ガール・ミーツ・トゥルー⑤
「じゃあ先ずはルーキーさんが御相手だし、私から教えてあげるわ」
結局、泥しぃとの取引に応じる事にして、ボスエリア横で固まって座り込んでいる。セーフティエリアではないが、泥しぃが絶えず索敵を行ってくれているので、とりあえずは安心して話が出来そうだ。
元より泥しぃが黄衣の蜥蜴に関して何か知っているならば、それはもう、藁にもすがる思いで探していたところなのだ。異論はない、寧ろ有難い。
トゥルエビッツのテイム条件も、教えても大丈夫だろう。だってうさうさペレット持って無いだろうし、少なくとも俺は前のプレイ中では見た事が無い。
「いいかしら?先ずは黄衣、と呼ばれるモンスターや場所、装備やアイテムなんかが存在するのよ。勿論全容は判っていないし、確認出来ている数も少ないわ」
「その言い方だと、上位プレイヤーとかギルドとかでは結構知られてたり?」
「そうね……まぁ数える指に入るくらいのプレイヤーなら知っているんじゃないかしら。この関連の物事を有益と取るかはプレイヤー次第だけど、少なくとも何かしらのエクストラクエストやレアアイテムに繋がっている、という共通認識はあるわね」
なんだかちょっとガッカリした気分だ。いや、勿論アリさんの旦那さん、手背臼さんの生活が掛かっているのだから遊び半分というわけでもないんだけれど、自分達が掴んだエクストラクエストだと勝手に思い込んでしまっていた。
実際には一部では常識、ってやつかな。一応上位帯で情報は止められてるみたいだけど、箝口令とまではならないようだ。
「では、同じような症状……というか現象の起きている方も知ってらっしゃるのですか?」
「何人か、全く同じではないけれどね。気味悪いことに、この辺りに関与したプレイヤーは何かしらのペナルティなのか呪いなのか、はたまたこの異常自体が何かしら進める条件なのかは、ハッキリしないけど等しく受けることになる……先に言っておくけど解除法も判ってないわね」
その言葉に俺達はがっくり肩を落とす。これは期待している情報とかはなさそうだなぁ。となると、後欲しいのは目撃談や倒し方等か?
正直俺達二人で黄衣の蜥蜴に勝てるとは思っていないが……どうにかして素材の一部だけでも持ち帰れたら事態が進展しないかと睨んでいる。
「えっと……じゃあ黄衣の蜥蜴と瑠璃湖畔で戦闘したらしいんだが、瑠璃湖畔のどの辺りにいるとか、出現条件とかはわかるか?」
「あのね、はなだちゃん。まだ基本情報が出きってないわ。先に知っておきなさい。黄衣、と名のつくもの達と敵対するもの達がいるのよ」
「蒼のもの、ですか?」
「正解、なんだ、知ってるのね」
「その知り合いに、黄衣の蜥蜴の素材のフレーバーテキストを見せてもらったんだ。そこに黄衣の蜥蜴が、蒼のもの、って奴らを探してそうな内容が書いてあった」
【憑り行く黄の、一端。目的は無く、アテもない。ただ黄の意思を携えて、その身を委ねるのみ。お前が、蒼のものであるか?】だ。念の為、アリさんにテキストのコピーを取らせてもらっておいて良かった。
泥しぃにも見せて確認してもらう。一瞥後、泥しぃからも同じくフレーバーテキストであろう画像が、俺達の目の前に表示された。
【憑り行く黄の、一端。意識は遠く泡の中。揺蕩うのは赤子か老人か。あぁ、其方が我が主人なのか、蒼を屠ったのも更に遠い記憶】、とあった。
「実は、私達も【黄衣の死骸将】というモンスターを討伐した事があるの。これはその時の素材【黄衣の死骨】よ」
「黄衣の死骨……これはどこで?」
「場所は言えない。ただこれを所持したからか、死骸将を討伐したからか、これ以降アンデットモンスターから矢鱈と追いかけ回されるようになったわ。討伐するのは容易いけど、街やダンジョンの入り口で出待ちされる時もあるの……流石にこのマップには居ないみたいだけどね」
うわぁ、ダイレクトに実害あるパターンだな。泥しぃは素材も手に入るし気にして無いわ、と言ってはいるがホラー系が苦手なプレイヤーだとさぞ恐ろしいだろう。
そして見せられた素材はもう一つ。
【沈み行く蒼の一端。それは縦横無尽に、縛る枷はない。ただ生きる、黄のものより生き延びる。それ故に後には何も残らない】
「【蒼衣の飛蝗】という集団で活動するモンスターのレイドというか、たまたま突発的にギルド達が連携して戦った時があったの。その時の戦利品、【蒼衣の飛蝗翼】よ」
