第80話 とりあえずの住居からの住民登録
「まず、そもそも県人寮とは何ぞや? という話になるのですが、県民寮、県人会館、県民会館とも言いまして、
元々は東京へ出る地方民のための施設で、大学へ通うための寮というのが一番の使われ方だったのですけれども、
少子化に伴い地方からの出稼ぎ、もしくは移住する方々の住居が決まるまでの仮の宿ということでして、管理は……」
延々と喋り続けるベラベラ氏、
ハルク殿がそれをさらに解説してくれる。
「ようは王都に出た時に、同じ地方の領民が固まって済む宿です、すでにこちらにはウェアウルフ用、
オーク用、オーガ用、エルフ用、ドワーフ用が建ててありまして、単身者用が多いですが家族用もそこそこ」
「ふむ、食堂が広いな」「洗濯も風呂も供用ですね、タワマンは部屋が限られてますから、まず様子見の方はこちらへ」
とはいっても綺麗で快適だ、
寮というともっと、むさ苦しい場所を想像するのだが、
空調も効いているし、照明も素晴らしい、それに自動販売機とかいうのが多い。
「素晴らしいな、とりあえずの住居とはいえ、元辺境伯領の皆も喜ぶだろう」
一階を見て周った後は二階の住居へ、
真っ先に入ったベラベラ氏が早口で紹介する。
「こちらが独身部屋ですね、収納もそこそこあってベッドにテーブルにテレビ付き、
衣服の部屋干しなんかも出来ますし内線もあるので部屋同士の会話も可能となっております、
ちなみに出前を頼んだ場合は自分で一階まで受け取りに行って下さい、宅配便は専用ボックスが……」
三階には二人以上で済める部屋も、
そして四階は家族用か、いやこれは仮宿と言わず、
ずっと住み続ける事も出来るな、と気がつくとアイリスとフィーナがいつの間にか居ない。
(屋上は……やはり居ないが物干しが設置されている)
そして風が心地よい。
「ここで花火を見ながらバーベキューをする手もありますよ、
以上がウィリパテル民会館の地上部です、それで地下ですが、
基本的には物置、倉庫ですね、あと地下通路なのですがタワーマンションまでの……」
こうして地下へ行くと、
居た、アイリスとフィーナが地下の部屋で、何か遊んでいる。
「アイリス、それは」「卓球ですわ」
「ダンバム殿、これはなかなか楽しい競技だ」
「このベラベラが説明致しましょう、卓球というのはテーブルテニスとも言いまして……」
何でも部屋が余ったので『卓球場』とかいうのにしたらしい、
他は本当に広い倉庫でむしろここを借りてアジトにしたいという冒険者も居そうだ、
あと掃除道具は廊下の床を勝手に磨いてくれる物など、そしていよいよ行き着いた場所は……!!
「はいっ、ここから『ハルクパークレジデンス』の地下と繋がっています」
「おお、またしても動く廊下ではないか」「行きと帰りの間は普通の廊下ですから運動不足の方はこちらを!」
「ダンバムさん、今夜はこの県人寮に泊まっていただく予定ですが、とりあえずはこのまま商業施設へ行きましょう」「では私はこれにて」
ベラベラ氏と別れ、
ハルク殿に言われるがまま、
歩道エスカレーターというのに乗りながら会話。
「確かに寮も良いが、あの『タワーマンション』に住みたいと殺到すると思われるが」
「そうですね、ですから隣に『ハルクパークレジデンス2』を建てて空中でも繋げましょう」
「……私も住む事は可能か」「アイリス、どうする?」「大歓迎ですわ」「だ、そうですよ」
しかし家賃が大変そうだ。
「それはいつ、出来るのか」
「魔石さえ溜まれば一瞬です、そうですね、エンシェントドラゴンと大規模な狩りへ行けば十日くらいで」
「そんなにすぐか!」「辺境伯領の、城塞都市の元住民がまとまって来る第二弾には間に合わせますよ、頑張ります」
こうして商業施設に到着すると、
またもや黒猫獣人が待っていてくれた。
「商業施設支配人のサブベラです、ダンバム様、正式な住民カードを造ってしまいましょう」
「良いのか?!」「園長の奥様の叔父にあたる方ですし、園長からも是非にと」「と、いうことです」
「ありがたいハルク殿」「ちなみに、わたしのお小遣いを少し分けておきましたわ」「良いのか」「足りなくなったら、ねだりますもの」
苦笑いしているハルク殿、
おそらくフィーナを使うのだろう。
(これで私も、この公園の正式な住民に……!!)
心躍ってしまうではないか。
「叔父様、移住するとなったらわたくしと同じマンションにしますの?」
「この塔で良いのか?!」「それとも新しく出来る隣のマンションですの?」
「ハルク殿」「希望に沿うようにしますが、実は新しい方の最上階は、国王陛下の別荘にしようかと」
それは喜ばれるであろう。
「……陛下と相談させて貰う」
「ちなみに『ハルクパークレジデンス2』は61階建てにします」
「更に高いのか?!」「別荘とはいえ、陛下の住居より高い場所に人もドラゴンも住まわせられませんよ」
こうして私は、
顔写真付きという住民カードを造って貰ったのであった、
しかも、かなりの数の魔石が入っていた……うむ、これは、土産を買おう!!!
「してハルク殿、今夜は」「最上階のレストランです、綺麗な夜景を見ながら」
「実は私たちの住むハルクの家から繋がっている、特別個室があってな」「本当かフィーナ!」
「叔父様、色々と懐かしい話などもしたいですわ」「そうだな、アイリスと積もる話でも」「では商業施設のご案内を」
こうしてサブベラ殿に、
あちこちを見せて貰ったのだった。
(それにしても、アイリスとハルク殿の仲の良さよ)
フィーナもしっかり寄り添っている、
これが、幸せになった姪っ子の姿か……
本当に、夢でなければ良いのだが、夢心地がずっと続けば、続いてくれれば……。




