第5話
「総員、《夜煌の鎮魂歌》に敬礼ー!!」
船も随分と軍港に近付き、帆を閉じて大分速度も落とし始めた頃。中央を綺麗に空けるように、という表現にはなるが2列に整列した海軍艦隊の上で数百、数千はくだらない数の海兵達が敬礼する。
ウィス達のような海賊とは違い、正義を主張するがあまりにその制服と同じぐらい無垢で、荒れた海も。その正義だけでは拾いきれぬ極悪非道ですら、何処か塗り潰してしまいそうだ。
全く、いつ見ても嫌な色だ。
「……可能であれば、白じゃなくて青系統の色にしてくれればまだ好感が持てるのに。」
「伝えて参りましょうか?」
「辞めろ、どうせそのまままた碌な会議も行われずに承認されるのが目に見えてる。……それに、幾ら私掠船とはいえ海賊の指示で服の色を変えられるあいつらが不憫だ。」
「ふふ。船長のそういうとこ、俺大好きだよ。」
「お前らは私がやる事なら全部好きだろう。」
「まぁね!」
「船長!」
明るい、黄金ではないが陽の光を浴びて煌めくような黄緑色の髪が風に靡かれて踊る。女性にしてはショートだが、まぁそれも種族的な物だろう。その髪から顔を出す、グラディウスよりは短い細耳がウィスを見つけて嬉しそうにぴくぴくと揺れている。
だと言うのに、全てを射抜くような透き通った黄緑色の瞳は……いつ見ても宝石のようだ。
「ソルか。おはよう。」
「おはようございます! 聞きましたよ、今回は1ヵ月ぐらい停泊するんですよね?」
「いいや、もう少し伸びそうだ。」
「「えっ。」」
「これを機に、船を一新する予定なんですよ。機関室も、出来れば帆ももう少し丈夫なのにしましょう。」
「また私の脱皮を使う気か?」
「えぇ。その為に毎度第3魔導船倉に保管しているんですよ?」
「……あんなにでかい物がどうやってあそこに収まっているんだか。」
「と言うより、あんなでかい脱皮が出来る船長の方が凄いんですよ。ミスリルナイフでも歯が立たない時だってあるんだし。」
「火も効かない、雨も弾いてよく風を受ける俺達だけの帆が出来上がるよ?」
「まぁまぁ。良いではないですか、船長。貴方はそのお力や御名だけでなく、本来であれば海底に沈むだけの皮でも我々を護れると思えば。」
「……。」
「ほらぁ、言い返せない癖に。」
「うちの船長はほんっと可愛いよねぇ。」
「良い加減にしろ、お前ら。海に落とされたいのか。」
「あ、良いよ! 今から俺とこの船、どっちが速いか勝負する!?」
「この船の方が速いに決まってるでしょ、馬鹿なんだから。」
「この船で、船よりも速く航行出来るのは船長だけですよ。」




