直往邁進②
「これで、終わりだ!【閃光刃】!」
白雲を大振りに振りかぶり、少し距離のあるトレントスに対して振り下ろす。振り下ろしの瞬間、白雲はその白さを際立たせる輝きを放ち、刀身から大きな衝撃波が飛び出す。
衝撃波は周りの小さな木々を蹴散らしながらトレントスに到達すると、爆砕した。威力ヤベェな、このスキル。
あれからは、しばらくトレントスを順調に狩り続けていた。【閃光刃】はその最中でレベルが上がり、覚えたスキルだ。今はその試し撃ちの戦闘をしていたところ。
狩っている最中に気づいたが、最初のトレントスのように、初撃から行動不能にしてしまえば実感出来なかったものの、それ以外でまともに戦闘した場合は【呪胎】の効果により、確かにヘイトはこちらに向きやすい様に感じられた。俺が先頭に出ているからという事もあるかも知れないけどね。
という事で、時々休憩というかお互い離れて戦っている。勿論直ぐにカバー出来る位にしか離れていないけど。今は御薬袋さんがちょっと休憩に入っていたので、一人で狩っていた。
「おっほ〜……流石MP全部持ってくだけはある」
「お疲れ様でした、【閃光刃】でしたっけ?凄いですね」
「威力はね、ただMPすっからかんになるから他のスキルはしばらく使えなくなる。無闇には使えないかな」
今使った閃光刃はMPを全て消費し、消費した分だけ威力が増すスキルだ。更に追加で敵に目眩しの効果もある。それを使用したので、今の俺は初級の魔法スキルすら使えない。まぁ一応時間経過でHP・MPは回復するから、安全な場所があるなら問題はないかな。
ただ、必殺技的なスキルが取得出来たのは大きい。ナイトスマッシュは状況によっては無力だからね。特にボスなんかは基本的に発見された状態から始まるから、ほぼ意味がない。なんならどうにかMPの回復ソースさえ確保できれば、閃光刃からのナイトスマッシュも有りだ。
「じゃあ、とりあえずトレントスはこんなものかな……どうする?ちょっと休憩する?それかミニウルフの居る場所も割と近いけど、そのまま行く?」
「んー……なんか、今のちょっとノっている状態の方がいい気がするので、このまま行きましょう!」
ふんす、と鼻からやる気の呼気を出しファイトポーズをとる御薬袋さん。確かにそういうテンションというか、ゾーンというか、体感する事は間々ある。俺も疲れても無いし、このまま前進しよう。
森は更に深くなり、木々の種類も何となくおどろおどろしい物に変わる。相変わらず謎の生物の鳴き声は木霊し、更に不気味さを後押ししている。だがノリにノっている御薬袋さんは気にせず晴れやかな顔で着いてきてくれている。
「それで、ミニウルフさんは強いんですか?」
「いやー、単体では別に。体力だけならトレントスの方があるよ。ただ何体か群れてくるから、初めての多数相手の戦闘訓練、みたいな感じかな」
「思ったんですけど……なんか出来すぎてません?」
「というと?」
出来杉とは如何な物だろうか。順調に進んでいるといえばそうなんだが、ギフトの事を抜きにしても、順当に行っているだけで多分他の多くのプレイヤー達も同じ様なルートで進んでいるだろう。
「ちょっと、あまりこういうファンタジーなゲームはプレイしないので、このゲームだけなのかにもよるんですけど。理に叶ったというか、本当に教科書を読みながら授業を受けている気がしまして」
「……まだよく分からないな。敵の種類とかって事、かな?」
「そうですね、後は性質とか?今まで戦ったホーンラビットとトレントス、これから戦うミニウルフとハイゴブリン。知性の低い獣、鈍い動きのタフなモンスター、倒しやすい群れた獣、そして、ゴブリンというからには人型、なんですよね?」
確かに……ゴブリンが人型で、登竜門的な存在なのは理解していたし、割と皆知っている事だったが、どうだろう。改めて言われて見ると、正にステップアップストーリー。
