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超、ちょう?③

「ふぁぁ〜……ログアウトするといっつも眠気が強まる気がするよな」


そんな気がするんです。チラッと時計を見ると時刻は12時過ぎて少し。先にダイブルームにいた笹部・御方ペアは居なくなっていて、代わりに下野さんとヤンキー砂塚がダイブ中だった。あ、奥に秋月さんも見えるわ。


この特務課用ダイブルームは休憩室から左手。休憩室から奥側に行くと男女別のロッカールーム、更に右手には仮眠室があるのだが、何やら休憩室がワイワイとしている。分厚めのドアでダイブルームと隔てられているし、ドアの材質も磨りガラスのような物で、誰かいるのは見えるが、実際に誰がいるのかははっきりしない感じだ。


ダイブから起きたてでちょっと痺れる足を解しつつ、携帯を見ると10分前くらいに今会社に向かってると御薬袋さんからメッセージが。じゃあちょっと休憩室で時間潰そうかな。


ドアを開けるとやはり先にログアウトしてきたであろう笹部さんと御方君、それに今時珍しいギャルがいた。盛られた栗色の髪に、同じくらい焼けた肌色、なんか商品が所狭しに並べられた量販店でたむろってそうな上下黒のジャージ。あの子は確か……鈴村さんか。ギャルって、そもそもテレビで昔はこんなん流行ってたよって言う特集でしか、見たこと無かったから生では初めて見たかもしれんね。


「あ、識守さん、おはようございます」


一番に気付いた御方君が挨拶してくれる。基本良い人なんだろうけど、なんせあのプライド感がなければねぇ。


「おはようございます、皆さん揃ってどうしたんですか?」


「おはよう、にはちょっと遅いかもだけれど、丁度いいところに来たわね。これ誰のかわかるかしら?」


そう言って笹部さんから差し出されたのは持参したガトーショコラ。そういや、特に張り紙とかもせず冷蔵庫に入れてたなぁ。邪魔だっただろうか。


「あ、それ俺が作ってきたんです」


「え、識守さんすごすぎ!」


「ほんと。見かけに依らず器用なのね」


笹部さんはあれとして、ギャルこと鈴村さんは特に話もした記憶もないが、距離の詰めかたがえぐい。なんだか他二人はすっかり打ち解けているようで、特段気にした様子もないが。


「そうだったんですね。冷蔵庫開けたら知らない間に沢山増えていて……これだけ既製品では無さそうだったので」


「ね、御方さん一番に食べたそうだったもんね」


「な、ち、違う!只見た目も綺麗で、美味しそうだなぁ……と」


なんだか意外に甘党男子が多い部署になって来たぞ。しかし、鈴村さんがこの特務課で最年少だった筈だが、既に御方君は尻に敷かれている気がするな。彼のあの気質はきっと持って生まれたものなんだろうな。


「良かったらどうぞ、まだあるし。御薬袋さんのだけ残しといてもらえたら」


「あら、良かったわね御方君?」


「いや、だからですね……ま、まぁ良いですよ。じゃあ頂きます」


渋々なのか嬉々としてなのかよく分からない表情をしながら頬張る御方君。笹部さんと鈴村さんはちゃんと頂きますしてから食べていた、偉い。


「本当、凄く美味しいわよ。特にこの濃いめのガトーショコラに酸味のラズベリーソースが合うわ」


「そうですよ〜、パティシエとかなれちゃうんじゃないですか⁉︎」


「本当だ、美味しいですね」


三者三様、ちょっと鈴村さんは褒めすぎだと思うけど、有難い事にお口にあったようだ。


なんだか自分も口寂しくなったので1ピースもらい、残り1つ。皆んなでコーヒーやらを嗜みながら休憩していると……。


「あ、皆さんこんにちは」


お母様とのお食事の後だからか、ちょっといつもより他所行きのというか、ハイブランドな服装をした御薬袋さんが到着した。というより、お化粧の仕方がいつもより大人っぽい紅を使っていたりと、お姉さん感が増して、何となく見惚れてしまう。