蒼衣の飛蝗……確か柴鴨thも戦ったって聞いたな。確かモンスター自体のフレーバーテキストには黄のものへの事も少し書いてあった気がする。こっちは画像等を撮らなかったので今ははっきりとは思い出せないが。
「他のプレイヤーならもう少し色んな種類のアイテムとかモンスターを知ってるかもしれないけど、私はこの2つしか関わってないの」
「こっちの、蒼衣の飛蝗翼の方は何か変な現象とかは無いんですか?」
「まっ白ちゃん鋭い。それがね、蒼のものの関係するものでは特に報告されてないのよ」
黄のものは異常な効果があり、蒼のものは特に無い……よくわからんな。相対する効果とか、両方デメリットがあるならともかく片方だけか。
まぁ確かに柴鴨thも何か異常があるとも言っていなかったし、レイドに参加したのならきっと素材も持っているだろうしな。
「兎に角、基本ルールとして黄のもの、蒼のものが恐らく対立している。黄のものはプレイヤーに有害、蒼のものは特にメリットもデメリットもない。因みに、この二つ以外の【色】のものは確認されていない、はず。ここまでが、基本情報よ」
「うん、で?情報交換というからにはもうちょっと役立つ情報があるんだよな?」
「ちょっと、はなださん」
少し言い方に棘が出てしまったか。御薬袋さんが慌ててフォローしようとしてくれるが、いい加減この勿体ぶった話し方に逆に何も知らないのでは、と不信感が湧いて来たくらいだ。空気は悪くするかも知れないが、ここは詰めさせてもらう。
泥しぃ自体も良いのよ、と制してくれる。そこは上位プレイヤー、ギルドでも色々任されてもいるだろうし、動揺なく話を続ける。
「私も本題まで長かったから悪かったわ……それで本題。その黄衣の蜥蜴はもう倒された、【HOUSEN】ってギルドにだったかな。あ、じゃあ貴方達が手助けしたいのはそのメンバーなのね」
「お、おぅ。正直そんなにアリさん達と昔話はした事ないからわからないけど、そういう風に聞こえたよ。自分達が討伐したって」
「ならきっと本物ね……おっと、また脱線しちゃうわ。で、黄衣や蒼衣のモンスターはどうやらレアモンスターの更に上、ネームド扱いのようで討伐されるとリポップしないわ」
ノーマルのモンスターは当たり前だが、一応レアエネミーもしっかりリポップはする。トゥルエビッツなんかもそうだ。だがネームド、エクストラ、グランドクエスト(こちらは進行が止まっているので憶測だが)関連のモンスターはリポップ無し。
つまり……。
「つまり、この先の、正確にはもう一つ先のエリアである瑠璃湖畔に行ったところで、黄衣の蜥蜴はもう居ない」
「マジか」
「ええぇ……お手上げですか?」
……いや、それは如何だろうか。確かに黄衣の蜥蜴自体はもうどうにも出来ないのだろうが、その痕跡や手がかりはあるかもしれない。
赴く価値が全く無いとも限らないと思う。
「お手上げ、かは私には分からないけれど。とりあえず私も黄衣の蜥蜴は狙っていたから、今までに確認されていた巣穴の場所は印を付けてあげるわ」
そう言って泥しぃはエリアマップを開く。当然俺達は瑠璃湖畔に入場した事が無いので開けない。のだが、WAO内では地図の売買や受け渡しが出来る。泥しぃは自らの瑠璃湖畔のマップの写しを俺達に送ってくれた。
見れば何本か点在したピンが刺されており、恐らくこの場所が巣穴であろう。瑠璃湖畔自体は他のマップと比べると、やや広めのマップになる。湖は大きく、その名の通り湖にしてはかなり青みが深い瑠璃色の水で、その底は未だしっかり確認が取れないほど深い。
多くのモンスターがその内外に棲息しており、このマップにしかいないモンスターもかなり多い。湖内で取れる【瑠璃鉱石】も特産品で有名だ。
その広く、モンスターも数多く棲息する湖畔の中、目的地まで迷わず行けるというのは、成る程ありがたい。
「ありがとう、後は何かないか?」
「後ねぇ……じゃあもう一つだけサービス。間違い無く、この辺りには黄衣の存在がいるわ」
「わかるんですか?」
「わかるのよ、企業秘密だけど。残念な事続きだけど、どういう存在なのかはわからない。判るのは居るのか、居ないのかだけよ」
成る程、そういった黄衣のものに反応するアイテムやスキルがあるのだろう……多分逆に蒼衣のものに反応するものもあるだろうな。それがどういったものかまでは秘密、と。
潮時だな、しょうがない。寧ろ俺達みたいな駆け出しに、ここまで親切に情報を出してくれた事の方が珍しい位だ。普通はもっと吹っ掛けられたり、情報自体くれない場合の方が多い筈だ。