決して無理はさせず、且つ効率良く戦闘経験や理論が学べる、ように並んで配置されていると言えなくも、ないか?わからないな、正直意識した事がなかった。
確かに、他のファンタジー系のゲームでは初モンスターがゴブリン等の人型なんてザラにあるし、弱々しいスライムばかり続いたと思ったら急に飛行型のドラゴンが出てきたり、なんてゲームも沢山ある。
俺達の場合、五使に冒頭から遭遇してしまったのはイレギュラーとして、確かに初期の拠点からは素晴らしい配置だ。
「確かに、良い配置で敵が並んでいる気はするけど……」
「まぁ……だから何?ですよね」
「いやまぁ、きっと束内さんや製作陣が考えて配置したんだよ。良い仕事してますねー、みたいな!」
なんとも言えない空気で結論付けられて、ちょっぴり落ち込んだ御薬袋さんを励まそうと、余計わざとらしい答えになってしまう。だからと言って気の利いたコメントも出来ない自分が恥ずかしい。
「まぁ、なんにせよ、悪い事ではないんだしさ、気にせず行こうよ。もうすぐ出るし、ミニウルフ」
「え、もうですか⁉︎」
そう、先程のトレントスが跋扈している森の部分から本当に、少しだけ奥に移動して来た現在、もう同じ距離ほど進むだけでトレントスの生息地から一転ミニウルフの生息地に早変わりするのだ。
ゲームでは何もおかしな事では無いし、まぁ自然界でもそんなものかと思われる。トレントスもミニウルフも、ライフサイクルやそもそも種族が違うのだから、共生する事だってある、のかも知れない。
「同時に襲われることはない、と思うし、襲われたとしてもミニウルフのスピードにトレントスが合わせられないから、どちらにせよ別々に相手する事になるよ」
「成る程……確かに、トレントスは普通に走るだけでも攻撃を全てかわせますもんね」
「ミニウルフからはちょっと手強くなるし、頑張って行こう!じゃあちょっと……索敵しまーす」
本日何回目かの魔眼解放!ちょっと慣れてきたのか、短時間索敵する位なら苦にならなくなってきた。もう少し奥側の、森の中央部に向かって流れる小川の側に、水分補給中なのか3匹確認出来る。
余り犬の種類に詳しくは無いが、多分中型犬位のサイズ感、今はサーモ風にしか見えないが、本来はクリーム色の体毛に、目立つ大きな牙。こういう手合いはシバックスが例えるの上手そうだな。
まだ此方には気付いていないので、水を飲んだり足で身体を掻いていたり、傍目から見るとほぼ普通のワンちゃんだ。多少、牙が殺意有る大きさで、多少、だらしない口元からぼとぼと涎が垂れているのに目を瞑れば?普通のワンちゃんワンちゃん。
「あそこ、もう少し奥に小川が見えてくるんだけど。その側に3体、まだこっちに気付いてないのがいる。ただ、ウルフ系は匂いに敏感なのか、大概気付かれるから不意打ちは無理かな。構えだけしておいてね」
「は、はい!」
武器を取り出し、構えながら前身する。前のアバターの時もそうだが、こういう犬系のモンスター達は恐らく嗅覚で索敵している。脳に作用して行うダイブゲームでは、匂いが再現されている事も少なくはなく、リアルファンタジーを目指すWAOも例外ではなかった。
特にゲーム内でお風呂に入らないと臭くなる、という事も無いのだが何かしらで嗅ぎ分けられているのだろう。遠距離攻撃手段がない今、奇襲は不可能だ。ちなみに臭くはならないが、香水はアイテムにあったりする。
「来た!こっちに二体、まっ白さんの方一体向かってきてる!」
「もう気づかれたんですか……流石狼、憧れますね」
わかる。なんか、こう、狼って良いよね。こういうところが厨二と言われれば、それまでなんだが。狼は動物的な、モフモフさもそうだし、ファンタジー的神々しさ、野性味、全て持ち合わせている気がする。結構創作物では強めに書かれたりするし。
だが、ミニウルフは強く無いんだな!
