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刺青、ウサギ……そして高まる厨二感④

「うーさーぎーおーいし、かーのーかーわー」


「うーさーぎーおーいし、かーのーかーわー」


「うぅーさぁーぎ、おーいーし、かーのーぉかーわぁ」


「うーさーぎ、おーいし、かーのーかーわー」


【ふるさと】って永遠にこの歌詞で歌い続けれるよね。現在御薬袋さんと再度ログインし、ホテルの一室で歌いながら錬金中である。


しばらく歌っていたが、二人ともこの歌詞以外続きが思い出せず、この歌詞だけをトーン変えながら歌っていた次第だ。しかし、実際めちゃくちゃウサギ美味しかった。食べてはないけど。


しばらく狩りをしたのと、狩り中に周りに生えていた薬草やらキノコやらを採取したおかげで、沢山錬金出来そうだ。


「おー、【特ポーション】2個目ですよ!識守くん!」


そう言ってカラカラと赤い液体が入った小瓶を両手にフリフリ、ご機嫌な御薬袋さん。普通のポーションが只の小瓶、上ポーションになると小瓶に装飾がついて、その上になるとついにラメ加工がされた。ラメて……。


「いや本当、このスキルもそうなんだけど御薬袋さんのガチャ運すごいよね」


「ですよねー。私、昔からスマホやらのガチャは凄かったんですよー!」


いや本当、羨ましい通り越して実生活に影響出そうだ。あのポーション2本で5-6万位の値段にはなるし、それまでにもちょくちょく当たりを引いていた。


ウサギやらその辺の素材やらでこれだ、かなりの収支になる。これは夢が広がりングだなぁ……おっと、余り欲を出さんようにしないとな。御薬袋さんは便利な子じゃなくて、きちんと一人の同僚として付き合いたいし。


「なんか羨ましいような、恐れ多いようなって感じだね……よっし、目標の10回はとっくに錬金出来てるし、次でラストにするか」


「そうですね……いつの間にか寝室がえらい事に」


そう、錬金した物を御薬袋さんのインベントリに回収せずにとりあえず置いていっていたらとんだ無法地帯になっていた。今もベッドに腰掛けてはいるが、手をズラせば大きめの両手剣が転がっていて危ない。


「じゃあ最後は……いよいよお楽しみを使いますか」


「あれですね……錬金が直接触って行う物じゃなくてほんとに良かったです」


アレとは、ウサギ狩りで終盤にドロップした【ホーンラビットの紅眼】である。つまり眼球。いくら内部が宝石のように煌めいてるにしても、角膜や虹彩もなんなら血管までしっかり見える。ちょっと女性にはハードルが高い素材だった、レアドロップなんだけどね。ちなみにもう一つ出たコアの方は今のところ置いておきます。あれはまた使い道があるんだよなぁ。


さぁ、と錬金のスキルを呼び出し、紅眼をセット。この後どうするかなんだよな……結果は判明してるのが1つ、後はランダム……そういえばランダム品も色々してみて分かったが、素材のレア度の最低値より下回る事は無いようだ。


つまり、レア度は1〜10まであるが、レア度2の物を二つ素材とすると、レア度1の物が錬金される事は無い。同じレア度か、その上か、となる。しかし、レア度1と2の物を混ぜるとレア度は1の物も出来る可能性が出てくる、といった感じだった。


そして【ホーンラビットの紅眼】はレア度3、つまりランダムにするならもう一つの素材もレア度3が理想だが、今のところはそんな物はない……【特ポーション】はレア度は2なんだよな。需要が高いだけで。


若しくは、一つだけ結果が判明している【一角兎の紅魂】……なんなのかが分からん!入手した事が無いので、錬金予想画面でもアイテムの詳細は見えない。どちらにしても一か八かにはなる。後はもう一つレア度3の素材を入手するまで置いておくか……。


二人でウンウンうなる。実はこのアイテムはログインして真っ先に錬金しようとしていた。一番いいやつが、やっぱ一番気になりますよねー。


「しかし、どうする?御薬袋さん」


「えー……ここは漢らしく決めてくださいよ、識守くん」


マジか……まぁ、でもな、ゆーて、ゆーてですよ。レア度は3なわけで、俺の元のアカウントもそんな最前線ってわけでもなかったけど、レア度4くらいまでは持っていたしね。そこまで渋る程でも無いかもしれない。


よっしゃ!漢気見せたりますよ!


