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ゆめつながり  作者: 秋和翔
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6.勇気

バレタイン当日。クラスメイトの女子たちは隠れるようにお菓子を交換し合っていたし、何人かの子はクラス全員に手作りのお菓子を配っていた。有難いことに、僕をのけ者にすることなくお菓子をくれた子もいた。久しぶりに胸が高鳴り血が勢いよく体中をめぐった。自分のその単純さに呆れや悲しさといったものを感じてしまった。

 僕はそのお菓子を大事に鞄にいれ、鞄を大事に持ちながら一人で帰っていた。そしてマンションについた。僕はポストを開ける。そこには板チョコと四つ折りされたルーズリーフがあった。僕は少し固まった。誰からだろう。とりあえず板チョコとルーズリーフを取り出しエレベーターに乗った。

 ルーズリーフの中身を確認すると、これを書いたのは幼馴染みの実久のようだった。可愛い絵柄の便箋だとか付箋ではなくて、ルーズリーフであるところが実久らしいと感じた。

僕が緊張しながら読み進めると、内容は僕への謝罪と想いだった。


 お久しぶりです。実久です。

 別れてから全く話をしなくなっちゃたね。あれからそれなりに時間が経って、こんなことになってしまったことを謝りたくて手紙を書くきっかけを探していたとき、ちょうどバレンタインだということに気づいて、これを書くことにしました。

 実は別れたとき、というかその前後もなんだけど、あの頃は感情がぐちゃぐちゃになっていて、きっと 酷いことをたくさん言ったと思う。ごめん。ほんとはもっともっと謝りたいんだけど、長くなってしまうし、今の私じゃごめん以上の言葉が見つからないので、ごめんとしかいえません。その、ごめんね。

 で、一緒にチョコも入っていたことだと思います。ほんとは手作りにしようと思っていたんだけど、別れた人に手作りは相応しくないと思ったのと、きっとポストさんのお口に入らないだろうから止めました。決して私が料理出来ないとか、してみたけど失敗したとかじゃありません。分かった?なんてね。

 私はまだほんとうは好きな気持ちが残っているので、そのチョコは本命だ!といいたいところですが、その気持ちが受け取って貰えないことは痛いほど、痛くて泣いちゃうほど分かっているので、いいませーーーんだ。だから義理チョコです。幼なじみとしての義理チョコ。

 きっと私のこの気持ちは消えるか、他の誰かに移っちゃうと思うけど、後悔しても遅いからね。あと私からのアドバイス。

 傷ついても自分の気持ちを伝えるのは大切。

 傷つかないメンタルは大切だけど、傷つく勇気をもつことも大切。

 私が言うと少しは説得あるでしょ。以上、元カノで幼なじみの実久でした。

                                              

 謝るのはこっちのほうだろ。僕はついそう呟いていた。暖かくなってきたと思っていたのに鼻水が出てくる。やっぱりまだまだ冬だ。外も内もまだまだ寒い。暖かくなる季節は来るのだろうか。エレベーターが開くと、僕は家まで走る。そして扉を開いて自分の部屋に逃げた。部屋の布団を被っても鼻水は止まりそうになく、ズルズルっと鼻水をすう。

 しばらくするとやっと鼻水とか色々と落ち着いた。今日貰ったお菓子を食べる。クラスメイトがくれたのは手作りだった。でもそのときだけは、板チョコのほうが美味しかった。板チョコのほうが甘くてほろ苦くて…。その甘さとほろ苦さはまた冬を感じさせた。なのに暖かさも感じさせる。そんな複雑な味をこれから僕は何度味わうのだろうか。そんなことを心のどこかで思いながら、僕はいつの間にか眠っていた。


 バレンタインから数日が経った。僕は実久からの手紙の返事をしていない。返事をするべきなのか正直分からなかった。返事をするとしてもなんて返せばいいのかもわからなかった。

 ただ実久からの手紙にあった忠告のようなアドバイスが僕の心を大きく揺さぶっていた。

「傷つく勇気…」あれから気が付けばこの言葉を口にするようになっていた。実久は僕に告白したし、付き合っていたころも素直に気持ちを伝えていた。それは傷つかないメンタルをもっていたからではない。きっとあれは傷つく勇気をもっていたから。バレンタインの手紙だって相当の勇気、いや覚悟をして書いたに違いなかった。

 僕も実久のように転校生の彼女に、たとえ傷ついたって気持ちを伝える勇気をもちたいと思うようになっていた。しかし僕がその勇気を手にすることは彼女と別れるその日までくることはなかった。

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