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twilight world  作者: 江角 稚
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第二十話

斎藤さん(仮)、生きてますかー?(笑)

収まる気のしない寒気に目覚めると、辺りはすっかり真っ暗だった。


俺は夜まで眠っていたらしい。

嫌な方法ではあるものの、ある意味「早く今日一日が終わって欲しい」は叶ったようだ。


周りの者は皆、眠っている。

見張りはいないのか?




しかし、寒い。

そして心なしか、頭がくらくらする。


金属バットを持つ男に、変な薬でも飲まされたかな。

未だにぼーっとする頭で周りを見渡した。


そして、枕元に置かれていた物を凝視したまま硬直した。




そこにあったのは、訳の分からぬ薬とコップに注がれた水道水。


多分、俺に飲ませた物だろう。

薬の封が開いていた。




……ははは、成る程な。

やっぱり俺は、実験台だったって訳か。


そりゃそうだよな。

じゃなきゃ、こんな訳ありの怪しい人間と一緒に生活なんてしないさ。


そうだよ、俺は利用されるためだけに拾われたんだ。

奴らにとっては、捨て猫を弄ぶのと同じ感覚なのだろう。




このままじゃ、本当に何処にもいられない。

何処にも、居場所なんてないんだ。




だって俺は、逃亡者。

ただのしがない、殺人鬼。


だったら、もう此処で全てを終わらせよう。

この逃亡劇の幕を下ろそう。




それで全てが許されるのなら。

それで、刑務所とは言え、俺に居場所が出来るのなら。


黙って消えるのが、一番良い。




俺はふらつく足で立ち上がると、のろのろと公園の出口へと向かった。


これ以上、奴らに迷惑もかけたくなかった。

そして、利用されたくもなかった。


誰かの都合に振り回されて生きるのなんて、まっぴらだった。

かと言って、死にたくもなかったが。




もう少しで道路に出られると言う所で、俺は声を掛けられた。


「何処へ行く」

金属バットを持つ男だった。




何処にも行く場所なんてない。

行く当てなんて、ねぇよ。


「……特に」


「行かせない。お前は寝ていろ」

そう言って、奴は俺の腕を引っ張った。


途端に足がぐらつく。

やはり薬の副作用なのか、意識まで定まらない。


わずかな抵抗も虚しく、俺は元いた場所まで戻された。


「大体、病人は大人しくしていろ」




は?

病人?


何のことだ?




「一応、風邪薬は飲ませたから。休めばすぐに治る」


奴の言葉を聞きながら、ぼんやりした頭で考えていた。


成る程な。

あの薬は実験じゃなく、ただの風邪薬だったのか。




俺は、助けられたのか。

決して、実験台などではなく……。


その言葉を聞いて、安心した。

そして身体から力が抜け、また眠りへと落ちていた。




斎藤さん(仮)が寝静まってから、一言。

「こいつは一体……何処へ行くつもりだったんだ?」


何者なんだ、と更に呟く。

だが深夜の公園、皆が寝静まる中で、金属バットを持つ男の声を聞いた者は誰もいなかった。


生きてるみたいで良かったですが、まだまだ本調子ではなさそうな。

早く元気になって欲しいものです。

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