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『《夜煌の鎮魂歌》の深淵譚』  作者: 夜櫻 雅織
~《夜煌の鎮魂歌(オルクス・レクイエム)》の怪物船長~

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6/8

第6話

「……! 船長、海軍から探照灯でモールス信号出てるわよ。」

「……こうも明るいと白飛びして何も見えないんだよ、私は。」

「相変わらず目が良いねぇ、ソルは。俺も何となくしか見えないや。」

「“そのまま乾ドックへ向かわれたし”、ですね。ソル。」

「面舵いっぱーいっ!!」

「はぁーい、面舵いっぱーいっ!」


 未だ祝砲が響く海軍艦隊の築いた航路を抜け、ヴェントゥスの操舵によって船が大きく右に曲がる。まだ距離はあるが……それでも、港町を一望するには十分な距離だ。

 女も子供も、勿論男や老骨達ですらもウィス達が海賊というのを忘れ、まるで英雄でも迎えるようにはしゃぎ。手を振り、歓声を挙げている。


 ……全く。


「……♪ Éirigh, lads, the dawn’s upon us!

Tarry not, or the tide leaves ye behind!

(そら出航だ! もたもたするな、置いてくぞ)♪」


「「「♪ By the Cap’n’s word we sail this morn!

Have ye loaded ale, bread, and powder black?

(船長の命令だ! 酒に食糧、弾薬は積み込んだか?)♪」」」


「♪ Grip the ropes now, raise the canvas high!

(ロープを掴め、帆を張れ!)♪」


「「「♪ Toward dream-filled seas we make our way!

(夢溢れる冒険に出航だ!)♪」」」


「♪ Heave the anchor from the emerald deep,

Let the wild wind bear us far from shore!

(錨を上げろ、風を受けてもっと外海へ!)♪」


「「「♪ For treasures hidden beyond the world’s edge,

Free we wander the rolling mara wide!

(まだ見ぬ宝を求め、気ままに海を渡るのさ)♪」」」


 船上での歌は、結束力を鍛える言わば調律だ。いつ如何なる時、疲れてる時や眠ってる時でも、瞬時に仲間を信じて戦える時も。1人では決して動かせない船という大きな生き物の手網を全員で握って操る為に。

 海賊をやるなら酒が飲めて歌を歌える奴じゃなきゃ務まらない。なんたって、自由には必ず責務と信頼が必要なのだから。


 ついでに正気も保てるからな。


「「「♪ Stoirm comes howlin’! Haul the lines with strength!

(嵐が来たぞ、強くロープを引け!)♪」」」


「♪ Rain strikes hard upon the timbers old,

And thunder cries to claim the sea as king!

(荒れる海に、船を打つ雨。雷鳴が我が領地だと吠え滾る)♪」


「「「♪ Fear it not—press onward through!

By the Cap’n’s blessed word!

(恐れるな、進め! 船長の命令だ!)♪」」」


「♪ The roaring gale bends hard our weary course!

(風が帆を捕らえて航路を曲げる)♪」


「「「♪ Pay it no mind—sail onward still!

By the Cap’n’s blessed word!

(構うな、進め! 船長の命令だ!)♪」」」


「♪ No stoirm can reign forevermore,

Seek the light beyond the darkened waves!

(嵐も永遠ではないさ、光を目指して突き進め!)♪」


「「「♪ And send a cannon’s roar unto the heavens!

(ついでに一発、空へ砲弾を打ち上げろ!)♪」」」


「♪ Cry against the storm itself—

None shall choose the path we sail!

(我らが航路を決めるなと、嵐に吠えろ!)♪」


「「「♪ We are the folk of freedom’s tide—

Pirates of the endless sea!

(俺たちゃ自由の民、海賊だ!)♪」」」


「♪ Cry against the world itself—

None shall chain the road we roam!

(我らが航路を決めるなと、世界に吠えろ!)♪」


「「「♪ We are the children of the boundless mara—

Pirates ever wild and free!

(俺たちゃ海洋の民、海賊だ!)♪」」」


 現役海賊の生歌は観客達に好印象だったらしい。歌い終わるなり、ウィス達の歌唱力を容赦なく、かつ圧倒的な音の圧で押し負けてしまう。


「……もう少し、喉を鍛えるべきか?」

「諦めましょう、船長。数の暴力には勝てませんよ。」

「むしろ、この距離で街の端まで届けられたみたいなんだから、十分でしょ。」

「流石俺達の船長、いつ聞いても綺麗な歌声だよね〜。」

「……………………うるさいぞ。」

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