰かを殺したとも知らせは来ていない。
だから未だにカレーは未完成なのだろう。それにしたって私はカレーを作るのが下手だ、今夜は血でも入れてみるかな