「こんにちは、御薬袋さん。先に頂いてるわよ」


「こんにちはー!」


最後の一切れを笹部さんが手渡すと、御薬袋さんはガトーショコラと俺を交互に見て、驚愕の表情を浮かべる。


「え、うそ……作ったって言ってたので、もっと手作り感あるやつかと」


「手作りですけど」


なんで見る前から低評価なんですか。そんなに俺は器用なイメージではないんだろうか……実際には自分は器用貧乏であると思っている。昔から浅く広く、な人間だった。


「まぁ何にせよ、頂きますです」


「はい、どうぞー」


持参した使い捨てフォークで一口台に切り分けて、ぱくり。これで最後の一切れです。しばらく咀嚼していたが、やがてつぎの一口に向かう前にひしっと手を掴まれる。お、おおお?


「とても、とても美味しいです」


「う、うん……どういたしまして?」


「師匠と呼ばせてください!」


「うん?」


目を爛々とさせた御薬袋さんから師匠呼びをせがまれ、引くに引けなくなった俺は思わずイエスと答えてしまう。もうちょっと、詳しく聞いておけば良かったと、贅沢な後悔をする事になるのはまた後の話だ。





「それじゃあ師匠さん。ご馳走様でした」


「ご馳走様、識守さん!御薬袋さんもありがとう!」


「ご馳走様でした、本当に美味しかった」


食べ終わった御薬袋さんは、備えつけられたシンクの方で使ったお皿とコップ類を洗ってくれている。他の三人は先にログインし直すようで、ダイブルームに戻って行った。


さっきまでの騒がしさが嘘のようにしんとした空気の中、食器の擦れる音と蛇口から出る水の音が目立つ。なんとなく、何もしていないのが居た堪れなくなり、とりあえず話しかける。


「ありがとう御薬袋さん、任せちゃって」


「いえ師匠!これからお菓子作りを教えて頂く以上、これくらいはさせて頂きます」


師匠呼びは冗談とかノリでは無かったようで、継続している。割と上手く出来てはいたと思うが、あれだけ料理上手な御薬袋さんがガトーショコラ位作れない事も……えぇー、あるかなぁ。


やがて洗い物を終えた御薬袋さんはこちらに戻り、自分の荷物をロッカーに置きに行く。そういえば結局すぐWAOに戻るか、どうしようか考えていなかったが、本当どうしよう。



荷物を置き終えたらしく、戻ってきた御薬袋さんが隣の椅子に座る。いやー、本当に今日は油断すると見惚れてしまいそうで危ない。


「師匠、お待たせしました!午前は何かありました?」


「その前に、その……師匠ってのは続けるの?」


「あ、まぁ……今日の母との食事でもその話題になったんですが。この春から始めた一人暮らしも、お弁当とかも全て花嫁修行、なんですよ」


「はぁ、花嫁……花嫁!」


花嫁って言うと、あの花嫁か⁉︎白無垢を着てちょっと俯き加減で……え、早くない?早くないのか?今御薬袋さんは22のはず。この位から始める、と言えばそうかも知れないが、そもそも花嫁修行を本気でするという人を初めて見たものでよく分からない。


それよりも気になることが一つ。修行をするということは……お相手がいらっしゃるので⁉︎


「え、ひ、一つ確認なんだけど……お相手は?」


「え?……い、いませんよ、いません!もし、将来に、旦那様候補が出来た時に恥ずかしくないようにと両親から強く勧められまして」


ほっ……ほってなんだ、ほって。別に御薬袋さんにお相手がいたってどうしたと、どうしたと言うのか。まぁとにかく今は将来に向けての修行中のようだから一安心だけれども。


やはりこういう話題は照れ臭いというか、やや話しづらそうに御薬袋さんは続けていく。


「それで、お料理はうちの料理人もいたので教わっていたのですが……いかんせんその方が、甘い物は不得意でして。独学で挑戦してみても、いつも失敗してしまうんですよ」


「成る程、だから師匠、と」


「はい、出来ればご教授頂けたらと。もちろん、負担の無い範囲でかまいませんし、材料費とかは私が全面的にお持ちします!」


なんて言うか、必死さというか、真剣に考えての頼みなんだろう事はしっかり伝わってくる。決して馬鹿にしたり、そんなものと蔑ろにしては行けないと感じる。御薬袋さんは本気で将来の為に頑張っているんだ。


