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運命の記念写真②

「ジャジャーン!クラリネットです」


御薬袋さんから受け取った楽武を高々と見せびらかす道山さん。その姿は……パパから貰ったクラ〜リネットです、言ったら怒りそうだけど。


皆、多分同じ思いをしているようで、生暖かい顔をしている。パパみが溢れ出しそう。


「そう言えば、チェリさん。楽武にこだわるってことは、楽器弾けるの?」


そう、楽武は戦闘だけじゃなく実際に演奏もしなくてはならない。正直ダイブゲームでの戦闘初心者である道山さんには荷が重い気がする。考えることが増えるわけだから。


「まぁねぇ……クラリネットも含めてメジャーなのは一通り。クラリネット専門じゃないからプロ級ってわけじゃないけど、イケると思った!」


「すげぇ」


かっこいい、サラッと本人は言ってるけどそんな一通りとかって出来る人間は限られてるだろう。一種類でもままならない俺が言うのだ間違いない。


「本当に、すごいよチェリさん!今度何か聞かせてよ!」


「えー……まぁまっ白ちゃんに頼まれちゃあしょうがないなぁ〜。クラリネットは無いけど、フルートはあるからそれで」


フルートはあるんだ。吹奏楽部とかだったんだろうかと思いを馳せながら、そろそろと次の場所への移動を始める。お次は鳥野内君の呪胎箇所の刺青隠し用の、何か首元を覆える物を探しに行くことに。


ちなみに、鳥野内君は首の左側面。道山さんはどうも腰の辺り、だそうだ。道山さんのは元から装備で隠れる場所だから、特に対策は必要ない。しかし俺もそうなんだが、隠すことでプレイヤーは騙せてもNPCは超能力で見通してくるようだった、魔眼魔眼。


「首元隠すなら……マフラーとかかな。マントやチョーカーだとちょっとはみ出ちゃうしね」


道山さんの言う通り、マフラー以外にはあまり思い付かない。言われて気になったのか、鳥野内君がぽりぽりと首を掻いている。俺の目の刺青は炎のような感じに見えるのだが、鳥野内君の首元のは十字架のように見える。もしかしたら五使をモチーフにしたデザインで付けられてるのかもなぁ、ニッグ炎吐いてたしな。


果たしてマフラーが何処に売られているのか……マフラーもプレイしていたら見掛ける装備ではあるけど、俺の眼帯と同じで全然メジャーじゃなくて、殆どオシャレ装備に近い。


となると、服飾店になるんだなぁ……ということで着きました服飾店。NPCが経営するお店だからそんな大した物はないだろうけど、お目当ては最安価の物だから問題無しなのだ。


また御薬袋さんが一旦偵察に、俺達は再度3人で店の前に待機する。のんびーり、お喋りしていると、そう言えば……と道山さんが衝撃的な一言を溢す。


「ちょっと私考えてたんだけどね……皆ログアウトする前にお金預けたらどうかな?」


「……え?……あ、本当だ」


鳥野内君は辛うじて返事していたが、俺は空いた口が塞がらない。マジか、そんな事にも気付かない程浮かれていたのか……どんなゲームでも基本あるんだよな、銀行。


「うわ、流石、大天使様……あーコレ、ちょっと凹むなー」


「……ですね」


既プレイ済みの俺達二人は気落ちする。いや流石に気付かんとか……えー……散々利用してたよ、普通に。結構レベル上がってくると所持金も大量だし、購入する物も高価になってくるから、大体のプレイヤーが一度は利用してるんじゃないだろうか。


このゲームではデスペナルティとして、現時点での【次のレベルアップまでの獲得済み経験値から、30%減少】と、【所持金の30%を失う】事となっている。その為、高レベルのプレイヤーなんかは大型のレイド戦の前等には銀行に向かうのが鉄則だ。


