第七話
「忘れた、ねぇ…」
訝しげに眉を潜める二人。「例えば、自宅とか?」
「そうかもしれないし、夕べの飲み屋かもしれない。記憶が曖昧なんだよ」取り敢えず、そう答えた。
しかし気になる。
奴等は何で、
「何で俺の財布が気になるんだ?」
正直に問うた。
だが。
「さっきから、質問ばかりだな。お前は答える側の人間だと言うのに…」
先頭の男は言った。
「…俺には答える義務も、必要もありません。離して下さい」ま、離された所で、帰る場所なんてないのだが。
ガッ。
不意に首を掴まれ、無理矢理持ち上げられる。
そのまま、呼吸がしにくい体勢に。
「あ、あの…?」「口答えするな。お前にそれを決める権限はない」
男は静かな口調で言った。
まるで、俺の喉元を掴むことなど、何とも思わないかのように。
「お前を生かすも殺すも、俺達の自由だ」造作もなく持ち上げられた上半身に、冷ややかで、かつ無感情な視線を浴びせられた。
…生かすも殺すも、か。
あの日の俺も、そんな風に考えていたのかな。
だから、あいつの首を絞めたのかな。
…それで、俺は救われたのか?
あいつを殺すことで、何か変われると思ってたのか。
思っていたから、殺したのか。
…分からない。
けど、たった一つ、確かなこと。
俺はあいつを殺したから、今、逃げて逃げてこの地に辿り着いて。
そして、今、目の前の男達に命を弄ばれている。
そう言う、運命なのかな…結局。
別に、絶望なんかしていない。
強がり、とかじゃなく。
ただ、怖くないだけ。
生きることも。死ぬことも。
無常感にすら、取り憑かれたような感覚。
だって、俺はあの日から。
全うな人生を歩めないと、分かっていたから。
例えあいつを──殺していなかったとしても。




