第六話
「おい、いい加減起きろ」
その声に、また瞼を開く。
そこには、先程俺に金をせびった男が立っていた。後ろには、俺を殴った男も。…ついでに、俺の血が付いた金属バットを持って。
そんな物騒な物、血の主に見せ付けるなんて…腹黒い奴め。思いながら、辺りを見渡す。
先程、目を覚ました時は気付かなかったが、両手両足をロープで結ばれていた。
いよいよ、本格的な尋問(取り調べ)か。
ま、黙秘権を最大に発揮させて貰うけどね。
…何たって、俺に語ることなど何もないのだから。
大体、警察がバットで殴り掛かる、とか、その他色々駄目だろう。
…あれ。
もしかして、警察じゃないのかな。
そう言えば、拘束されている手足。
手錠じゃなく、ロープが使われている。
…と、すると…。
この男達。
一体、誰だ?
…何のために、俺を拘束する?
目的は金だけじゃない、って訳か。
「いくつか、質問に答えて貰う」男が、また言った。
「…どうぞ。俺の答えられる範囲内なら」言いながら、普通に話せることに気付いた。「その前に…一つ聞きたいことがある」
「何だ」「俺に、水か何か与えてくれたのか?」取り敢えず、問うことに。
「…水道の水を、少々」後ろの男が言った。
「恩に着る」その答えに、俺は考えるよりも先に言葉にした。
「お陰で、助かった」俺を殴って気絶させた相手に向かって、礼を言う。俺は見事にシュールな世界を作り上げた。
「いや。さっきも、喉が枯れてたみたいだし」男は答える。そんな所まで、観察してたのか。
「それにしても…」先頭の男は、俺の頭にガーゼ?を貼付けながら言う。「本当に、財布を持ってない、なんてな」
「だから言ったのに。忘れたんだよ」…よく見たら、これ…ティッシュか?
傷口にティッシュのカスがくっつくだろうが。
…まぁ、お気遣いを考慮して黙っておくことにしたが。
「忘れた?」男は不思議がって聞いた。「…何処に?」
「さぁな」俺ははぐらかした。それしか、手段がなかったからだ。
「忘れちまったよ」