なんだったら俺は御薬袋さんと一緒に活動していたわけだし、彼女に預けてしまっても良かったわけだ。はぁ……後から訂正しようもないことがわかるとめっちゃ凹むよね。


「ま、まぁまぁ二人共、とりあえず今日からは預けてログアウト!これでオッケー!ね?」


「うん、ありがとう、そうする……」


ちょっと元気出た。そうこうしていると御薬袋さんが戻ってきて、余りに落ち込んだ雰囲気に戸惑っている。道山さんが事情を伝えると、御薬袋さんもまた、目から鱗していた。


「ほぇ〜……銀行ですかぁ、色々有りますねぇ。あ、とりあえず見てきましたよ、カワセミ君!」


じゃん!と見せてくれた動画には、やはりマフラー位しか種類は無かったようで、後は色がバリエーション豊かに並んでいた。


「マフラーか……このゲーム結構気温管理とかもしっかりしてるけど、暑くならないのかな?」


「あ、あー、そうですね……で、で、でも今は、これしか、ないかなー、と」


ま、それもそうか。暑さなんか気にしてると碌にゆっくり街中にも居れないしなぁ。仕方ないからと、どの色にするかしばらく悩んだ鳥野内君は、結局自身のアバターにも良く使われている薄いグリーンの色のマフラーにしていた。パーソナルカラーだね。


「おー、似合う似合う!」


道山さんの方がわいわい喜びながら、写真機能を使って撮影中だ。写真か……そういや笹部さんもミナヴァの写真撮ってたし、使ってみようか。折角だし、集えた記念写真とでも洒落込もう。


「なぁ、ちょっと提案があるんだけど……折角皆でいるし、記念写真とか撮らない?」


「「「…………」」」


え、ちょっ!俺なんか変なこと……え、やっぱ気持ち悪かったかな。そうだよな、この間までほぼ初対面だったわけだしな。


口に出してから、一気に頭が回転して、ぐるぐる色々考えて(主にネガティヴに)いると、最初にこの沈黙を破ったのは御薬袋さんだった。


「いいと思います!撮りましょう!」


い、いいのか?本当に良いのか?ネットゲーム以外の俗世からかなり離れていたから、正直今時の若者が、どういう風に交友しているのか全くわからないんだよ。俺が学生だった頃は何かある度に写真撮って、SNSにアップしたりするのが流行ってたんだ。今はどうなんだろうか。


「えっへぇー……意外や意外。はなだくんはそういうの苦手なのかと思ってたなぁ」


「え、俺が?」


えぇー、と、へぇーが入り混じったニュアンスの発音でため息をついた美幼女天使。この意見には全会一致のようで、鳥野内君もうんうんと隣で頷いている。


「ぼ、僕は苦手……というかどうしたらいいかわからない、んですけど。は、はなださんはちょっと大人っぽいから、そういう、が、学生みたいなのはダメかと……」


え……えっへ?俺?俺大人っぽいの?皆さんそう見えてるんですか?


「私はちょっと違いますかねー……何というか、ちょっと女性が苦手なのかと?あれ、でもゲームではあんまり?んー、なんでそう思ったんでしょう?」


「あー、まっ白ちゃん、それわかる。私も何というかね……こう、優しいのとかはわかるんだけど、こう……距離?を置こうとしてる気がしてた、からかな?」


あれ、ちょっとなんか違う反応。でも、そうか……自覚はしてなかったけど、ゲームでは確かに余り性別に壁を感じないのはある、か。というか自分然り、中身が異性のアバターの場合もあるからわからないのもあるけど。


