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運命の記念写真①

「おはようございます、識守くん」


「おはよー」


御薬袋さんとの待ち合わせ時間に出社したら、我らが大天使、道山さんがいらっしゃった。思わず面食らうが、良く考えたら幾らフレキシブルな職場とはいえ、皆仕事はしないといけないんだから、普通は被るか。


使っているダイブルームも同じだし、昨日誰とも会わなかったのが珍しいのかもしれない。


ふむふむ……本日の道山さんは前回のスーツ姿から装いを変え、ゆったりしたクリーム色のワンピースに、これまたゆったりサイズな薄い赤の水玉スカートだ。ラフな格好もまたたまらんね。


御薬袋さんと俺も昨日からスーツをやめて、普段着で出社していた。社外秘活動なお仕事な為、外部と接触する機会も少ない。普段着の方が、関係者から疑われた際に事務スタッフと言い張れるようだ。


まぁ、元からそんなに服装規定がある会社でも無いので、受付のお姉さん達や束内さん達程の上役でも無い限り、普段着のスタッフも珍しくは無い。


あ、ちなみに御薬袋さんは……落ち着いた紫のTシャツに花柄のスカートと、今日もナイスだよ。本当この二人といると両手に花よね。


俺?俺は白黒ボーダーのシャツに、黒のスラックス……いいじゃん楽だし!オシャレ番長なんて夢のまた夢よ。


「おはよう、道山さん。今から?」


ちょっと脱線したけど、折角会えたわけだしなんか話しておきたいなー。いや、疚しい思いは……無いとは言えんが、ね。折角、折角だから。


「そうだよー。私もここで待ち合わせしてからダイブする予定……もう来るとは思うんだけどね」


確か、道山さんとペアだったのは……


「お、おはようございます」


鳥野内 静【とりのうち しずか】君。確か俺の一つ下の歳で、自己紹介の時は下野さんに次いで、コミュ障っぷりを発揮していた気がする。いやー、道山さんとペアだなんて、君も役得ですなぁ。


「お、やっときたー!おはよう、鳥野内くん」


ぶんぶんと手を振る大天使は、その点コミュ力お化けだなと改めて思う。我々からしたら自分から話しかけになんて行きにくいから、凄く助かります。


「……えっと、識、守さん?と御薬袋さん、ですよね。お、お、おはようございます」


おい、俺だけ疑問系ついたろ。何でだ。あれか。そうだな、こないだの御薬袋さんの自己紹介は色んな意味で皆見入ってたもんな……同じ穴のムジナだ、許そう。


「おはよう、鳥野内くん。改めて宜しくね」


「おはようございます、私も宜しくお願いします」


俺達も挨拶を返す。こうして話してみると、根が優しい性格なんだろうというのが、しっかりわかる。ただ、人が怖いんだろうな。俺だって、一歩違ったらこんな感じだったかもしれない。


「……や、優しい」


「ん?なんか言った?」


「な、な、なんでもないですよ!」


鳥野内君がなんか言った気もしたが、まぁいいや。俺を差し障りない標準体型の男性とするならば、彼はかなりひょろっとして身長もやや俺より低い。前髪も……というか全体的に不揃いに伸びすぎていて、余計に影がかかって見える。


「二人は確か……【ミューゼス】がホームタウンだったよね」


「そうだよー。すんごく綺麗」


雲上国というだけあって、国全体が雲の上にある、それはもう綺麗。一度でも雲海を見たことがある人ならわかるだろうが、あれが常に見れるぞ。位置的に言うと、世界樹からやや北側のなーんもない山脈が並ぶ地帯の天空。ちなみにこの国から世界樹へは雲を伝って入ることは出来ない。


「いいですねー……こちらなんて、全体的に暗いというかダーティーですし、森は怖いし」


「あはは……ねぇ、なんかごめんね」


そらぁミューゼスと比べると本当に、天と地程の差ですよ、はい。逆に!逆にほら、アタノールはあれだよ……暗めな雰囲気が落ち着く!


