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そう言えばこんな友達がいた。
その男は中華料理店の一人息子で、学校が終わった後にたまにチャーハンを勝手に作っていた。でもまだ子供なので、中華鍋は使わせてもらえず、フライパンで作っていた。味はまあ、素人よりはマシだけどプロにはまだまだ足りないって感じだった。が、それは普段の話だ
ある時からそいつのチャーハンは吐くほど不味くなった。もう食えたもんじゃないってほどに。断ったら自分で完食していた。なぜそうなったのかと言えば彼は女の子と付き合っていたのである。もう毎日、ニコニコしてて、毎日が楽しそうだった。しかし、ある日のこと。
いつもの様に店に行くと、まるで全財産を奪われたかの如く、厨房の端っこで椅子に座っている彼がいた。何かあったなと思いつつ、チャーハンを作ってもらうとこれがとんでもない美味しさだった。
「すげぇ!これ美味しい!」と言おうとしたが、店主が口に指でバッテンをし、私は何も言わなかった。こっそり店主は教えてくれたそれは彼が女の子と別れてしまったということであった。
それを知ると美味しいチャーハンもなんだか食べずらかったのを覚えている
さて、それから何十年か経ち、私は旅行先である中華料理店に入った。
客はまばらだったが、私が座った席の隣でラーメンを食べていた客が
「この店でチャーハンだけはやめたほうがいいぜ」と呟いた。そう言われると気になってしまうもので、私はチャーハンを注文した。出てきたチャーハンは確かに不味かったがやけに懐かしい味だった。
「ごめんなさいねぇ、うちの人チャーハンだけは苦手なもんで」
髪を後ろで団子にした女性が申し訳なさそうに私に言った。まさかと思い、中華鍋を振る男を見ると間違いなく彼だった。女性は力強く鍋を振る彼を温かな眼差しで見つめており、私はこのチャーハンが不味い理由を改めて知った




