第82話 真夜中散歩からの深夜営業
(おかしな時間に起きてしまった……)
初めて呑んだ種類の酒のせいなのか、
それとも卓球とかいうので熱くなったせいなのか、
真夜中に目が覚めてしまった、そしてなぜか思ったのが。
「このまま寝直すのは、もったいないな」
商業施設で姪っ子に買って貰った外着を纏い、
部屋から出て、階段を降りて県人会館とかいう建物を出る、
管理室でベラベラ氏が居たがあえてスルー、向こうも会釈だけしてくれていた。
(外出はとがめられなかったか)
騒ぐなというだけで、
園内の深夜徘徊は問題ないらしい、
外へ出ると街灯が道を照らしている。
「静かだ……」
しばらく歩いていると、
黙って酒を酌み交わしているオークとオーガが居る、
仲が悪い種族と聞いていたので仲間にもバレると不味いのか。
(平和ではあるな)
夜遅いのに弓矢の練習をしているエルフも居る、
もちろん音は最小限、暗い中でのテストなのだろうか、
森では無くこっちに住んでいても、こういう特訓は欠かさないようだ。
(たまに黒猫獣人が見回っているな)
やだ、やはりこの時間だと少し寒い、
もう少し羽織るべきだったか、少しずつ塔に近づく……
アイリス城も見えるな、さすがに入口は閉じられている。
「あれは……お湯?!」
街灯に照らされ『足湯』の文字が、
きちんと屋根があり真下に浅い風呂のようなのが、
そしてそこに浸かっている人間の女性が、それぞれ一人ずつ?!
「「きゃあああああっっ?!?!」」
「おっと失礼、貴殿らは確か侯爵家の」
「スミッペよ」「アヤッペよ」「「ラブライスでぇ~~っす!!」」
なんだか挨拶を埋め込まれているようだ。
「足湯のようだが、風呂として使っているのか」
「この時間から朝までならと」「特別に、掃除もするのを条件に」
「大変だな、有料の風呂は」「魔石がもったいなくて」「ここなら無料なので」
色々と酷い扱いのようだが、
経緯を考えると致し方なしというか、
アイリスにとってはこれもまた『ざまぁ』に入るのだろう。
「邪魔した、失礼する、そういえば人間専用の寮が出来たのだが」
「その、勝手に行く訳は」「六角堂は狭いですが、野宿やテントよりもは」
「……一応、恩赦をお願いしてみよう」「お願いします」「もう少し、まともな生活をっ!!」
しかし彼女達のしてきた悪行を考えると……
そういえばある意味もうひとつの『ざまぁ』と言える、
ハルクの元婚約者ふたりはどうなったのだろうか、死体はまだ見つかっていないが。
「では失礼する」
「「はいっっ!!」」
足湯から離れ、
真夜中の公園遊具を見てまわる、
これは……回転する檻、あと巨大なオクトパスの滑り台。
(誰でもトイレ、とかいうのもあるな)
ふと開けてみると清潔で灯りもつくが寒そうだ。
「裏には自動販売機か」
帽子とかシャツとかスウェットとか、
下着まであるな、安いお土産だ、あとパンの自販機、
もちろん飲み物の自販機も……ホットココアというのを買って一飲みする。
「ぷはぁ、よし、あの塔に入ってみるか」
夜中で噴水は止まっているが、
ハルクパークレジデンスの商業エリア入口は普通に開いている、
入ると半分くらいの店は閉じているが、半分はやっているようだ。
「ハンバーガーショップ、そば屋、朝まで寿司という店もあるな」
お姉ちゃんカレーもしっかりやっている、
朝7時から翌朝4時20分まで、と書いてあり、
奥では母娘が普通にキッチンに、無表情で座っていて怖い。
(入れば表情は一変するのだろうが)
黒猫獣人は睡眠時間が2時間程度で大丈夫なのだろうか。
「おお、ゲームセンターがまだやっている」
こちらは24時間営業と書かれている、
アイリスに付き合わされて少しやったが、
あのクレーンゲームというのは確かに面白かった。
(……やめておこう、気が付けば魔石が無くなっていた、まである)
こうして進んで行くと……
『スペシャル洗体マッサージ 黒魔猫』
妖しいピンクの看板、
なぜかスッキリした表情のドワーフが出てきた、
それを見送りに続けて出てきたのは……彼女は!!
「あらダンバムさん」
「ハコベラ殿、城でのおもてなしは」
「今夜は必要ないということで、こちらで勤務を」
なかなかセクシーな姿、
これはもはや下着姿のようだ。
「入られますか?」
「いや、いい」「ではまた」
うーーーむ、
魔石いくつ必要かくらいは聞いても良かったかもな、
こうして真夜中の商業エリアを観終わったのち、私が行った場所は……!!
「失礼する」
「へいらっしゃーい!」
「ベラタイショウ、全部乗せラーメンとライスを」「へい、空いてますからお好きな席でどうぞー!」
真夜中のラーメン&ライス、
おそらく、いや間違いなく……美味しいだろう、
わざわざ裏門近くの『猫猫軒』まで歩いてくる価値はあるくらいに!!
(陛下には、さすがに少し薦め難いな)
ここで壁の文字に気付く。
「タイショウ、『出前はじめました』とあるが」
「お届けしますよー、電話を一本いただければ、すぐに」
「そうだったのか……」「最近入った弟子のナンベラ、デンベラ、カンベラのうち誰かがお届けします!」
こうして食べた真夜中のラーメンは、
本当に美味しかった、そう、身体に沁みるくらいに。
(夜中の徘徊も、悪くないな!)
電話番号とやらを教えて貰った、
さあ、夜が明ける前に帰って寝よう。