何故か勝手に二人でしょんぼりしていると、そう言えばと、道山さんが話しかけてくる。


「こちらは二人とも、【呪胎】を受けているからか、街のショップでは買い物出来なかったんだけど、そっちもかな?」


あー、そうか。あの飲み会の時に教えられていたが、道山さん達はしっかり二人とも五使にキルされている。


自らを【強欲と使命を司る、カクゥノス】と名乗った、ごってごての装飾が施された神父。丁寧な挨拶と、自己紹介の後に視界が光に包まれたかと思うと、「光あれ」と言う囁きと共にキルされていたと言う。


「あー、そうだね、ただ道山さんには前言ったけど、御薬袋さんは呪胎喰らってないからね。なんとかなりそう」


「だよね。それで雪ちゃんに買い物頼みたいなぁと思ってたんだ」


雪ちゃん……御薬袋さんの事か。いつの間にか名前呼びになっていて驚いた。そう言えば自分は昔から友達を呼ぶ時、名前で呼んだことは無かったかもしれない。


そしてまぁ、予想していた通り皆同じように街では買い物は出来ないようだ。俺が何か粗相をした訳ではなくてちょっと安心する。やはりあの五使というのは、このゲームでは神の使い的なモノなのかも知れないな。


「あー、やっぱり愉子ちゃん達もダメだったんだね。もちろん、手伝える事なら……いいよね?識守くん」


「もちろん、大丈夫だよ。じゃあこの後、集合?」


となると、俺達がミューゼスに行く事になるか。まぁ観光がてら御薬袋さんとミューゼスを周るのもいい事だろう。


「そうだね!それで、移動するのにもお金いるし、二人に申し訳ないと思って……鳥野内君、あれ渡しちゃっていいよね?」


「あれ?……あぁ、【天界の啓示証】かな。た、た、確かにいいと思う、よ」


お、それは聞いたことあるぞ。前のアカウントでは持っていなかったが、確かミューゼスに出入り自由になるアイテムの筈だ。これがあるとミューゼスまで一気に転移する事ができる。


本来ならば高額な転移代を払って移動するか、フィールドを長い時間をかけて移動して入国するかの2択だ。しかもこのアイテム、使用制限も無いはずだ。問題は入手法がよく分かって無かったんだよなぁ。何人か入手したミューゼスのプレイヤーはいたが、言ってることがてんでバラバラ。


やれ門番のクエストだった、やれモンスターのレアドロップだった等バラバラな証言。しかもその方法を他のプレイヤーが試しても、確実に獲得したという報告はまだ出てなかったはずだ。


「え、道山さん。それどうやって手に入れたの?」


「えっとね、街のふらっと寄った雑貨屋さんに置いてあったよ。で、鳥野内君が驚いて即買いしたんだよね、そんなに高くも無かったし」


雑貨屋さん……いやいや、マジで?道山さんが嘘を吐いている様子はないし、というかそんなことないし。またランダムな条件を満たした感じかなぁ。


「そ、そういや、あの店!あの店、なんで、買い物出来たんだろう?」


鳥野内君の発言に、棚からぼたもち……違うな、目から鱗だった。そうだよ、俺達は街中では買い物出来ないんじゃん。


「確かに……何でだろうね」


「まぁ、特殊な条件だろうなぁ……にしても良いの?鳥野内君多分、既プレイなんでしょ。アレ、中々価値ある物だよ?」


そう。なんせ入手法が判らず、一応永久的に使える、効果も良いと来たら値も張る。そんなお使い如きで貰うには申し訳ないようは気もするが。


「そんなに価値ある物なんですか?」


「みたいだよ、私はわかんないけど」


女子二人は頭にハテナマーク上ってますが、鳥野内君は多少悩んだ顔で頷く。


「ぼ、僕らは元々ミューゼスにち、近いし。それに……僕ら買い物出来なくて、こ、困りまくってて」


「回復するポーションも買えないんだもんね」


そうか、確かに。こちらは兎ばっかり狩っていたから殆ど攻撃に当たる事も無かったけど、普通にプレイしていれば直進攻撃するモンスターばかりな訳もなく、攻撃されてさしまう事も多々ある訳だ。


更にまだまだ序盤な俺達は、回復スキルなんてギフトに入って無ければある訳もない。確かにこれはここまでしても買い物したいかもしれん……錬金マジ感謝。まぁ御薬袋さんいたから大丈夫だけど。


「じゃあ決まりだな。よっし、じゃあフレンド登録は皆済んでる訳だし、鳥野内君後で俺達に【天界の啓示証】送ってよ。そしたらそっち向かうし」


「う、うん。わかったよ、確かプレイヤーネームは……」


「はなだ、だよ」


話す際に皆んなで腰掛けていた部屋に備え付けられた白いベンチから立ち上がり、一つ伸びをする。ダイブするにせよ、話し合いにせよ、同じ姿勢続くと身体凝るよなぁ、いてて。


「ふふ、おじいちゃんみたいですね」


そこ、うるさい。そんな天使の微笑みみたいな顔でサラッと年寄り扱いしないで下さい、御薬袋さん?