「よっしゃ!御薬袋さん、【一角兎の紅魂】にしよう!やっちゃって!」


「わかりました……いきますよ?」



ぐぁぁっと、これまで一の勢いでウィンドウの錬金開始ボタンに、御薬袋さんの指がかかる。ぱぁっと同じように輝いて……おぉ?


赤い、まぁこの場合は紅いの方が正しいのかもしれんが、拳より少し小さめの火の玉のようなものがふよふよと、俺達の目の前を漂っている。


これが【一角兎の紅魂】か……で、なんなんでしょう。御薬袋さんは早速アイテム詳細を読み込んでいる。所有してるのが御薬袋さんだから、彼女にしかテキストが読めないのだ。


「どう?見た感じなんか使用するタイプのアイテムっぽい?」


「そう……ですね、恐らく。これで、黒髪ツインテール隻眼魔眼美少女の爆誕ですね……ふふっ」


「いやツインテールちゃうし!……ん?どういうこと?」


「いや、なんというか……【使用者に一角兎の紅魂より抽出されし、魔力を授ける。使用者はその瞳を紅く滾らせ、獣の世界の片鱗を覗く】だそうですよ」


覗く、とか言われると覗かれてる感もするよね、深淵的な。しかし、詳細がファンタジー過ぎてよく分からないが、獣の世界を覗く、からにはスローモーション、とかかな。だとしたら美味しい。そういう認識補助というか、走馬灯見てる時の感覚、と言えば分かりやすいかもしれないが、兎に角希少だ。


戦闘ではもちろん、ある所にはあるカジノとかでも役に立つ。他にパッと予想出来る効果も無いし、もし先述のスキルだとしたら、売ったり交渉したりするには勿体ない。使いますか、魔眼美少女爆誕させちゃいますか。


「多分、多分だけど体感時間をゆっくりにするスキルだと思うよ……かなり有能だけど、使っちゃっていいの?」


「もちろんですよ、むしろ尚更識守くんの方が役立つでしょう。それに、もう私は色々教わったり、戴いたりしてますからね」


そう即答する辺り、本心だと思うし、何より眩しい笑顔がすごい。浄化されそう……最近出会う女性陣は皆神の使いなんでしょうか。


礼を伝えると御薬袋さんからのプレゼント通知が届く。アリさんと同じ方法で送っていて、プレゼントにレア度上限があるゲーム(リアルマネーでのトレード規制や、チート防止のためね)も有るが、このゲームはその行為自体が厳しく取り締まられているため、受け渡しのレア度に上限がない。


この制度があるおかげで、【素材錬金】スキルが公式によりチートと化しているのだ。


そして早速、また【一角兎の紅魂】を取り出し、使用ボタンを押……俺は人間をやめるぞぉぉお、と。


使用した途端に、紅眼はひょいと俺の左目に眼帯を通り越してぶつかると、紅い光と共に吸収された。気持ち暖かいなり。


とりあえず眼帯を外してみる。眼帯をしているから無意識に目を閉じていたのだが、開いて見る。すると……


「おぉ、これは……すごい、サーモだわサーモ」


「サーモ?……よくスパイ映画とかで暗視ゴーグルとかについてるやつですか?」


「そうそう、赤外線で判別してるんだけどね。今この左目も同じように見えてるよ」


そう、今俺の視界は半分通常、半分サーモグラフィーのように熱を映している。御薬袋さんだけが、この部屋で2重にダブって見えていて、酔いそうだ。


「え、ちょっと見たいですよ、見してくださいよ」


「いやどうやってよ」


「……それもそうですね」


いや間!怖いわ、取り出して見せて?じゃないよね⁉︎肩をすくめてるのかなんなのか、ちょっと俯き加減のダブった御薬袋さんは諦めたようにベットに倒れ込んだ。


てかもう、これ酔います。という事で眼帯を再度装着して、本当に魔眼扱いとする。なんか必要な時だけ外そうかな。しかしこうなると中々街中でも外して過ごせないし、戦闘では片方視界が無いというのは、重いハンデだと今日一日で痛感した。


