表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/80

Let's work①

「それにしても砂塚のやつ、あんなに怖がってる下野さんを、無理矢理引っ張っていくなんて、ちょっと見直してたのになぁー」


「まぁまぁ、色々あるんじゃないですか?私達も何か気に触ること言っちゃったかも知れないですよ」


んー……なんか釈然としない。まぁ御方くんはちょっと噛んだ事気にしすぎだろとは思ったけど、それがそんなに悪い事だったとも思えないしなぁ。


結局追いかけて行った御方くんはおずおずと奥から帰ってきて、砂塚から他人の事も考えろと言われたとちょっと凹んでいたか。笹部さんはまた話を聞いてみるわ、と言っていたっけ。


持っていた石ころを掌で転がしながらベッドに横になる。今は前日のボスエリア攻略の成果で錬金会だ。ついでに自店の売り物にする予定のポーション類も作り溜める予定。【予測】スキルを御薬袋さんが獲得したおかげで、ハズレの錬金をする事が無くなって、かなり効率が良くなっているのだ。


「ほらほら、いいのありますよ!【白羽のブーツ】ですって!初期のブーツと下級天使の羽で作れますよ」


「へぇ〜……どんな感じ?」


「もう……心ここにあらずですねぇ。BITは今のブーツより3だけ高くなりますが、何より【移動速度増(弱)】が付きますよ」


お、それはかなり良さげだ。なんだったら初期のブーツなんか街中で格安で売ってるし、これはアルコンさん周回もさもありなんですな。


とりあえず作らない理由も無いので、自分の分のブーツと下級天使の羽も渡して作成してもらう。レア度は2だが効果は序盤では破格だ。早速装着する。速くなった自覚は無いが、移動が速くなるので一つ一つの所作や攻撃が速くなるわけではない、移動は速くなったり、行動は通常通りの速度だったりとちょっと身体の操作が難しい。


「ありがとう……白雲は派生無さそう?」


「そう……ですね。予測も使ってみてますが、剣じゃ無くなっちゃいます」


「あー……それは今は痛いな。この時点でこの強さの武器持ってるの凄いアドバンテージなんだよねぇ、無くなるの辛い」


大体一発KOに出来るからね。ナイトスマッシュや閃光刃と合わせるとホント敵無しだ。


「うさうさペレットとかは?」


「今回兎素材あまり取れてませんからありませんよ……面白そうなので言えば、【下級天使のラッパ】ですかね。下級天使の鱗粉と小狼の獣骨、更に化朽木の枝を混ぜて出来ますが、予測でも効果までは見れなくて分かりませんね」


なんだよなー。効果不明な物は作るのに勇気がいる、有用か分からないからね。最悪素材の無駄になってしまうわけだ。予測も万能な訳では無い。錬金のおかげか、前のアカウントではお目にかかれないような代物が沢山出来る。


でもね、やっぱりそういう……ガチャというか、実験のワクワク感?みたいなのには抗えないんだ。まさか神話に出てくるような終末を告げるラッパではないだろうし、試してみたいな。


「作ろう、面白そう」


「了解です……じゃじゃーんと、出来ました。えーと、【下級天使達の号令に使われるラッパ。彼らはこの音を聞き逃すことはない】ですって」


「聞き逃すことはない、か。陽動用、かな」


成る程、これはアルコンさん周回説濃厚ですよ。これで確実に注意は引けるわけだからね、その時点でナイトスマッシュがいやでも成功する。


「さーて……もう目ぼしいものは出来無さそうなんでポーション作っちゃいますね」


「はーい……じゃあ俺はなんかつまめるもの買ってくるよ」


ポーションはとりあえず毎回錬金会を開く度に50個程作っておいて、街の倉庫に預ける事にしてある。今のところ300個くらいは在庫があるが、なんせ需要がどれ程あるか分からないし、多いにこしたことはないだろう。


ポーションは【薬草】+【レア度1】で作れる事が確定しているので、その辺で石ころを取りまくってある。薬草も見分けられればその辺でも採れるので、原価は人件費位となる。


勿論、ポーションだけでなく上ポーションにも挑戦中だが、【ポーション】+【レア度2の魔物素材×2】で確定しており、中々コスパがいい、のかどうか。NPC店の相場的にはポーションが一つ100ドン。上ポーションが1000ドンとなっており、ここまではNPC店でも購入出来る。


が、特ポーションはNPC店では今のところ販売している所は無く、プレイヤー店からしか購入は出来ない。加えて中級以降のプレイヤーには回復量的にこちらの方が需要は高く、一気に値段が跳ね上がるのだ。ちなみに特ポーションは今のところ確定の錬金ルート無し、上ポーションを使ったランダム枠で出来る位だ。


