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漆
苦しい。苦しい。それでも生きたい。そう思った。
芹何怜という人間は、そう思った。想った。重った。
そして、願った。
叫び始めた命。
どうすることも出来ない苦しみ。
それでも生きていたいと思った。
この世に未練があるわけでもない。
だからこそ、怜は生きていたいと願った。
未練どころか、未練どころか、怜は、何も、何も――――。
この世に自分が生きていたいと思う理由を探し求めて、結局は、それが生きていたいという理由になってしまった。
苦しい、苦しい、それでも、生きたい。
誰か、誰か助けて。
幼い頃に一度だけ発したこの言葉は、誰の耳にも届くことはなかった。




