表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

拾参

「……あれ、だれ?」

 怜はドキッとした。ギチリとそんな音がしそうな、ぎこちない動作で首を那野の方へ向ける。

「…お母さん?」

「…………」

「来てくれたの? 助けに来てくれたのね」

 そう言うと那野はニッコリと微笑んだ。幸せそうな、幸福そうな笑顔だった。

それは、怜には眩しすぎて。まばゆすぎて。

 怜は遮るように、那野の頭に手を置いた。そして、顔をそむけた。

「…あ、あー。お父さんもいるのね!」

 那野は心底嬉しそうに無邪気に笑ってみせた。

今の那野は、小学生のようだった。無邪気な、お嬢様じゃない頃の。

 那野は尚も嬉しそうに微笑み続けた。

怜の手は、いつの間にか那野の髪を優しく撫でていた。

「あははーくすぐったいよー。でもきもちー」

「………………」

「私はねー幸せなんだよー」

「………………」

「幸せの神様ひとりじめー」

 那野は、いしし、と笑った。

「私はね、私は、臆病で、いつも、人を傷つけちゃうんだ。セミ少年元気かなー」

 意味不明だ。セミ少年?

「あのね。私は、怜って人を、好きにならなくちゃ、いけないんだよ。幸せな夫婦にならなくちゃ。喧嘩をしても、またお互い手を取り合うことができるような仲にならなくちゃ、幸せな家庭を築かなくちゃ、ならないんだよー」

 じゃあ何で、お前は―――――

「…泣いているんだ」

「…え?」

 幸せの神様を独り占め? 嬉し泣きか? お前は幸せなのか。

「助けてやる」

「………………」

「…ほんとう?」

「…あぁ」

「ありがとう! ほんとうに? あなたは優しいのね! あなたのことは好きになれそうよ!」

 怜は、『俺は、父親だ』とは言わなかった。


 怜は、夜のテンションだった。怜でいう夜のテンションとは―――――柔和である。

 

 俺は何をしにきた。

怜はそう考えながら気配もなく那野の部屋を去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