さぁ、ともあれ、今日も今日とて皆で【お仕事】に向かいますよ、っと。


◆


所変わってWAO内、アタノールのホテル一室。前回ログアウトした場所に戻って参りました。


そして俺は早速ウィンドウにアナウンスが来ていたので開いてみると、呪胎により所持金半減のお知らせ。世知辛いねぇ。兎狩りで多少増えていた懐が、一気に元通りってね。


とかなんとかしていると、追加のアナウンスが。【カワセミぐりん】こと、鳥野内君からプレゼント。開封して、使い方を確かめるが、【天界の啓示を受け、天界への出入りを自由にする】と、一言。見た目はちょっと金箔的な装飾が付いた、巻物。


「先使ってみるよ」


御薬袋さんと二人でしばらく手に取って眺めていたけど、埒があかないので取り敢えず先ずは……巻物だし開いてみよう。


周りに巻かれた上質な紐を解き、中身を露わにする。書いてあるのは先程の説明テロップと同じような事……かなぁとか思っていたら、頭に響く鐘の音。


___プレイヤーはなだ、神が貴方を祝福します。

___ミューゼスは神から祝福を受けた、はなだを歓迎します。


「お、おぉ?こいつ……脳内に直接」


「し、識守君、脳内じゃないですよ。頭の上に後光差してますよ」


半笑い止めなさいよ、私が神だ。


どうやら祝福を受けている間、頭上に光が差し込んでいたようで、さながら菩薩だったそう。天窓も無いのに差し込む辺り、スーパーパワーを感じるが、この世界【神】とかいう概念というか存在があるんだなぁ。


「では、私も……えぃ!」


バラっ!と勢いよく広げると、確かに一拍遅れて後光というかスポットライトだね、これ。しかしエルフのお姉さんに神聖なスポットライトが当たるとなれば、なんと美しいことか。周りの漂う埃にすら尊みを感じるぜ。


しばらく見惚れていると「照れる」と一発もらった。バイオレンス。


とは言え、これでミューゼスへいつでも立ち入れる様にもなったし、早速向かう準備をする。フロントにチェックアウトを伝えて、広場の目立たない隅っこに。無駄にリアルなゲームなので、宿から出ないで時間が経つと延泊扱いになるのだ。


「では、教えた通りに。ウィンドウ出して、マップ、ミューゼスをタッチして転移。オッケー?」


「オッケーです」


イメージで転移するのはかなり難しい。そもそも自由に転移出来る事自体がこのゲームでは珍しいので、俺もまだ体験した事がない。転移代払って、NPCに転移させてもらった事ならあるけども。


「では、向こうでね」


あ、ポチっとな……擬音が古いなー自分。なんて考えていると、一瞬周囲が煌めいて、ダイブ時と同じような浮遊感に包まれ、視界も真っ白に。次に目を開くともう、暗くどこからか湿度を感じた、アタノールは消え去り、煌びやかな装飾の神殿。風一つ吹いていないのに、何故か緩やかに動く雲海。


「ここが……ミューゼス。すごいすごい!」


「やー、久しぶりに来たなぁ。相変わらず何というか、ラスボスでも出てきそうな感じ」


きゃっきゃっとはしゃいでる御薬袋さんは完全に、田舎から出てきたお上りさんだ。周りのプレイヤーからは生暖かい視線を感じる。


転移アイテムやNPCによる転移なんかは大概がその場所のランドマークに着く。ミューゼスで言えばここ、【サンシェル大聖堂】。ミューゼスのほぼ中心に存在し、その大きさも他の小さな聖堂や教会の何倍にもなる。大聖堂前の公衆広場には大型の噴水や、ベンチ等が設置してあり、プレイヤー達の待ち合わせや情報交換の場として重宝されている。


