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定期報告会①

「それでは、報告してくれる?」


朝陽差し込む特務室……ではなく、本日は束内さんと植原さんの私室に居る。決してこの前のガトーショコラのお礼とかでは無く、きちんと仕事として、だ。


お二人は今日もしっかりスーツ姿で、やはり上役等と会う機会なんかも多いのだろう事がわかる。以前のように二日酔いみたいな様子もなく、仕事モードの束内さんを見ると少し緊張する。まぁ隣に緩和剤の植原さんがいるんだけど。


取り敢えずの取り決めとして、各ペア毎に週に一回、金曜日に報告を行う用になっている。土日は束内さん達は休みをとっているようで、その為である。俺達はイベントなんかの関係上土日も来て大丈夫。大体週休2日を下回らなければ問題ないとの事だ。


そして本日がその記念すべき第一回報告会というわけだ。束内さん達は各々のデスクに座り、俺達のデータを閲覧しながら話しを聞くつもりらしい。束内さん達の後ろには大きなプロジェクターが有り、ここにゲーム内で得た画像や動画、資料などを映し出す。


「はい、えーと、今のところ……ギフトで貰ったスキルは有り難く使わせてもらってます」


「識守さんのも、私のスキルもとても凄い……と思います」


「まぁ、そうでしょうね。企画部には強力なスキルを作成するよう頼んでおいたからね」


ん?作成?


「作成って言うと、僕らのスキルはまだ存在してなかったんですか?」


「そうだね。僕達が特務課を任された時に、上に掛け合ってせめて君達が働きやすいようにと交渉したからね」


植原さんはあの時の束内さんは怖かった……としみじみと頷いている。そんな事より、今まで存在して無かったという事は、アタノールの研究院や学者、ギルドなんかは在りもしない【錬金術】を求めてプレイしていたとは、なんと愚かで哀れな事か。


「五月蝿いわよ、植原くん。……で?それがどうかしたの?」


「いや、アタノールのプレイヤーやNPCがちょっと可哀想だなぁと思いまして」


「可哀想、ですか?」


気づいていない張本人である御薬袋さんとは裏腹に、流石製作陣というか、お二人はすぐに気づいたようで居た堪れないような表情をしている。


「あ、あー、そ、それね……だって仕方ないでしょ?そんな早い段階で最上級ジョブやスキルを解放するなんて、ねぇ」


「そ、そうそう、そうですよ。むしろ今回の事で頑張れば成就できる事になったわけですし」


「「むしろ良かった」」


いや、そんなハモられても。大体分かりました、忘れてたか、作成出来てなかったんですね。まぁ膨大なデータを日々更新しているわけだから、些細?な事は気にしたら負けか。


「それで、話を戻すけど。今貴方達に与えたギフトによるスキル、あれは全て規格外。そしてその全容は私達二人も把握していないわ。企画部の人から詳しくは様子を見ろと言われてるのよ」


「スキルに関しては分かった事はあるかい?もちろん、全て話す義務はないからね」


そう、これも取り敢えずの取り決めの一つで【報告会で全てを報告しなくても良い】という事にもなっている。但し、報告しない場合は他で点数を稼がないと、仕事自体が出来ていないと言う扱いになる為、注意が必要だ。


そして分かったことと言えば。


「僕の【パパラッチ】の方は、三半規管の強化、更に写真撮影時にレアな物やアイテム、モンスターやスキルなんかを撮影出来れば、それに応じたバフが付きます。多分、永続的に」


「私の【錬金術師】の方は、メインは【錬金】になります。複数のアイテムを混ぜて、一つにする。ランダム制や結果が確定している物など様々な方法があるようです」


植原さんが話を聞きながら、ひたすらにパソコンに情報を入力していく。後程纏められて上に提出されるのだ。


「パパラッチの撮影にもルールはありそう?」


「うーん……恐らく、レア度が関係してるかと。余りにレアでないものは判定出来ない、かも。ただこれが【レア度】だけなのか、【ゲーム内の希少価値】なのかはわかりません」


微妙なニュアンスの違いなんだが、要はレア度がシステム上高くても、その辺の店で売っていたりしたら、希少価値はないって事だね。その辺りはまだ試していないから曖昧。


「分かったよ、ありがとう。三半規管の強化は?どんな感じ?感覚で答えてくれても大丈夫だよ」


「感覚……なんて言うか、前のアカウントではジャンプはできましたが、空中で回転しながら切った張ったは出来ませんでした。今は逆さま向いてようが、超高速でスピンしてようがしっかり見えますし、動けます」


