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twilight world  作者: 江角 稚
3/22

第三話

一体、誰だ?


建物の陰になっているため、薄暗くてよく見えないが……。


まさか。

警察?


もう、此処まで追い付かれたのか。

やはり税金の無駄遣いではない。きっちりと仕事はしているのか。


仕方ない…此処で捕まる…


…訳には行かない。


俺は、周りを見渡した。

しかし細い路地は両側とも壁だ。逃げるための脇道もない。


引き返すか…振り返ると、向こうからも人々の気配。


──挟まれた。


悟った、捕まることを。

逃げなくては。

…分かっているのに、体は動かなくて。


両方向から近付いて来る姿なき敵は、まるで示し合わせたかのように、同時に目の前に現れた。


…不良?

いや、違う。かも、しれない。

鉄パイプやバットを引きずり、近付いてくる集団。それだけ見れば、不良に見えなくもない。


──って、

やばいな…この状況。


どうするか。どうするよ?

ってか、本当にどうすんの?


「おい」視界右側、先頭の男が話し掛ける。「有り金全部寄越せ」


「…どちら様、ですか」掠れた声を絞り出すように、言った。喉の渇きからか、恐怖からか。


見た所、不良とは違うようだが。武器は持っているし、数が数だ。これは…どうしたことだろう。


もしかすると、私服警官かもしれない。…にしては、ガラが悪過ぎるが…。


「お前に名乗る名など、ない」男は答える。「とにかく、財布を渡して貰おうか」


「…無理だな」俺は正直に言った。「訳あり、でな。財布はない」


財布は。


小銭はあるが…当てにならない程度。

しかも、それを取られたら生活出来ない。


「財布がない…だと?」男は問う。


「あぁ」…声が、出なくなってきた。


「馬鹿にするな。今の御時世、何処に手ぶらで出歩く奴がいる」苛立たしげに、男は金属バットをアスファルトに打ち付けた。ガギィン、と、嫌な音を響かせる。


「いるさ、此処に」強がりを言う。しかし、状況は良くない。細い路地裏で、逃げ道はない。左右を武装した?男達に囲まれている。


俺は周りをざっと見た。


感想。…多い。

何だこれは。二十人ずつ、計四十人と言った所か。まるで不良クラスを丸ごと路地に押し込んだようだ。


…何で俺は、こんなに冷静なんだろう。


強行手段に出た男達が、一斉に、金属製の物体を振りかざしていると言うのに。


何か、叫び声が聞こえる。だが、何と言っているのか分からない。


「やっちまえ!!」的な声かな。そんなことを考えながら、頭目掛けて振り下ろされるバットを見ていた。


…取り敢えず、腕でガードしましたよ。


でも、痛い。

腕の痛みに怯んだ隙に、二本目のバットが目前に迫る。


防ぎ切れない。


"ぐぁ…"枯れ切った喉からは、叫びにならない声が漏れた。


…走馬灯。

来ないじゃないか。


死なない、のか?

頭は割れる程、痛いのに。


ちら、と一瞬だけ、流れた映像は。


よりによって、殺した女の苦しげな表情だった。


何てこった…。

俺は罪から、逃れられないって訳か。


妙に納得しながら、俺は意識を失って倒れ込んだ。

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