「勿論、俺なんかで良ければできる範囲で教えるよ」


「ほ、本当ですか⁉︎ありがとうございます……正直馬鹿にされたり笑って流されるかなぁと思ってました」


「御薬袋さんが真剣なのは分かってるから、大丈夫だよ。むしろ甘い物を誰かと一緒に作れるなんて嬉しいよ」


そう、学生時代は女子達がバレンタインやなんやで盛り上がっていたが、男子が余りホワイトデーに手作りで皆んなで集まって作ろう!となるわけもなく……そもそも貰えたかどうかは別だが。兎に角余りにも周りに一緒に作れる仲の人がおらず、寂しい思いをしたものだ。


「じゃあ、取り敢えずこの件はまた後日お願いしますね。それで、元に戻りますが、何か変わったことはありましたか?」


俺は一人でログインした時の事を掻い摘んで話す。隠しマップのこと、レムちゃんのこと。アルツと超人育成機構の事は口外無用と念を押されたばかりなので、ちょっと様子を見てみた。ただ、俺の予想が正しければ……。


「ソロで、できるだけ一人っきりになれる場所に、ですか?」


「そう、それがフラグになるクエストがありそうなんだ。只、ちょっと内容が伝えづらいから先に試してもらおうかと」


多分御薬袋さんも超人育成機構から声がかかる条件を満たしている、と思うんだが。今予想出来る条件は二つ。


・何かしらの固有スキルを持つこと

・上位の存在と接触すること、若しくはダメージを与えること(俺達の場合はニッグの野郎だ)


である。両方御薬袋さんも満たしている、はず。ダメージは与えてないだろうが、接触はしているし。流石に御薬袋さんに一人で迷いの森に行けとは言えなかったので、宿の部屋を別室にして、無理矢理一人の空間を作るよう勧める。


「宿で無理なら、ちょっと街の外のマップに出て他のプレイヤーが居ないとこに行ってもらったら出来る……かも知れない」


「えー……あの森で、ですか?」


やっぱちょっと慣れたとは言えまだソロでは怖いか。凄く渋い顔をしている。


「了解了解、じゃあ宿で無理なら待っててくれたら森まで着いていくよ。で、人気が無くなってきたら俺からちょっと離れてもらったら大丈夫でしょ」


「うーん……まぁ、それならなんとか。あれ、識守くんはログインしないんですか?」


「それなんだけど、ちょっと考え事とかしながらさっきのマップの攻略してたら頭がこんがらがっちゃって……小一時間程仮眠しようかなぁと」


仮眠室はこの休憩室の東側、ダイブルームとは反対側にある。ソファや簡易のベットが個別のスペースに備え付けられていて、鍵をかけてしっかり爆睡出来るようになっている。


ダイブすると脳的に疲れるというのもあるが、泊まり込みが了承されている通り、現実世界の夜中にイベントを行う事もあるので、その場合に使えるのも有り難みが大きい。


「そうですか……まぁ取り敢えず宿で試して見ます。無理だったら余った素材で色々試して待ってますね」


「了解、じゃあちょっと寝てきます」


「はい、おやすみなさい」


あ、なんかこういうやり取りいいな……いかんいかん、気持ち悪いぞ、俺。やはり今の脳内には休息が必要なのだ。雑念をふり払い、仮眠室に入る。


どれでもいいんだけど、取り敢えず慣れ親しんだシングルサイズのベッドに転がり込み、カーテンを閉める。窓のブラインドは閉められてはいるが、真昼の太陽は隠しきれず、暗い室内にいい感じのアクセントのように日光が差し込んでいる。