ぐるると吠え声が聞こえたかと思うと、木々を掻い潜って迫るミニウルフが目の前に。既に構えている俺達は慌てる事なく飛びかかってきたミニウルフに一撃入れる。
御薬袋さんのメイスは当たりどころが良かったのか、ベゴっ!っと大きな音がして、ミニウルフを一撃で葬っていた。俺は正面から噛みつきに来た牙を白雲で受け止め、そのまま組み付かれそうになったので横に振り飛ばす。
一太刀は入れたのだが倒しきれず、遅れて出てきたもう一匹と共に距離を取り直される。フリーになった御薬袋さんがこちらに駆け寄って来ようとしたのが見えたので、首を振って制止した。折角なので対多数との戦闘を見ておいてもらおう。
じりじりと、一定の間合いを保ちつつお互いに好機を伺う。視線は、均等に、見ているぞとアピールするように向ける。先に仕掛けたのは一度飛びかかってきた、手負いの方のミニウルフだった。
じりじり間合いを測っていたのに我慢ならなくなったのか、後肢全体にググッと力を込め、一直線に間合いを詰めてくる。このまま迎え撃つのは悪手だ、もう一匹が少し後ろから着いてきている。押し負けるか、少しダメージを貰うだろう。
手前のミニウルフの胴体を狙った噛みつきを、バックステップで躱す。すかさず、斜め左からもう一匹が飛び出して、本命の頭への噛みつきを繰り出す。喰らっても即死では無いだろうが、侮れはしない。
後方に跳びながら方向を変えるのは難しいので、MPも若干回復したし、ここはスキルに頼らせていただく。レールスライドで逆に迎え撃ってやる。前側に意識を傾け、瞬時にスライド。予想では正面辺りに移動する筈だったが、思ったより移動し、ミニウルフの背後に立っていた。
一瞬、思考が追いつかずミニウルフを見失うが、それは向こうも同じだったようで追撃は来ない。代わりに助け舟。
「はなださん、後ろ後ろー」
返事の前に即反転。ミニウルフもこちらに気づいたようだが、もう射程圏内だ。白雲を唐竹に斬り、一体が虹になる。ここで一拍。
手負のミニウルフが此方の出方を伺っているが、もう様子を見る必要もないだろう。多数いたから厄介なだけで、一匹なら造作もない。
正面から走り寄り、白雲を下段に構える。警戒したミニウルフはギリギリのカウンターを狙うようだが、それはお見通しだ。なんせミニウルフには噛み付くか引っ掻くかしかないのだ。全て正面に攻撃するしかないのだから。
接触する寸前、踏み足に力を込め真横の木の幹を踏み台にし、飛び上がりミニウルフの背側へ。噛みつきを空振りし、完全に隙を見せたミニウルフの身体を白い刃が抵抗も無く、分断した。
「ふぃー。やったねー」
「お、お疲れ様です!」
ちょっと離れた場所から御薬袋さんが走ってくる。まだメイスは手に握られていて、少し走り難いようだ。インベントリにしまうのは忘れているのだろうなぁと苦笑する。
一応、左目を解放したままなので、辺りを見渡すが敵影は無し。また封印し、安心して勝利の報告をしよう。
「ミニウルフ達も、あんな知恵というか……囮というか、するんですね」
「意外と賢いモンスターは多いよ。特に集団でいる奴らは、集団で行動出来る時点である程度知恵が回るからね」
「最初の二発と、最後敵がどうするか、は分かっていたんですか?あのような反応出来るものなのですか?」
「最後のは、分かってたよ。どうしても前側にしかあいつらは攻撃出来ないから、相方もやられたし後はカウンターしかないだろうってね。最初の連撃は勘、かな」
何処から攻撃するかとか、タイミングとか、多数居ると把握しづらいのは当たり前。重要なのは視線を均等にし、一匹に集中しない事。後は何となく雰囲気で察したりとかも重要だ。仕事や勉強なんかでも、数をこなしていると、たまに違和感を覚える時がある、あれに似ている。
それら経験が積み重なって勘となる。色んな物が進化した今でも、人に居場所があるのはこの経験や勘といったものが要因なんじゃないかな。
「経験値、で何とかなるものですかね……」
「いや、まっ白さんも中々出来てきてるからね?普通ここまで来るのにももうちょいかかるもんだよ」
ちょっと凹みそうだったが、実際ウソじゃない位の成長ぶりである。元は殆どこういう戦闘が有るゲームをした事がない人なのだ、寧ろ俺は初めての頃、ここまで動けていただろうか……。