泥しぃには感謝して。とりあえず黄衣の蜥蜴の痕跡を探しつつ、その周りにいる黄衣の存在が引っかかるのを待つしか無いか。
「まぁ、ありがとう、助かったよ」
「そう。じゃあお次はそちらね、ビギナーさん達。トゥルエビッツはどうやってテイムしたの?」
後一つ、うさうさペレットは残っている。御薬袋さんからは任せますといった表情をされたので、俺から説明する事に。
「まっ白さん、うさうさペレット見せてあげて」
「うさうさペレット?」
「これです。どうも兎系のモンスターに特化した、またたびみたいな効果のようです」
どうぞ、と御薬袋さんが泥しぃに差し出す。
うさうさペレットを一粒摘み上げ、にぎにぎしながら色んな角度から眺める泥しぃ。徐に齧り付くが、謎の壁に阻まれ呻き声を挙げる。
システム的防御壁だね、まだ所有者は御薬袋さんのままのアイテムだから、違うプレイヤーが消費するような行動は取れなくなっている。
ちぇっと態とらしく舌を見せ、ペレットを御薬袋さんに返すと色々と記録を取っていく。
「成る程ね、トゥルエビッツ、か兎系に特化のアイテムがあったわけか……あ、因みにまっ白ちゃんのレベルは?勿論ジョブは一次職よね?」
「レベルは12ですけども……一次職とは?今は、ま、魔物使いですけど」
「合ってるよ。魔物使いは一次、もし一定の職業熟練度を超えたら、次の上位の職業に切り替わるのさ。それが二次職だね」
魔物使いだと確か……【ブリーダー】や【ハイ・テイマー】が二次職で知られてたか。恐らくそこも条件に当てはまるのかの確認だろう。テイムするモンスターによっては、一定のレベル以上じゃないと出来ない場合もある。
そして粗方記録を取り終わった泥しぃは、お次にトゥルーのボディチェックに移ったようだ。一応、触り出す前によろしくお願いしますと、一礼した泥しぃだったが、【一礼】が解らなかったトゥルーに触り出すと同時に思いっ切り頬を蹴られていた。
「う、うぐっ……中々やるじゃない。でも触った感じは普通のトゥルエビッツね……特殊個体では無い、かもしれないっと」
「多分普通のトゥルエビッツだよ、チェックの仕方は知らないけど。後関係あるかは判らないけど、俺達が出会った最初のトゥルエビッツがトゥルーだよ」
「あー、その線もあるかしら……ありがと」
どの線ですか?という御薬袋さんに補足する。要は初めてのエンカウントでしかテイム出来ない説だ。若しくは討伐数も0でないといけないのかもしれない。
「成る程ですねぇ……あ、出会った時のトゥルーはレベルは11でしたよ」
「あら、レアモンスターにしては案外低めね。まぁこの辺りのモンスターならこんなものだったかしらね……因みにスキルはどう?」
スキルか……【トゥルエビズム】なる謎の固有スキルがあるが、俺のパパラッチと同じで色んなスキルの複合に、特殊効果みたいな感じだろうか。発動した、とか発動するとかの通知が御薬袋さんに来るのかは分からないが、今のところそのような様子は無かった。
これも効果分からないし、伝えて大丈夫でしょ!ある程度誠意見せといたら後から信頼も効いてくる、かも知れないしね。
「トゥルエビズムとかいう謎の固有スキルがあるよ。発動した気配が無いからわからないけど、幾つかのスキルが内包されていて、専用の効果もあるっぽいんだけどね」
「そう、エアロビみたいね」
トゥルエビズム……と考え込んではいるが、答えは出るはずもなくまた此方に向き直る。そろそろ此方も出す情報が無くなってきて、果たして満足させられているのやら。
「じゃあ後少し。その肝心のうさうさペレットはどうやって入手するの?」
「あ、あはは、それは……」
ですよね。しれっと流したつもりだったんだけど、錬金の事は流石に話せないしな……かと言って納得いく理由でないと逆に怪しすぎるし。
あー、こんな事ならシナリオプラン考えておくべきだったなぁ。そこまでしなくても適当に口裏合わせとけばなんとかなるかな、とか軽く考えていたけど、今のままでは聞く人が聞けば直ぐにボロが出そうだ。
「うさうさペレットは……プレイヤーマーケットで買ったんだよ」
「プレイヤーマーケット?アタノールの?」
「そ、そう……その、俺達にこの件を任してきた人がね。まっ白ちゃんが魔物使いだって事で報酬の一部としてくれたんだ。後ホラ、まっ白ちゃんの杖も貰ったんだよ」