「へぇ、凄いわね。大概のプレイヤーは空中には対応出来ないだろうし、プレイヤー相手ならレベルさえ上げたら負け無しね」


確かに、余りプレイヤー間で闘うイメージが無かったが、そうかもしれない。しっかりPvPの機能も付いているので、闘うことは出来るが闘技場やイベントでもない限り、余りやっている人は見かけなかった。


あるとしても悪役【ヒール】プレイヤーが、他のプレイヤーからアイテムやらを強奪する為にしている事が多い。俺はまだした事もされた事も、体験した事はないが。


「バフの方はどんな感じでつくんですか?」


「バフは、写真を撮影すると写真にスキルやらアイテムやら、モンスターなんかの名前が浮かび上がります。先日は地名も反応しました。浮かび上がった文字は一定時間で消えますが、他のプレイヤーにも見えます」


「それはまた、難儀ね。ただ記念写真を撮ったり、SNS用に撮ったりするだけでバレてしまうわけね。他人と一緒に撮るのは注意が必要、と」


「そうですね……バフはランダムなんですかね、よくわからない基準でついています。大体が一項目撮る毎に各ステータスに+1~5位でしょうか」


「そしてまたまた、ぶっ飛んでるね……バレたら誰も近づかなくなっちゃうな」


そう、目下の悩みは御薬袋さん達以外にはこのスキルがバレてしまうと、パーティに入る事はおろか、まともに近づく事すら難しくなるなもしれない。誰だってタダで他人を強化したくはないだろうからね。


「そう、じゃあ御薬袋さん。【錬金】はどんな感じ?」


「そうですね……素材二つを一つに合わせて、新たな物を生み出します。出来る物はランダムの物か、結果が分かっているものかを錬金前に選べます。使った素材よりレア度が低い物は出来ないみたい、です」


「要はガチャですね……束内さん好きそうだ」


ふふっと微笑む植原さん。この、意外にも思える控えめな挙動がギャップ萌えという奴なんだろうか。俺も学ばないとな、ギャップギャップ。


「そうねー、沼りそうだわ」


「そんなにガチャ要素好きなんですか?」


「そりゃあ、あの天に祈っている瞬間!祈りが届いた喜び!人が何故、何かに祈るのかの答えね」


「……へ、へぇー」


これは後から植原さんに教えて貰った事だが、束内さんは月のお給料の10%は確実に課金するらしい。ゲームの製作会社なんだし、経費で落ちないか、日々上申しているようだ。


「スキルはこの位かしらね……では次、【呪胎】について、何かあるかしら?」


「何か……とりあえず身体の一部にランダムで刺青が入る。現実での朝の時間帯に所持金半減、敵のヘイトが向きやすくなる、ですかね?後、街中での買い物は難しいです」


「目立つからかい?」


「いえ、NPCはどうやら五使の事を神聖視しているようで。その怒りを受けている俺達にはまともに対応はしてくれません。今買い物はプレイヤー産の物を買うか、御薬袋さんと笹部さんに任せっぱなしですね」


「あ〜……成る程。やっぱりねぇ」


「何かあるんですか?」


「いや、昔からねちょいちょい見かけなかったかい?町外れとか、ちょっとフィールドに出た所に急に祠や社なんかがあったり。あれは五使を奉るものだったのかなぁとね」


あ、あったあった。確かに、なんでこんな所にって怪しまれてはいたけど、特に何かイベントが発生したり、特別なアイテムがドロップしたりするわけもない、よく分からない場所が。


というかやはりAIにもマップ、モンスター諸々製作を任せているせいか、把握しきれていない事が多々あるんだなぁ。良いのか悪いのかは分からないけども。


「解除のヒントとか、ありませんか?このままじゃ、皆さん不便そうで」


「そうねぇ、でもまぁ、不正したってのは事実だから……しばらくしたら解除法も作ってくれるんじゃないかしら」


つまり今は知らないって事ですね、わかります。まぁ所持金の事以外は、今のところ2人1組で動く分には支障はない。今後のヘイト管理が煩わしくなるかもしれないが、呪胎持ち以外と組む事も少ないだろうし。御薬袋さんと組んでる分には逆にプラスの時も有る。


「じゃあ呪胎もそんなものかな……後は……束内さん、何かあります?」


「うーん……貴方達何かある?」


「何か……あ!私、いや識守さんも二人共【超人育成機構】に招待されました」


おっと言っちゃうんですね……まぁ予想した加入条件が合っているのなら、遅かれ早かれ十人の誰かは報告していただろうし、いいか。なんだか囚人のジレンマみたいだ。誰も言わなければ得をするけど、誰か言って自分は言わない場合は損をする、みたいな。よくわからん。