予測でランダム枠の結果も分かるようになったとは言え、ランダムはあくまでもランダム。結果が分かるだけで変えられはしないので、特ポーションが来るまで錬金し続けるのも効率はよろしくない。まぁその分面白いアイテムとかは生まれるんだけどね。


というわけで、当面ポーション、上ポーションをちまちま作って溜め込んでいるわけだ。

錬金が一つずつしか出来ないためちょっと時間がかかる。手持ち無沙汰なのでぐるっと街を回ることにする。


ホテルを出て、先ずは屋台通りへ。昨日ミニウルフの串焼き食べたしなー……今日はホーンラビットバーガーにするかな。俺チーズたっぷりのやつにしよーっと。


お目当ての屋台を見つけ、購入。このゲームのいい所は食事や飲み物が最適な状態を保たれたまま保存出来ることよね。


まだかかるだろうから、更にぶらついてみる。アタノールにもランドマークは幾つかあり、それで大体区分けをされている。今居るのはプレイヤーマーケット地区。


帝国が秘密裏(公式設定)で運営しているカジノ区。錬金術師になりたい研究者達が集う研究区。そして住民が住む住宅街、少しの貴族街に、はみ出し者が多いスラム街。


御薬袋さん居ないし、スラム街とか行ってみるかな。やっぱり女の子と一緒だと気を遣っちゃうよね、俺も女の子だけど。


ボチボチと歩いて移動するが、あんまりボーっとする間も無く着いた。多分ブーツのおかげかな、いつもより気持ち速く感じるね。通常時の早歩き位かな。


他の街中と違い、煌々とした街灯は無く、あるのは如何わしそうな雰囲気の店のネオンと、申し訳程度にある家々から漏れる小さな灯りのみ。全体的に暗いアタノールの中でも際立って暗い。


よっしゃー、掘り出し物見つけちゃうぞ♪と意気揚々踏み込む。プレイヤーマーケット地区とは違い地区を分けるアーチなんてあるはずも無く、陰気さと薄暗さ、そして鼻につく臭いが増したことでスラム街に入場した事がわかる。


スラム街はボロボロの家屋や小屋のような物と、外観が比較的マシな建物はアングラなショップが殆どだ。その隙間の路地を各々が色んな資材を持ち寄って住居としている。


「しっかし、臭いまで再現というか表現するなんて大したもんというかなんというか。ゲームってよりもう一つの現実、に近いよなぁ」


テクテク歩く、臭いもさることながら路傍に横たわっていたりふらふらしている物乞いNPC……だよな?なんていうか鬼気迫ってて凄い。まさか好き好んでこんな所で物乞いごっこするわけはないだろうから、物乞いにプレイヤーはいないと思いたい。


時折、横から手が伸びてきてドンをせがまれるし、子供が走ってきたら要注意だ。スリの可能性が非常に高く、持った覚えのない【財布をスラれました】のアイコンと共に所持金が10%減少する。


「危ないぞー、気をつけてなー」


今も子供が前方から走ってきていたので、先に声を掛けておく。こうする事でスリを予防出来るのだ。はーい、と元気の良い返事を貰いながら男の子とすれ違う。


少し離れた家と家の隙間にもう一人いるのが見える。あれは多分、仕掛けた時にしくじった際のリカバリーというか囮の子だな。そして斜め前方の低めのボロ屋の屋根に、伏せるようにもう一人。あれは見張りかな。


なんか、久しぶりに来たけどこんなにスラム街の子供って統率取れてたっけか……凄い計画的だな。もっと行き当たりばったりにやってるものかと思っていたな。


……ちょっとだけスキルの練習というか熟練度上げとかしちゃうか。


【隠密】スキル、パパラッチといえばなスキルだな。午前中アルコンに勝った事でレベルが上がったんが、隠密のレベルは上がらなかった。特殊なアイテムを使うスキルもあるけれど、大概のスキルは使って熟練度的なものが貯まると、次のレベルアップで更新される。


要は使用回数や何かしらの細かい条件が満たされていなかったようなのだ。アルコンの視界から外れる時や、なんなら道中の雑魚モンスターにも使っていたのだが、まだまだ足りない、のかも知れない。


よって、彼らの実態を調査がてら隠密スキルの練習台になってもらおう。道の途中で消えては余計に怪しまれてしまうので、陽動の子供を通り過ぎて、角を曲がる。更に屋根の見張り役からも見えなくなったあたりで隠密スキルを発動。


一応街中でもスキルは使える。それどころか攻撃スキルや、直接攻撃も出来る。が、無闇矢鱈に街やNPCに向けて使えば、自警団NPCに狩られるわ、名前のプレートが赤色になり自分は犯罪を犯したと周りのプレイヤーに宣伝して歩くことになる。レッドプレイヤーってやつだね。


