第二話
この見知らぬ街をさ迷うこと、三時間。
初見の地は不慣れだ。
…しかし、地図を買う訳にもいかず。
もしこのタイミングで地図などを買い、俺がこの街の新参者だと世間に知れたら──疑われることこの上ない。
と、言う訳で。
仕方なしに、徒歩で巡る。昼間とは言え、人通りの多い街を。
もしも今が冬なら、コートの襟を立てて顔を隠すことも出来るのだが…あいにく今は、望みとは正反対の季節だ。
──いや。正確には、もう夏ではない。
暦上では、もう九月下旬だ。それなのにこの残暑とも言うべき蒸し暑さは、真夏を感じさせる。特に、頭上でギラギラ照り付ける太陽とか。
夕べはアスファルトからなる路上で眠ったからか、腰も痛いし眠気も覚めない。きっと眠りが浅かったんだ。──もしくは、殺人のために興奮して眠れなかったか。
それでも、女一人殺し、この街まで命からがら逃げ切った疲れで気を失った、とも考えられるが。
…とにかく。
眠い。…眠い。ねむい。
その三文字が、頭の中をグルグルと駆け巡る。
"眠いなぁ…"声にならないため、心の中で呟く。
そう、喉は未だに渇いたままなのだ。さっき自販機は見付けた。だが、残り少ない小銭を使いたくなかったのだ。
ちくしょう。札入れも通帳も、全部家に置いて来ちまった。
…たまたま小銭入れが上着のポケットに入っていたのは、不幸中の幸いなのだが。
表通りは目立つため、脇道に入る。そして裏道の入り込み具合に驚いた。
"まるで…迷路だな"
迷子になったら最後、抜け出すことも難しい。いや、いざとなったら隠れやすい、とも言い換えられるか。
そんなことを考えていると、前から大勢の人がやって来た。