これは……なんとかして左目を解放するか慣れるかしていかないと、色々不自由だな。とりあえず今は眼帯に感謝。



「あ、もう魔眼封印ですね」


「そうだね、正直これ外して5分行動したら現実で吐いてるかも」


想像したら最悪だな……起きたら吐瀉物塗れで高級なダイブ機にいるとか。それは御薬袋さんも想像したのか、うぇっと嫌そうな声を出す。


「……はー、じゃあ、これで一先ず錬金タイムは終了ですか」


「そう、ね。もう余った素材でランダムに挑戦するのも別に必要ないし。出来たポーションは分けっこしよう。かなり良いやつだからね、お守り代りだ」


はい、と御薬袋さんからポーションが届く。他に目立った物と言えば、【一角兎の短剣】かな。3本出来たから1本貰って、片手剣に支障が出た際の緊急用とする。


一応、そんな柔には設定されていないが、各武器や防具には耐久値がある。それを過ぎると【半壊】。更に使い続けると【全壊】となり、修繕に莫大なアイテムや金額がかかる事になる。


その為、緊急用の武器や防具をもう1セット持ち歩くのはプレイヤーの常識みたいになっている。まぁ駆け出しの武器なんかはバンバン買い替えたらいいんだけど、あの雪の剣は大事にしたいし。


「識守くん、この後は?」


「そうだなぁ……このままここでもうちょい座学的な感じで過ごすか、また狩りにでも行くか、とかとかとか?」


「……うーん」


今は二人ともそれぞれ、自分のベッドから天井を眺めつつやり取りしている。邪魔なというか物騒な物は全部インベントリに仕舞い込んだ。


あー、もうこれはあれですよ。5分休憩したら……みたいな気分だ。多分答えは……


「座学にしましょう、なんか、今動けません」


ですよねー。



◆


「で、座学とは?」


「それね、我々結構ウサギを狩ったからね、多少レベル上がったでしょ」


まぁ大体2.3時間位は狩っていたし、俺は2レベル程上がっていた。まぁ特にメチャウマなクエストやら狩場にいたわけでもないので、上等でしょう。ちなみに、現在トッププレイヤーのレベルは119(だった筈)。ゲームによりけりだが、100が限界ではなかったようでまだまだ検証中だ。


「私2つ上がって3レベルになってますね……これって早いんですか?遅いんですか?」


「……微妙、多分錬金したら多少経験値入るみたいだし。俺もメインで狩って同じレベルだから、まだよくわからんね」


このゲーム、システムがよくわからない事でも名を馳せていて、経験値の基準やその他親密度等も可視化されてはいないが、確実に存在はしているのが……個人的な感想だが現実味を感じる。現実も自分の経験値とか、他人との親密度とか、見えないけどあるよね。


「まぁそれはさておき、レベルが上がったという事は、先ずは【ステータスポイント】が貰えます。長いのでこれからはSPって言うからね」


「はい、SP……つまり時々見ていたウィンドウの、ステータスを成長させれるんですよね?」


「そう、まぁ貰ったSPを割り振って単純なステータスは成長させていきます。1振ったから1上がる、というわけじゃなく、そのステータスや職業、あるいは得意なジャンルなんかをAIが判断して、上げ幅を決めてるっぽい……実際確実な情報がないんだよねぇ」


へぇー、と話半分にウィンドウと睨めっこしながら考え出す御薬袋さん。俺もウィンドウと睨めっこ。


通常ならプレイしながらジョブや称号、スキルなんかを獲得していくので、最初は各々自由に割り振るもんなんだけれど、俺たちにはギフトがある。


【パパラッチ】は単純に機動性や隠密性に優れたジョブというわけではなく、その他交渉力や特殊なスキルも内包している。それも踏まえて何を伸ばすべきか……。


一つレベルが上がったら、貰えるSPは【5】。これは確定事項で変動は無いようだった。よって今俺達は二人とも10ずつ、割り振れるわけ。


「えー……私錬金関係伸ばしたいとは思うんですけど、やっぱりINT?でしたっけ?頭の良さ的なの伸ばすべきなんですよね」


「あー、いいと思う。全振り……はオススメはしないけど、たまにネタでしてる人達はいるね。ただ、どこの全振りをしてもピーキーな使い勝手になるから、本人のプレイセンスが重要にはなるかな」