入り口の自由に使っていいと書かれた籠に、置いてあったブランケットを取り、目を瞑る。ダイブの時とは違い、心地よく包まれる感覚に早くも眠りにつきそうになる。


今のところ、会社のホワイトっぷりというか歓待っぷりに毎日驚きっぱなしだ。この仮眠室も含めて、全社内の休憩室や仮眠室なんかは定期的に清掃が入る。消耗品や諸々かかるものも大概経費で落ちるようで、つまるところ社員は皆仕事か休息以外やることがない。


あぁ、こんなにも仕事が心地良いなんて少し前の俺には全然想像も出来なかったな……頑張れ、少し前の俺。未来は明るいぞ。


なんて馬鹿なことを考えている間に、瞼はもう開くのも不可能な程目にくっついている。欠伸を一つし、少し深めにブランケットに潜り込んだところで、俺の意識は途切れることになった。


◆


「あ、おかえりなさーい」


「君が、はなだくんか」


ただいま戻りましたはなだです。少し眠れたからか、思考は大分クリアになったように感じる。


それより何より、御薬袋さんの隣のベッドで足をパタパタさせている、床につくほどまでの金髪の長髪、つぶらで真っ赤な瞳、何処ぞの貴族かと言うようなロココ調の服装。そして何より、白いうさ耳。まごうことなきウサギの耳が生えている、子供。


「え、はい。誰?」


戻って来たらメッセージで隣に一部屋取ったから来るように。と書かれていて、来て見たらこれだ。そのうさ耳お子様貴族は立ち上がるとこちらに近寄ってくる。並んでみると、現実より背の低い、俺の今のアバターより、更に小さい。小学生くらいになるのかな。その小ぶりな体格、可愛い見た目とは裏腹に、俺を見る目は厳しい……気がする。


「成る程……本当に。はなだ、ちょっと見辛いからその眼帯取ってよ」


「こら、ハクトちゃん。取ってください、ですよ」


すかさず横から品行方正な一声。ぐっと押し黙ったハクトちゃんが無言で睨みつけてくる、取れということだろうな、だが断る!


「そうだぞ、ハクトちゃん。お姉ちゃん聞こえなかったからもう一回言ってくれる?」


ほら、ほら言ってみ?


「お姉ちゃん……その眼帯も含めて、不快極まりない頭部全体を取っていただいて構わないのですが、寛大な僕は眼帯だけ取ってくれたらそれでいいですよ?」


「くっ……な、なんだって」


「もぅ……はなださん?」


「……はい」


今度は御薬袋さんに背を向けて、こちらを見るハクトちゃんが究極に腹の立つドヤ顔でこちらを見上げて来た。我らが天使に叱られては、立つ背も無いので仕方なく、本当に仕方なく眼帯を外す。


露わになる左目、そして視界も半分サーモ、既にちょっと気持ち悪い……あ、ちゃんとうさ耳にも血液行き届いてますね。


「……ふぅん。本当に、なんて悍ましい。もう結構だよ」


「お、悍ましい?……え、まっ白さん、そんなに気持ち悪い?」


ハクトちゃんは汚物でも見るような目で俺の左目を見つめた後、さっさと御薬袋さんの真横に戻ってしまう。何がしたかったんだろうか。


「そんなに悍ましいって程では。でも、やっぱりアニメのキャラ感は否めないですね」


「ま、まぁ、そこはゲーム内だしさぁ」


厨二チックなのは重々承知しておりますよ!なんなら魔眼も、呪胎も無くて結構、今すぐ解除してもらいたい。


改めて、と御薬袋さんならお声がかかる。


「ご紹介しますね。こちら私の案内人ハクトちゃん。超人育成機構の一員ですって」


「お、ちゃんとフラグ建ってたんだね。というかハクトちゃん、同僚のアルツ君が言ってたんだけど他言無用なんじゃないの?俺と会って良かったの?」


やはり、御薬袋さんも対象だったようだ。ソロの環境で、というのもこの分だと読み通りであろう。俺からの問いにはウンザリしたように、うさ耳をボリボリと掻くハクトちゃんが答えてくれる。