俺達もまた、例に漏れずこのサンシェル大聖堂前で待ち合わせ中だ。道山さんこと、【チェリさんバースト】からもうすぐ着くとメッセージも届いている。


「わー、見てくださいよ!雲の上に移動式の屋台ありますよ!」


わかるわかる、ミスマッチ感ぱないよね。


アタノールと同じく、きちんと商業許可を取った店舗なら商売も可能だ。無駄に背景が壮大なせいで、場違い感はすごいのだけれど、ここの【天使の?手羽先唐揚げ】は絶品だ。絶品だけれど……人間とはかくも欲深いものか。


屋台のミスマッチ感にはしゃいでいた御薬袋さんも、店頭メニューを見てドン引きし、帰ってくる。


「え……はなださん。ミューゼス来たことあります?」


「あるよ」


「あの、手羽先って……」


「…………さぁ」


ええー……と遠い目になる御薬袋さんを横目に、少し離れた所で手を振る深緑の髪をしたヒューマンの男と、小さな白い翼が背中からちょっこり出ている赤とオレンジのグラデーションがかった長髪の美幼女天使がこちらに向かってくる。


え、ええっー⁉︎何、何あれ⁉︎全細胞フル動員で、ガン見しちゃう!


あの小さい翼は人と神や天使のハーフという設定の、【ネフィリム】という種族の特徴だ。しかし、あれほど……あれほどまでに神々しいネフィリムには出会ったことがない。


事実、その辺のもっさいネフィリムプレイヤー達からも羨望と憧憬の視線を集めまくっているし、何なら俺と、彼女の隣を歩く鳥野内君もやばい。


「やぁやぁ、まっ白ちゃんお待たせお待たせ」


ご機嫌美幼女天使の登場だぁ‼︎満面の笑み、ちょっとパタパタ揺れる翼、ネフィリムは見習い天使という設定の為少しだけ発光している身体、何より道山さんの顔のベースをそのまま時間退行さしたような、神バランスなご尊顔。これはあきまへん、目覚めてしまうロリ……。


「え、チェリさん?か、可愛い……」


あ、同性にも効果有りか。まぁな、尊い、尊いが限界を迎えつつある。


「そうだよー、頭の上のネームのとこ緑でしょ?フレンドになると人混みにいても分かり易くて便利だねー」


そうだねー……とか言ってると周りからワラワラと人が集まってきている。多分、撮影班だな。普段ならGJものだが、身内にされるとちょっと不愉快だ。ささっと退散する事にする。


「とりあえず移動しながら話そう、めっちゃ人集まって来てるよ」


「あ、じ、じゃあもう、行きたいお店決めてあるので、行きましょう」


鳥野内君はゲーム内でも健在な喋り方だ。ゲーム入ったら性格変わる、というかロールプレイに徹するマンかと思ってたけど、違ったようだ。


指定された店に向かいながら、改めて目立ち過ぎる集団になったことを痛いほど実感する。


クール系(ぽく見える)エルフのお姉さんに、超絶美幼女天使、更に言えば鳥野内君もキョロってはいるがいい顔立ちに仕上がっている。そして極め付けは……


「そ、それよりもはなださん。そ、それは……ご趣味、で、ですか?」


気ぃ遣ったな、気を、遣って、ちょっとお引きになられましたか?まぁね、ネカマの時点で耐性無い人はアレかもだけど、更にツインテール(ホテルで御薬袋さんにされた)、隻眼と来たもんだ。


「そうなんですよー……しかも、リアル魔眼です」


「い、い、痛い……」


聞こえてるよ。


「えー、結構可愛いですよ!ね、まっ白ちゃん」


「え?えー……まぁ可愛い……くはなくはない、のかな」


えー、そこは断言して下さいよ。まぁわいわいしてる内にようやくその店に到着する。


この辺で一番品揃えの多い初心者向けの武器屋だそうだ。ここには先ず、道山さんからのリクエストで来たようである。鳥野内君はしばらく初期装備で行くつもりのようだったが、道山さんはこの国の名産品、【楽武】に目をつけた。


