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「那野さん、服を、たくさんお持ちなのですね」

 桃花は感心したように、鞄から出した那野の大量の服を眺めていた。パンパンに膨らんでいた中身は、全て、那野の服だったのだ。

「ああ、それは、貰い物ばかりよ。あたしって、意外と捨てられない体質なのよね…」

「……!そうなのですか! 意外です! とても! 那野さんなら、いらなくなったもの、無用になったもの、役に立たないもの、それら全てをズバンズバン捨てていくかと思ってました!」

「…………は、は、は」

「いえ、服の話ですよ? …えっと、けして、人などとは…」

「い、今、言ったじゃないのよ!」

「すみません」

 真顔で謝られた。

 中々面白い奴である。

「よかったら、桃花にあげるわよ、そのスクール水着」

「…ほっ、本当ですか!」

 欲しいらしかった。嫌味の効かない天然さん。

「あ、あんたねえ! 桃花、何に使うのよそんなもの、あげると言っておいて何だけど…」

「そ、それもそうですねえ…」

 桃花は困ったように那野のスクール水着を広げて置いた。

「…お風呂掃除に」

 ボソッと、桃花が何かを呟いたような気がした。

「え、何だって?」

 那野は聞き返す。

「いえ! いえいえ!」

 この子風呂掃除にと言ったわね。恐ろしい子!

「あげるわ。あげるわよ。あたし、まだ他に持ってるし」

「本当ですか!」

 …そんなに嬉しいか。那野は苦笑を漏らした。


 普段使いそうな服だけを残して、あとは再び旅行バッグにしまった。それらを邪魔にならないよう、さらに部屋に備え付けられた押入れの奥に押し込む。

 やはり、捨てないのか。

 桃花は、よっこいせと大きな荷物を押入れに押し込む那野を手伝いながらそう思った。

 事実、入っていた中で使わない服のほうが、断然多かった。

 那野と桃花はこれまた備え付けられた、立派な衣装箪笥に、それら、那野の生活必需品を綺麗に納めていった。

「おお…古き良き家具ね。意外と入ったわ」

「ああ、それは奥様が、この家に嫁いでいらしたときに持ってきたそうで」

「あら、そうなの。じゃあこれ桐たんすなのねえ。え、何故こんなところにあるのよ?」

「……怜様のお嫁さんにと」

「…そう」

 今は亡き怜の母親とは上手くやれそうだったと今更無駄なことを感じた。



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