「君、アルツ君が担当なんだ……彼はまぁ、何というかご愁傷様だね。僕は彼程情熱的では無いから、既に機構に加入した者になら顔くらいは見せるよ。でも君の顔は嫌いだから二度と会いたくは無いかな」


……この子さぁ、ちょっと酷くないですか御薬袋お姉ちゃん!どう反応していいやら、な表情で見つめてみるも上手い返しは無かったようで、御薬袋さんも苦笑いで流す。


というかアルツのあの対応はやっぱ同僚からもそんな目で見られてるんだな。ノーヒントで投げ出されたし、ハクトちゃんから何か引き出せれば嬉しいんだけども。


「ま、まぁ顔は置いといてよ、本当……ところでハクトちゃん。結局のところ俺達は具体的に何したらいいのかな?」


「……はぁ、言うわけないでしょうに。少しは自分のその不快な頭で考えろ。もう僕は帰るよ」


帰る、という単語にはっと身構える。アルツがあんな感じで帰ったわけだし、この子はうさ耳も生えている。このままピョーンと窓ガラスでもぶち破って出られると、溜まったもんじゃない。だが予想とは裏腹にそのままドアに近づくと、普通に開けて手を振りながらその身を潜らせる。


「じゃあね、まっ白ちゃん……はなだは精々僕らの役に立てるよう頑張りな。後、不快だから言わせてもらうが……僕は君らより遥かに年上だよ、敬いたまえ。それじゃあね」


……合法、だと?いや待て、そもそもハクトちゃんハクトちゃん言ってたが、そもそもどっちだ……。アルツ同様、あの子も特別なNPCだろう事はわかる。あながち年上というのも考えられる。いや色んな可能性あるよ。


見送った室内ではまた静けさが訪れる。しかし生意気なのはあれとして、アルツといいハクトちゃんといい、俺は超人育成機構からはとことん嫌われる運命なんだろうか。


「行っちゃいましたねぇ、はぁ……ハクトちゃん可愛かった」


蕩けた顔するエルフのお姉さん、それはそれで綺麗なんだが、さっき俺達を諫めていたお姉さんとは別人のようだ。そしてハクトちゃんが可愛いのも認めよう。


「そうだね、クエストは開始できた?」


「はい、ハクトちゃんが全部してくれましたよ。後新しく【予測】というスキルも頂きました、これを使って成果が出たらまた呼んでよ、との事でしたけど」


え、何それずるい。アルツなんてスキルどころかヒントすら殆どくれなかったぞ。あいつ本当、そういうとこだぞ本当ー。


御薬袋さんがもらった【予測】スキルは大変優秀なスキルで、予測したい物事を少しだけ、予測出来る。例えば、敵がどちらから来る、この宝箱からは何がドロップする、そして一番は錬金の結果を知る事が出来る事。


「どんどん規格外になっていくなー。それに比べてこっちは【空中に留まれるようになれ】だよ。スキルもやり方も分からないし」


「放任主義なんですね」


「とてつも無く良く言えばね」


まぁ何はともあれ取り敢えずひと段落かな。部屋も勿体無いし、また引き払うことにする。現実で眠る前は色々煮詰まっていたが、全て考えても仕方ない事なのかも知れない。


兎に角、俺達の仕事はまだ始まったばかりである。新しい風を吹かすにしても、先ずは土台を固めなくては。


「じゃあ御薬袋さん、そろそろ行こう。今日は何がしたい?」


「そうですねー、じゃあ……何か美味しい物を!」


「た、食べ物か……まぁ、任せなさい!」


フロントに礼を言い、扉を開けると薄ぼんやり明るい、いつものアタノール。未だ業界トップの売れ行きであるWAOには沢山のプレイヤーで今日も溢れかえっている。


さぁ、今日も今日とてお仕事です。楽しんで参りましょう!


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