↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
twilight world  作者: 江角 稚
10/22

第十話

…で、どうしたことだろう。


俺は、その男の言葉に肯定すべきかどうか迷っていた。


確かに、一緒に生活出来る人達が居るのは心強い。

それも、五十人近くいる仲間達だ。


…だが、迷惑はかけられない。


俺は犯罪者だ。

しかも、逃亡中の。


他の皆には、迷惑はかけられない。


…どうしたことか。

俺は頭を抱えた。




かと言って…今、この誘いを断っても、俺の居場所なんてない。


だから、だから…。




「しばらくの間、お世話になります」


しばらくの間。


俺は、予防線を引いていた。


一時、心を許して泣いた俺だが…落ち着いてしまえば、また元通りなのだ。


元通り、臆病な男のまま。


「もし、迷惑がかかりそうなら…俺は黙って、此処を出て行くつもりです」


「…他に行くあても、ないのに…か?」男は聞いた。先程、俺の頭にティッシュを乗せた男だ。

…あ。傷口、やっぱりカスだらけになっていた。


「例えなかったとしても。皆さんに…迷惑はかけられない」


少し離れた所で、俺を殴った男がバットに付いた血を拭いていた。

水で濡らしたら、錆びるのだろうか。


「…そうか。まぁ、好きにすれば良い」


男は答える。


「元々、訳ありな人間の集まりだ。気にしない。ただ…出て行く時は、一言頼む。考えたくはないが、もし仲間を拉致されていたとしたら…俺はリーダー(仮)として、皆に顔向け出来ない」成る程…この人もちゃんと、仲間のことを考えているんだ。って、


「リーダー(仮)って、どう言うことですか?」


「んー、そのまんまさ。もし俺が死んだら、リーダーじゃなくなるんでな」「それ、何十年後の話ですか…」俺は呆れた。


「いや、そう遠い未来でもないさ」リーダー(仮)は言う。「ホームレスなんて、安定しない生活のままじゃ…明日だって、生きられないかもしれない」


嫌に、現実味を帯びた言葉。


少し前までの俺なら、"ふーん、そっか"で終わる気がした。


だが、今は違う。


ホームレス、に。

多分、自分自身が片足を突っ込んでいるからだ。


そして…きっと、両足を突っ込むことになる。


この身体は、いずれズブズブと──まるで底無し沼に身を投げ出したかのように、この生活に馴染んで行くのだろう。


一見、平穏そうに見える生活の中。


逃亡中の指名手配犯として、


あいつを殺した犯人として、


追われる立場だと言う、恐怖に怯えながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。