第十五話
第十五話にして、初めて斎藤さん(仮)以外の人の目線で書かれた文章。
リーダー(仮)は、一人で路地を歩いていた。
彼等のように群れを作るグループは、敵や他のグループから身を守るために、基本的に複数人で出歩くルールのはず。
しかもリーダー(仮)ともなれば、より保身のために単独での外出を避けるはずだ。
……外出、と言っても、元々外に居るのだが。
だが彼は、時々一人で出歩くことを好んでいた。
一匹狼でもなく、仲間から孤立させられた訳でもない。
彼は仲間から信頼されているからこそ、リーダー(仮)なのだ。
ただ──人間には、時に一人になりたい時もある。
そんな折には、気分転換がてら一人で見回りをするのである。
……勿論、手ぶらではない。
丸腰で出歩く程、リーダー(仮)も命知らずではないのである。
腰には短刀が差され、ベルトで固定されていた。
長袖の上着の両袖には、それぞれナイフが隠してある。
滑らせれば、手元に来る仕掛けだ。
靴底には鉛が仕込まれていて、踵落としが脳天に決まれば十分である。
まぁ、それを最大限に武器として使用するのには……本人の、脚の上がり具合にもよるが。
そう言えば、あの二人。
仲良くやっているかな。
俺の最も信頼する部下と、最近入った新人の顔が浮かんだ。
斎藤(仮)は、自らの素性を全く話さない。
俺達も、全く聞かない。
……いや、聞こうとすらしない。
俺達は皆、私的なこと(プライベート)を教え合わずに生きている。
仲間なのに、いや──仲間だからこそ、聞かないでいられるのだ。
……そうだ。
俺や皆が、語りたがらないことを各々持ち合わせているのと同じように、斎藤(仮)にだって語りたくないこともあるはずなんだ。
俺は、何も聞かない。
その過去に、例え何があったとしても。
俺は、そう心に決めていた。
優しい微笑みと共に、一人、歩む。