それはさておき、隠密スキルを発動しても自分自身に使用感があるわけではないが、うっすら体表にグレーの膜がかかっている。一度4人でいた時に実験してみたが、これはどうやら周りからは存在を認識しづらくなるようだ。


とは言えしづらくなる、程度なので透明化ではない。俺を元から認識していて、必死に目を凝らせばうっすら見えるらしい。そして音や匂い等も希薄にする事は出来るが、流石に0にはならない。安心はできないって事だね。


さて、もう通り過ぎて少し間隔も空けたから撤収する頃かな?少し戻り、曲がった角から顔を覗かせると見張り役が降りてきて陽動役と合流するところだった。


二人は期待外れだったような、がっかりしたような仕草で二、三言交わした後、実行役の少年が消えて行った路地の方に小走りに向かい出した。


「おっと観察するだけじゃなくて着いていかなきゃな」


勿論、隠密にお喋りは厳禁だ。自ら思い至り口をキュッと結んで追いかける。どうも一人暮らしが長くなって来た影響か、ふとした所で大きな独り言が出ちゃうんだよなぁ。


置いていかれないよう、存在が希薄になっているとは言え最低限の距離を保ちつつ、追いていく。途中で実行役の少年が待っており、二人につまらなさそうに話しかけていた。ここで漸く、見張り役が女の子。陽動役が男の子なのが確認できた。


「カミュ、コニー、今日はハズレだったな……トリス姉ちゃん達も待ってたし、早めに帰ろう」


「そだね」


実行役の少年からカミュと呼ばれた少女が見張り役。返事もなく俯いて歩く少年がコニーのようだ。実行役の子はわからない。そのまま歩き出したので、こちらも尾行を再開する。


そのまましばらく歩く。結構長めに歩いているし、尾行警戒なのかそもそもスラム街が入り組んでいるだけなのか、よく分からない。時たま屋根の上や、家屋の中を通り過ぎたりして、3人とも一本の筋に入り込んだ。


そこで、再び話し声が聞こえる。少しずつ中に入っていくと、ギリギリ見える範囲で3人が誰か大人の人間と話しているのが見えた。


隠蔽用だと思うが高そうで、且つ隠密性高そうなフード付きマントを装備してはいるが、フードを取っているので丸見えだ。背丈はどうだろう、150後半くらいか、恐らく女性、長い金髪にさりげないが髪留めに使っているのは多分高級な宝石だな。


……ん?てかあれ、あの整った顔と金髪のロング、そして遠目からでもわかる大きな青い瞳。見た事あるな……なんだ、えーと……。


兎に角、カメラを起動して、一枚パシャリ。


___プレイヤーはなだの【パパラッチ】スキル下においての撮影を確認。

___写真内に重要確認物、及び【スキャンダル】を検知しました。

___ステータスに補正が施されます。

___INT+3 DEX+15


キタキタキタキタァ‼︎【スキャンダル】ゲット‼︎でけぇ、マジ半端ないって!


実は午前中のアルコン戦の直前。勿論忘れずにボスモンスターであるアルコンを撮影しておいたんだが、その時に【下級天使アルコン】でATK+4、そして同時にスキャンダルとして【酒に堕ちた天使】を獲得。そちらがなんと!LUK+10と来たもんですよ。


いや、今までがおかしいと言うか、なんだか少しパパラッチじゃない感じはしてたんだよ。俺がしていたのって、要は図鑑を埋めていっているようなもので、現実でのパパラッチ的な仕事内容とは違うよなーと悶々としていたんですよ。


しかしまぁ、元からぶっ壊れスキルだとは思っていたけれど、この【スキャンダル】要素はヤバいね。上がり幅が違いすぎる。今のDEX+でかなり素早さが増した。これで移動速度と同じくらいには一つ一つの動作も早く出来るようになったわけだ。


因みに、AGIやDEX、スキルや装備で移動速度や素早さが上がるが、常にその速度で動く訳じゃない。出せる、動けるようになるって感じだ。車で言うと、150キロまでしか出なかった車が200キロ出せるようになる、が分かりやすいかな。


さてさて〜、何が写ったんですかね〜っと。【ストリートエンジェル】、これはスキャンダルのネームかな。それと……【帝国第二皇女トリス・H・メギストス】……おぉ?


こ、こ、皇女⁉︎皇女、ってアタノールのか?え、プレイヤーからしてもパレードやらの帝国行事か、年末なんかのイベントの時しか顔を見れないあの激マブな?


そうか、パレードだわ。どっかで見たと思ったらパレードで凱旋してましたわ、でっかいユニコーンに乗って。その時にちょっと気になって攻略サイトで顔写真とか判明してる情報漁ってたんだったわ。


何だってこんなスラム街に?……こ〜れは追加スキャンダルの予感か?


直後、旋毛に冷たい感触。同時に鋭利で硬い感触も感じる。


「動かないで、動くと刺す」


誰か、頭上にいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