【楽武】とは、楽器と武器を兼用した物で、この国、というか天使達が使用する武器、とのこと。単純に音が鳴る、等ではなく奏でる事によるバフ効果や、特殊効果が売りだ。


戦闘センスもさることながら、楽器の演奏センスも必要、更にネフィリムしか装備できないと来て、かなり使用人口は低いようだ。


が、指折りのプレイヤーが挙げた使用戦闘動画なんかを見ると、確かにカッコいい。


煌びやかな音楽を演奏しつつ、粛々とモンスターを屠っていく者もいれば、軽やかなステップと共にダンスを踊りながら斬りつけていく踊り子のような者まで、一つの楽団を作ったりしてもいるらしい。


それを見た道山さんが、是非に、絶対に、これがいいと、鳥野内君のアドバイス虚しく、決定してしまったようだった。


「さて、じゃあまっ白ちゃん。とりあえずカメラつけながら入店して、【楽武】コーナーを一通り見て来てもらえる?」


楽武については道中説明済みだ。恐らく店員に聞けば名産品でもあるし、十中八九あるだろう。我々3人は全員着いていけないので、御薬袋さんに任せっきりなのである。


「了解です!とりあえずめぼしい物撮り終わったら一回帰ってきます」


ではー、と店の中に消えていく御薬袋さん。残された俺達は特にやる事もなく、店の前の階段に並んで座り込む。美幼女と美痛女の合間に座った鳥野内君は、嬉しいんだか、逆に居心地悪いんだかよくわからない顔をしていた。


「そう言えば、カワセミ君だけまだ連絡先知らないよね。また後で教えてよ」


「も、もちろん。い、い、いいんですか?」


「いいとか悪いとかあるのか?まぁ、基本まっ白さんといるだろうけど、たまにはこうやって遊ぼうよ」


遊びのような仕事のような、不思議な感じなんだけどね。あんま気楽になり過ぎても何も成果を出せないだろうしなぁ。


「えー……ずるい、私は?」


「そらぁ、大歓迎よ。ね、カワセミ君」


急に振られて戸惑っているカワセミ君こと、鳥野内君。しばらく恥ずかしそうにどもった後、もちろん、と小声で答えていた。


なんだかんだとちょっとずつ3人で話していると、御薬袋さんも戻ってきた。お待たせーと言いながら、撮り終わった動画をウィンドウに出し、皆に見えやすい位置で再生し出す。


「おー、すごい、本当にスマホで撮ったみたいにその場で動画になってる!」


「そりゃあ、スマホで出来ることはダイブ端末でも大体できるよ」



動画、写真、翻訳、ヘルスチェックになんでもござれ。必要なら空中に絵を描くことだって出来るし、電話やメッセージも送れちゃう。スマホが出始めた時は携帯型端末の改革と言われたようだが、ダイブ機が出た時は【座ったまま人生をおくれる】と持て囃されたものだ。トイレ位か、不可能なのは。


動画内の御薬袋さんは、店内の様子を一通り見て回って、楽武コーナーにたどり着いたようだ。案内の仕方が、何というか、撮り慣れてない感が愛い。「楽武はこちらでーす」ってピースしながら言わないでよ、可愛いかよ。


そこに並べられたのは様々な形の楽武。正直剣と魔法の王道な戦闘を、本来のアカウントでは重視していたし、使用の条件もあったから楽武はノー知識である。楽器も俺が使えるのはリコーダーとハーモニカ、後トライアングル位かな……正直わからん楽器が多すぎる。


他二人も似たような反応だ。道山さんだけは瞳をキラキラ輝かせて食い入るように見入っている。


「わぁ、これ!これすごいね、指揮棒が剣みたいになってる!あ、この横のフルートみたいなやつも、ちょっとよくわかんない形になってるね!」


いやごめん、元の形も曖昧です……フルートは確か横長の、金管の笛?なんか、こう、偏った知識だが、アニメとかでは音波で幻覚とか見せて来そうな感じよね。


「あ、こ、これは僕もわかります。ギター!」


「残念、ウクレレです」


しょげないでよ鳥野内君、大丈夫だから。小ちゃいギターさ、多分。なんかこう、ハワイアンなね。


なんだか早押しクイズ見たいな感じで動画を見終わった後、しばらく道山さんは考え込み出した。いや、本当片手剣なんて思考停止の択しかない、って位使用法から効果まで多彩。その指揮棒とウクレレとか最早別種の武器でしょ……というか本来武器ではないんだが。


「ん〜……よーし!決めました!」


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