「超人育成機構か、そうか……スキルが判定されたんだね」


「まぁまだクエストの序の序みたいなものでしょ。貴方達担当は誰なの?」


お?なんだかお二人共知っているご様子?という事は五使発生以前から存在はしていたのか。新規クエストではなかったか、まぁそんな事もあるよね……ってかこのゲーム、クエスト総数も日々増加してるのもあるけど、誰も把握してない説あるな。


とりあえず俺と御薬袋さんは自分の担当と指示された事を伝えた。何かヒントが得られればこちらとしても有り難いしね。


「そうね、ハクトは当たりよ、御薬袋さん。あの子はとても面倒見が良いわ。ただ、その分高貴な存在でもあるから、余り意に反すると相手してもらえなくなるわ」


「そして識守くん、アルツについてだが、恐らく新キャラか、レアキャラかになるね。今まで観測された事が無いから正直どうなるか分からないよ、寧ろ率先して報告が欲しいです」


「了解です……でも、アルツにもハクトにも何故か嫌われてるので、中々難しいかもしれません」


「あ、識守くん!それなんだけど、ハクトちゃんが識守くんの事苦手な理由は、実は知ってます」


ここでまさかまさかの事実が発覚、理由有ったんだな……なんか理由有っても無くても一方的に嫌われるのは慣れないな。


「識守くんのアバターの眼が、その……兎のモンスターからドロップした魂で出来てるから。仲間の仇というか、仲間の身体の一部を身に纏ってるように見えるみたいで」


「おぅふ」


それはキツい、そんなのどこの蛮族だよ。同族の身体の一部をぶら下げた輩と真面に会話するなんて、俺だって無理だ。むしろハクトちゃんはあそこまで良く頑張ってくれた方かもしれない。


早いとこ解除しないと呪胎といい、この眼といい、厨二グッズ達がどうも脚を引っ張りがちだ。眼の方も恩恵はまだ少ない、モンスターの索敵に便利な位だが、それも酔うので基本眼帯で封印しちゃってるしね。


「兎に角、超人育成機構のクエストは中々難易度が高いわ。基本的には案内人の言う通りにしておきなさい」


「「はい」」


アルツの言う通り、か……。ハクトちゃんならまだしも、アルツと今後上手くやっていけるだろうか。


「まぁ……こんなものかしら?思ったより新しいことが起きて、私達も嬉しいわ」


「そうですね、この調子で頑張って下さい。業務内容が認められれば昇給ももちろん、ありますからね」


昇給!なんて甘い響き!これだけ待遇良くて、特に特殊な資格が必要などころか、学歴や年齢も問わない仕事が……もうホント、脚向けて寝れませんね。


もちろん、頑張らない理由もないので二人で元気よくお返事して退室する。その間際に、植原さんから「これ考えといてねー」と渡された2枚の書類。白地に所々カラフルなイラストが散りばめられている。


何々……。



【特務課新歓遠足のお誘い】、ですと?




プレイヤー【はなだ】の現在のステータス


L v6


HP240/240(初期100)

MP51/51(初期30)

AGI +28

ATK+19

VIT+12

LUK+12

INT+10

DEX+9

(SP割り振りではなく、実数値で記載)


装備品


右手:【白雲】又は【一角兎の短剣】

左手:【】

頭部:【】

頸部:【旅立ちのマント】

胴体:【ライトメイル】

腰部:【革のベルト】

脚部:【旅立ちの靴】

アクセサリー【導き蜘蛛の眼帯】

      【】

特殊装備品:【一角兎の紅魂】


所持スキル


【パパラッチ】(以下パパラッチ内包スキル)


【レールスライドlv1】【ナイトスマッシュLv1】【隠密Lv1】【追跡Lv1】【聞き耳Lv1】【グルメLv1】【速記Lv1】【速読Lv1】【フラッシュレイ】【交渉人Lv1】【カメラマンLv1】【片手剣Lv1】【短剣Lv1】【暗器Lv1】【カメラLv1】【記憶補助Lv1】【アジリティ補助Lv1】


(以下獲得スキル)

【溜め斬りLv1】【ダブルスラッシュLv1】

【ファイアボールLv1】【ウィンドLv1】

【睡眠Lv1】【回避Lv1】


所持称号

【憎悪に対す者】【落下者】【ジャイアントキリング】【レアハンター】【方位磁石】


主人公達の定期報告会を目安に、時々情報整理しましょう

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