兎に角、無事にミニウルフとの初戦も打ち勝った。今日は後何体か狩るとして、先ずは休憩だ。身体は資本だからね。
◆
「というわけで、はい、じゃん!出来ました、【化朽木の小盾】」
なんだその動画配信みたいなノリは。ちょっとノッている通り越して徹夜明けのテンションみたいな御薬袋さんから、メッセージと一緒にアイテムが届く。
開いて見ると、成る程。片手装備用のシールド、バックラーみたいな物か。簡単な攻撃や弓などの飛び道具の防御、更にはぶん殴るのにも使えちゃったりするね。タフさが売りのトレントスの素材から錬金されたからか、一応【HP+10%】までついている。
「ありがとう、いいの?」
「どうぞどうぞ。私のメイスは両手じゃないと使いづらいですしね。後、はなださんがHP高い方が、私も生存率上がる気がします」
確かに、ではないが強かな理由もあるわけだな。まぁ有り難く頂戴して装備する。見た目は所々ひび割れた木を、鉄製品で加工したシンプルなものだ。
これで組み付かれたりした時にもダメージは軽減出来そうだし、戦略性が増したな。何よりHPの上がり幅が%なのはデカい。これが+100みたいな固定なら高が知れてるのだが、%系は元の値が高くなるほど恩恵も大きくなる。なんとか改造とか重ねれば永らくお世話になるかもしれないな。
「ありがとう、他はどうかな」
「んー……まだミニウルフの素材は少ないですから、ほぼトレントスで結果が分かるのは今のと、【化朽木の魔杖】くらいですが……杖は使わないですよね?」
「俺は使わないかなー……まっ白さんは今後錬金以外はどうするの?そのままメイスアタッカーにするのか、支援職にするか」
支援職と、一括りにすると多種多様なので難しいが、戦闘面で言うとデバフ・バフを駆使して味方を強化する職だ。鳥野内君の祈祷踊子なんかはそうかな。後は戦闘以外では錬金術師なんかの生産職も当たる。
色々意見はあるだろうが、個人的には遠距離武器や魔法アタッカーは支援職と呼んでいいのか微妙なところだ。普通に火力だけなら我々前衛戦闘職と変わらない火力で戦えるしね。
御薬袋さんにも一応武器を選ぶ段階で、前衛後衛職の違い等も説明した。あの時は色々学ぶには実際に体験する方がという事で、比較的使い易いメイスを選択していたが、今はどうだろうか?
「……悩みますね。正直戦闘は余り得意ではありませんが、やっぱり前衛の方が色々分かり易い気はします。ただ、これからも二人で行動するのなら、どちらかは後衛の方が良いのかな、とも感じるんですよね」
「ごもっとも、大正解です。基本誰かと組むとなったらバランス重視だよ。前衛ばかりが集まっても、お互いに邪魔をしたり遠慮して攻撃出来なかったりするしね」
「ですよねぇ……はなださんが後衛するのはどう思いますか?」
「……どうだろ、あんまりした事ないなぁ。基本前衛ばっかりしてたから、経験にはなるのかもしれないな。ただ、今まっ白さん一人で前衛任すのは酷い気がする」
まだまだ初心者ですから、攻撃役の入れ替わりのタイミングや、戦闘技術自体も拙い。そこに後衛初心者の俺が加われば、幾ら初心者マップと言えど危険はあるかもしれないな。
んー…………。
「「保留」」「だな」「ですね」
保留で。もうちょいしてから決めよう、それが良い。という事で、この組み合わせの錬金は置いといて、道中拾った適当な素材でランダム錬金ガチャを数回。
まぁ、色々無難な回復アイテムなんかと、一つ面白いのが【うさうさペレット】なる物が出来た。説明テキストによると、【兎類が好む魔法のフード。病みつき間違いなし、貴方からもう離れられない!】だそうだ。初めて見た。
よく分からないが、後から兎さんで実験かな。何やら面白そうな予感がします。
「では、錬金タイム終了です!……それにしても、綺麗ですねぇ」
「ね、VR様々、ダイブ様々だよ」
ミニウルフとの戦闘を終えてから、少し休憩しようと小川を辿り、セーフゾーンである【妖精の泉】に到着した。ここに来るまでには時々他プレイヤーの姿も見たりしたのだが、トレントス狩りに勤しみ過ぎたせいか、気付けば誰も見なくなってしまった。