なんとか流せないかと、御薬袋さんの【三叉の月杖】を見せながら補足するが、く、苦しいか?泥しぃは相変わらず怪訝な表情で三叉の月杖と、俺達を見比べている。
「……むむぅ、確かに二人とも駆け出しにしては高品質な杖ね。でも、アタノールのプレイヤーマーケットに、わざわざトゥルエビッツ特化のアイテムが?」
「や、いや、まぁほら、トゥルエビッツだけって訳じゃないし、兎全般では?ちゃんとアタノールのホーンラビットでも試したし、ね、まっ白さん」
「は、はい、それはもう……効果抜群でしたよ」
そういえば魔物使いになる前だったな、アレ。多分なってからだったらテイム出来ていたんだろうな。
泥しぃの鋭い指摘に冷や汗が流れる。まだそこまで思い至っていないのだろうが、俺は気付いてしまった。初心者がわざわざトゥルエビッツが出るまで先程のエリアでエンカウント粘るだろうか。
また誰かから、アリさんから聞いたという事にしても良いかもしれないが、同じ言い訳ばかりなのも苦しい。
「……はぁー、まぁはい、こんなものかしら?もう補足は無いわよね?」
「そう、ですね?無いですよね?」
「無いな。たまたま貰ったうさうさペレットを持ってたら、たまたまトゥルエビッツに出会ったから思い立って使ってみた。これ以上は俺達にも判らないんだ」
はぁ、とため息なのか無意識に張り詰めていた息を吐いただけなのか、深い呼吸を一つすると泥しぃはその場で立ち上がって見せた。
「了解よ、じゃあお終い!……さぁ〜、貴方達はこの先に進むんでしょ?私はまだ息抜きがてらにヴァパを狩りまくるつもりよ」
「そうだな、折角印も付けてもらったし、行ってみるよ」
ヴァパさん……この後何体のヴァパが犠牲になるのかはしれないがご冥福をお祈りします。
全員立ち上がり、ボスエリアに入場する前に加入していたパーティーを一旦解散し、また俺と御薬袋さんで組み直す。泥しぃはその間に何やらゴソゴソしていたのだが、不意に頭の中でアナウンスが鳴る。
______プレイヤー【泥しぃ】からギフトが届きました。
「お?何これ」
「まぁ、瑠璃湖畔に進むならいるかなぁと思ってね。遠距離魔法を覚えられるスクロールよ」
「スクロール?」
「使用すると魔法やスキルを覚えられる、まぁ教科書みたいなものだよ……でもなんでまた?」
開けて見れば【フレイムランスlv1】の魔法スクロールが入っていた。どのスクロールも基本高い。この下級魔法のスクロールでも、恐らく5万ドンくらいはしたはずだ。
何故、さっきまで取引とか言ってた奴がタダで?……タダより怖いものはないってやつか。
「勘違いしないでね、本当に善意……というかサービスよ!後輩にちょっとくらいはいい格好しないとね。それがあれば次のエリアボスも割と頑張れるでしょ」
「あぁ、正直助かるよ。まだ遠距離魔法が少なくてさ、どうしようか悩んでたんだ」
「ありがとうございます」
いいのよ、と泥しぃは手をフリフリしつつ再展開されたボスエリアに進む。これでお別れだな、俺達も次のエリアに繋がる【シルクル】という街へ歩みを向ける。
大森林の中では比較的広めな街で、装備やアイテムの品揃えも良いと聞く。そこで少し休憩したら直ぐに出発しようかな、時間も余裕は無い。
歩いていると背後でボスエリアが展開されるのが見えた。ああなると他のパーティーやプレイヤーは入場出来ず、外側で待機するしかなくなるのだ。特殊な防壁が張られ、内外からの攻撃では今まで脱出出来たという報告は無い。つまりは【ボス攻略しないと出られない部屋】になるわけだ。
「泥しぃさん、いい人でしたね」
「うー……ん、まぁそうだね。上位の凝り固まったプレイヤー達の中ではかなり友好的だったんじゃないかな」
「そんなに上位プレイヤーさん達って性格悪い方が多いんですか?」
「まぁ俺も少し前の上位プレイヤーしか知らないけどさ、当時でもグランドクエストが煮詰まっていて皆レア装備やエクストラクエストにご執心だったからね」
何人か、顔も出てくるなぁ。その中には勿論あの【紫電】も浮かぶ。いや、性格は当時も良かったけどね。いけ好かない上位プレイヤー達を、取り纏めたり初期プレイヤー達への支援活動なんかも行っていたようなプレイヤーだったはずなんだけどなぁ。
何がどうして、狙われているのやら……。
考えてもわからないので、思考停止し、二人で歩みを進める。
兎にも角にも、瑠璃湖畔に向けて頑張ろう!
