第一話
ちょこちょこ書き溜めて、しばらく溜まったら投下する…と言う、マイペースな物を一つ作ろうかと。
頑張って"ハイペースなマイペース"になれば良いのですが。
とか言って、また散策するのでしょうが。理由は、ネタ探しです。
「俺は女を殺した。殺してしまった。じきに警察が、此処にやって来るだろう。その前に、逃げなければ。どうしても此処から、逃げ出さなければ…」
そして気がついたら、俺は狭い裏路地にいた。薄暗さが奇妙な温もりを作り、俺を匿うように抱いてくれる。
さて、どうしたものか。
俺はひとまず落ち着いて、呼吸を整えてから考えた。
…随分と走ったようだ。周りの景色が、何もかもが分からぬ。
まるで、異国の地へと迷い込んだようだ。
土地勘がなければ、逃げるのは不利だ。かと言って、自宅へ帰る気にもなれない。
もしも俺が殺人犯だと知れたら、捕まってしまうから。どうしても俺は、捕まることを避けねばならない。
幸い、仕事も尋ねて来る友人もない。親も、とっくの昔に亡くなった。俺が帰らなくとも、不審がる人物などいない。
かと言って、いつまでも逃げ続ける訳にもいかないのだが。
一体、どうすれば良いのだろう。
しかし、疲れた。これ程の距離を走ったのは、久しぶりだ。
あぁ、もう駄目だ…。
また、意識は遠退いていった。
朝だ。俺はこのまま、一夜を明かしたらしい。人通りの少ない道が幸運をもたらしたのか。それとも、ただ酔い潰れたサラリーマンにしか見えなかったのか。
どうでも良いが、こんなラッキーがいつまでも続くとは思えない。今晩は、何処か別の場所へ行かなくては。
それにしても…腹が減った。喉も渇いている。
それもそうだ。夕べから、何も口にしていないのだから。
夕べは、何があったんだっけ。
上手く思い出せない。
白く細い、女の首筋。
跳ねる喉。
力を込めた指先。
そして、事が終わった後に押し寄せる、引っ掛かれた傷の痛み。
…あぁ、そうだ。
俺は、逃亡中の殺人犯だったっけ。
ふと見ると、両腕には引っ掻き傷が残っていた。まるで、断末魔の叫びを腕に描いたような美術性。
その刻み込まれた作品に、俺の興味はちっとも湧きもしなかったが。
ただ、痛みはない。
残ったのは、ただのミミズ腫れだけだ。
勿論、この傷を見たからと言って、心が痛むこともなく。
何と無く、傷が癒える頃には殺人のことも、綺麗さっぱり忘れられる気がした。