そう、極振りで目立ってやる!っていう英雄思考的なのも、サービス開始直後は流行った物だが、結果的にAGI極振りでその機動力に脳が耐えられず起きたら嘔吐してた、とか、STR極振りでモンスターに追いつけない鈍足マンとかが出来上がったりはしていた。


「じゃあ私はINTに6振って、残りは均等にバラします」


「まぁ無難だね、でもステータスが2.3上がるだけでも体の動かし方とか、大分変わるよ」


言いながら、御薬袋さんは割り振っていたようで、「変わりましたかねー?」と部屋中を動き回っていた。ステータスの割り振りは特にエフェクトも出ないし、側から見ても判りづらい。


さぁ、まぁ俺は……とりあえずパパラッチを活かすためにもAGIとSTRは3ずつ位、上げとこうかな。他は……VIT.DEX.INT.LUKは均等にしとくか。


ちなみに、HP.MPももちろんステータスとして存在するが、これらはプレイヤーの活動、ステータスの割り振り方等から自動で、レベルが上がった際に上昇する。


詳しくは一人で時間を取って検証するつもりだが、パパラッチのプレイスタイルは独特だ。先ず三半規管が大分強化……されることは無いはずだから、恐らく【補助】が掛けられる。これはステータスにというよりはプレイヤー自身に直接だと思われる。


恐らく子供の頃体育の授業で行ったであろう、三点倒立やまぁ逆上がりなんかでもいい。想像して欲しい。並の人間が世界がひっくり返った状態で、果たして満足に動けるのだろうか。


ましてやそれがひっきりなしに、上下左右と体がひっくり返り続けたとする。無理だ、何とか1動作出来たら万々歳。相手を見極めて攻撃するなんてもっての外だろう。


幾ら時代が進んでも人間は人間、宇宙飛行士も未だに厳しい訓練を受けて無重力空間に臨むのだ。


が、もうこのスキルの影響でなければ俺の脳の異常としか言えない程に、何とも無い。


初めてレールスライドを行った時も姿勢は崩したが何ともなかった。ウサギを狩っていた際に樹木に登って空中落下しながらの攻撃を試したが、何とも無い。


御薬袋さんは尊敬の眼差しで見てきたが、内心自分がどうなっているのか気が気じゃなかった。


というわけで、一応、念の為、しばらくはAGIに気を使って振っていくことにする。正直これだけ動けたら他に回した方がいい気もするんだけど……スキルに見合った自分になろうと思う。持ち腐れは良く無いよね、極振り然り。


「識守くんも振り終わりましたか?」


「うん、終わったよ……さてどうする?ログインからまた2.3時間経ったから、現実ではまだ1時間くらいかな」


これで累計4時間前後かな、今日はダイブしていた事になる。普通の仕事時間的には大した事なく感じるかもしれないが、こちとら現実で過ぎた時間の3倍程は、もう働いている事になるのだ。そろそろ切り上げてもいい頃合いだとは思う。


それは御薬袋さんも同じ考えだったようで、ログアウトする流れに。なんでも折角フレキシブルタイムな職場なので、完全自炊で頑張ってみたいそうだ。帰ってからご飯作って……とか考えるだけでしんどい。俺はどうしよっかなー。


ログアウトする為、また各々のベッドに入る。色々考えたりしてたから、かなり疲れた気がする。その分得た物は大きかったな。


その後、現実の世界に戻って来た俺達は少し休憩し、そのまま退社した。御薬袋さんを駅まで送り、そこから帰路へ。


部屋に戻り、買って帰った酎ハイと唐揚げ弁当を開ける。でもまだ8時にもなってないんですよ!マジ神!


明日も、とりあえず御薬袋さんと待ち合わせをしてある。しっかり目覚ましもかけたし、大丈夫だろう、俺。


昨日に引き続き布団との相性はバッチリで、瞬く間に眠ってしまった。

ちょっと説明会は長くなりますよね

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