◆
一際甲高い鳥の鳴き声が森に木霊し、巨大な閃光を放つ炎の鳥が霧散する。一寸後、眼前でもう何体目かも忘れた、【新緑光の森】のエリアボスである【ヴァパ】が真っ黒焦げになり転がり落ちる。
テクテクと近寄り、最早事務作業のようになった素材回収を済ませる。エリアボス以外の素材、なんなら奇ノ粉以外には微塵も価値が無いので幼体は無視だ。リポップまでの時間を縮める為、自主的にエリアから離れる。こうする事でエリア閉鎖までの時間を節約できる。
それにしても暇なので、先程から自分の今使えるスキルや魔法を片っ端から試しているが、どちらにしても一撃で倒せてしまうので味気がない。
少し前に別れたプレイヤー達、【はなだ】ちゃんと【まっ白ちろすけ】ちゃん達にはお手本にと思って加減して見せたけど、効率重視すると面白みに欠けるのよねぇ。
「はぁ〜……今のは【炎雷鳥】で、次はぁ……おっ?」
______プレイヤー【ヴィオ】よりメッセージが届きました。
あは〜〜♪早いわねぇ、これは本気でご執心なのね……はなだちゃんには悪いけど、付き合いの長さで言うと紫電君の方が長いのよねー。
はいはい、えーと……あー、めんどくさいわねぇ。もういっそ通話で連絡しちゃうか。
フレンド欄から【ヴィオ】を呼び出し、コールすると秒で繋がった。こわっ、流石に付き合い長いとは言えドン引きよ。
「泥しぃっ‼︎今どこだっ⁉︎あいつを、はなだを見たのかっ⁉︎」
「そうよ〜……というか、久々の会話なのにそれはなくない?ヴィオ君」
「……五月蝿いな、要件だけ言えば良いんだよ」
おぉ怖い。この子時々こう、自分の世界に潜るというか、猪突猛進な面があるのよねぇ。前も何かしらの用事があって直ぐにログアウトしなきゃ行けない時に、鬼のような勢いでノルマタスクこなしてたっけ。
「見たというか、さっき会ったわ、はなだってプレイヤーに」
「どこっ、どこでっ⁉︎」
「噂通り必死ねぇ……さっき別れた時はもう少し探索したらスガナダのホームに帰るって言ってたわよ。私が【新緑光の森】にいるから、その方面からじゃない?」
「そうか……くふふっ、わかった」
「……一つお願いがあるんだけど」
それに対して返答はない。というか場所の説明をした後からはまた一人の世界に入ったようで、此方の話が何処まできっちり伝わっているのやら。
場所も、まぁヴィオ君に全面的に協力するのも悔しかったし、ルーキーの顔を立てる意味も込めて、敢えて時間のかかる遭遇の仕方を伝えた。現在地を教えたら来ちゃうものね。
「はなだってプレイヤーと一緒に行動している、まっ白ちろすけっていうプレイヤーがいるの。エルフで金髪の美人さんなんだけど、この子は全くのこのゲームの初心者みたいだったわ……手を出さないように」
「…………」
沈黙、も束の間。一方的に通話は切られてしまった。もー、折角本当の意味での、ルーキーが入って来てくれたのに潰しちゃわないでほしいのよねー……これだから上位の癖のあるプレイヤーは苦手なのよ。
お目当てのはなだちゃんの方は……多少ムカつくけどルーキーはルーキーだし、少しだけ時間稼ぎをしてあげた。狙われているという情報も伝えてはあるし、精々何かしら強くなって帰ってきなさい。そしたらワンチャン位は……無いか。
「はーやれやれ……【サーチ・エネミー】っと」
通話しながら再開していたボスエリアに再度入場し、直様索敵を開始。あーいるいる、次はどれにしてやろっかなー。
遅れましたが、七夕でしたね。億万長者になりたい