お陰で美しいと評判の高い妖精の泉が二人じめ出来る。あまりアタノール側の初心者マップでじっくり探索した事は無かったので、実は来るのは初めてである。因みに、元のアバターはコロシアムで遊びたくて、【ヘパイシュタ】にホームを移していた。結局優勝とかは出来なかったけどねぇ。
「だぁ〜〜!ちょい休憩ー」
ボスン、と泉の辺りに咲く花畑に倒れ込む。草花の匂いと程よいふかふか度合いが超気持ちいい。遅れて、隣に御薬袋さんも同じように倒れ込んで来た。
「わぁ、すごいですね!初めてこんなお外で寝っ転がりました」
「いいでしょ、誰も文句言わないよ」
「最高ですね……あ、はなださん、あれ」
「あれ?」
「あれですって、写真!」
あ、忘れてたわ。すっかり忘れていたが、レアな場所やらにも反応するんだったな。妖精の泉は比較的認知されているセーフゾーンだし、なんだったら街中にはここまでの道のりが書いてある地図も売っている。
判定されないんじゃないかとは思うけど、こんなに綺麗なんだし記念に一枚いいかな。どうせなら泉が全体的に写るように撮ろうと立ち上がるってキョロキョロしていると、御薬袋さんが側に近寄ってくる。
「何してるんですか?撮らないんですか?」
「いや、どうせなら全体的に写そうかなーと」
「あ、あぁー……成る程」
「え、何かあった?」
「……い、いえ、別に」
よく分からないが非常に顔が紅潮し、目線が泳いでいらっしゃるお姉様。わたわたする仕草には別にじゃない事があったに違いない。
こちらも負けじとずいっと近寄って(今は女子なので合法だ)、正面から睨めっこだ。
「何かあった?」
「…………緒に、…………撮る」
「え?」
「……一緒に撮るもんだと思ってたんです‼︎」
開き直ったのか限界超えたのか、今度は押し戻す勢いで此方に雪崩れ込む御薬袋さん。おはぁ、役得。
……てか、てかよ⁉︎え、もう、マジで?流石にちょっとグラッと来ちゃいましたよ?幾ら最近女の人怖いなーとか感じてたアラサーも、ぐらついちゃいましたよ?
割と真剣に心から揺さぶられて動揺する。何だこれ、心がぴょんぴょんじゃー。にやける顔を抑えきれず、挙動不審になりながらも絶賛照れギレ中の御薬袋さんの横に陣取る。
「……まっ白さん」
「……なんですか、早く撮ってくださいよ、もう」
「いや、撮るけど……可愛いすぎやろ」
しまった、関西弁羊猫の霊が⁉︎油断していた俺はつい漏らしてしまった心の声に赤面しつつ、更に隣ではついに振り切れた羞恥心から何も離さなくなってしまった御薬袋さんが、無言で、半泣きで少しずつ小突いてくる。
もう取り留めも無くなってしまったので、サッと一枚。ちゃんと二人と泉が写るように撮影した。さて、どうかな……いかん、まだ変な汗出るな。
「はい、チーズ」
「……古ぃですし」
まだちょっと照れてますね。いいんだよ、掛け声なんて。今時の子がどんな掛け声やらポーズやらで撮ってるのかなんて知らない。昔からこの掛け声とピースサイン位でしか写真に写ったことがない。
そんな事より、どうかなどうかな?
___プレイヤーはなだの【パパラッチ】スキル下においての撮影を確認。
___写真内に重要確認物を検知しました。
___ステータスに補正が施されます。
___LUK+5
脳内アナウンスと共に浮き上がる文字。御薬袋さんの顔の隣くらいに【予測】スキルが浮かぶ。残念ながら泉は無反応、やはりただのセーフゾーンのようだ。綺麗だからいいけどね。
そしてLUK+5、か。+値としてはかなりの上昇率だが、いかんせんLUKが直ぐに効果を確認出来るステータスでないため、有り難みが薄い。
「泉は何もないみたいですね。私の予測、で何か上がりました?」
「LUK、運のステータスが5上がったよ。それこそ俺が錬金出来たら実感湧くのかなぁ」
「微妙な感じでしたね。……さて、どうしましょっか?」
「そうだなぁ、明日ボスには挑みたいから……後1時間くらいミニウルフと戦って、お互い1レベルずつ上がったら今日は終わろうか」
「了解です……じゃあ後5分休憩したら、行きましょう」
まぁ、ここまで今日は戦いっぱなし気を張りっぱなしだったわけだから、かなり疲労感は溜まっている。もちろん、俺も大賛成だった。
その5分がまさか小一時間程、泉の辺りで微睡むことになるとは、まさか誰も思うまいよ。