それに、現実世界では女性と余りにも近い距離にならない様には気をつけていた。


だから初めの日、道山さんが至近距離で面接ごっこ始めた時は、道山さんが可愛いというのもあるけれど、ちょっと戸惑ったりもしていたんだ。


「あぁ、やぁまぁね、確かにちょっと、本当ちょっと女性経験に疎いからさぁ……まぁ、そんなわけで、とりあえず撮りましょう撮りましょう!」


ちくりと、胸の奥が疼く。大丈夫、大丈夫さ。ここはゲームだし、道山さん達はきっと大丈夫……。


嫌な記憶を思い出しそうになり、我ながらどうなんだというテンションで、無理矢理三人を近くに引き寄せる。


カメラ機能を呼び出し、自撮りモードに設定する。ちなみに、他撮りモードにも変更出来て、他の人にコードを教えて撮ってもらう事が出来る。コードだけで連絡先やらフレンド登録とかしなくていいから、楽なんだよなぁ。


「ここで撮るんだ。なんか、一周周って面白い気がする!初めて皆と買い物しました、って分かり易いしね」


まぁ、服飾店前だからね。我ながらもうちょいマシなロケーションで言い出すべきだろうと思うが、そう言ってもらえるなら、いいロケーションで撮るのは別の機会でもいいだろう。


道山さんに続いて二人も笑ってポーズをしてくれる。万国共通、平和の象徴、ピースサイン!……あ、なんか女性組は指先を丸めて、器用にクロスするポーズをしてる。何あれ、流行ってるのか?


「じゃあポーズしてるし、行くよ?はい、チーズ!」


カシャっと、自分の脳内でのみシャッター音が鳴る。カメラモードではシャッターを切った者以外にはシャッター音は聞こえないのだ。ちょっとパパラッチっぽいよね。


案の定、撮れた?撮れた?と促されるので、一旦自撮りモードを戻して、写真ファイルを開く。まだ始めてからこの写真しか撮っていないので、ファイルにはアイコンが一つのみ。開くためにタップすると、目の前にティッシュケース位のサイズで写真が浮かび上がる。


美幼女大天使、クール系エルフ姉さん、闇を抱えてそうな前髪系美男子、病みに呑まれているツインテ魔眼美少女が写っている……情報過多!胸焼けする‼︎


改めて凄い圧だなと眺めていると……写真内の俺達のアバターの、丁度頭の隣位のスペースに文字が浮かび上がってくる。なになに……【錬金術師】?これ、御薬袋さんのギフトだよな?


他にも次々と文字が浮かぶ浮かぶ。俺の横には【パパラッチ】と【憎悪に対す者】【落下者】【ジャイアントキリング】の文字が。これ所有者のスキルと称号……か?あ、追加で【呪胎】と【一角兎の紅魂】に【白銀の水晶体】も出てきた。他の文字はゆっくり消えていく。


自分の名前の方に注視し過ぎて、道山さん達の方に浮かんでいた文字は見逃してしまった。が、他の覗き込んでいた三人にも見えていたようで、皆唖然としている。


呆気に取られているのも束の間、今度は俺の脳内にアナウンスが。


___プレイヤーはなだの【パパラッチ】スキル下においての撮影を確認。

___写真内に複数の重要確認物を検知しました。

___内容毎にステータスに補正が施されます。

___AGI+2 VIT+3 LUK+4 ATK+1


___反映完了。更なる情報収集を期待します。


お?おお?ウィンドウを開き、ステータスを確認する。すると本来のステータス値の後ろに(+)付きでさっきアナウンスがあった補正が付いてる!


これは……多分レアな物やらスキルやらを撮影すれば、ステータスに補正が付くのか……な?


他人の物まで反映されてるとか、ちょっとどうかと思うぞ。親しくない人以外には知られると不味い気がする。最悪近寄るだけで通報案件になりそうだ。


写された者には全くメリットも無さそうだし、スキルや持ってるアイテムはバレるわ、俺だけ強化されるわでは、ハイエナを極めてるとしか言えない。


「何、どうしたの?」


皆写真の方に気を取られていて、しばらく固まっていた俺に漸く気付いたようで、道山さんが下から覗き込んでくる。ぐぉっ、唐突な破壊力!


「いや、んー……」


どうしよう……言うべきか、言わないべきか。今ならまだ誰もわからない、どうする⁉︎

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