第186話 競馬場からの意外な願い
「ほう、綺麗な芝であるな」
「はい陛下、ここが競馬場です」
「広いわ、風が気持ち良いわね」
王妃様もご満悦、
いやほんと贅沢だなここ、
スタンドからゴール前までわざわざ出てきた甲斐がある。
「ええっと、上からも見られますが」
「ここで良い、して馬は」「丁度、出てきましたよ」
六本足の馬の魔物、
荒ぶってる荒ぶってる、
普通の人間じゃまず手懐けられないらしい。
(しかし騎手は黒猫獣人AIアンドロイドだ)
入って来たのは合計9頭、
短時間で調教できた頭数としては上出来だ、
そして比較的近いメインスタンド側からスタート。
「お待たせ致しました、只今より試走を始めます」
おおマイクベラさんの声、
おそらく8階の放送席からかな?
ゲートに六本足の馬が何とか入っていく、あっこれ左回りか。
(9番の馬が最後に入って……ゲートが!)
ガシャッ、と開いた!!
「さあ一斉にスタートしました芝2400m、1周して帰って参ります、
まず先頭に躍り出たのはノリベラ騎乗の7番、続いてはユタカベラの1番……」
「ほう、これは速い」「普通の馬とは比べものにならないですね」「いやはや騎乗技術も素晴らしい」
わかるんだ、さすがは陛下、
それにしても前世からの感覚からすると、
馬に名前が付いてないのが、なんだかしっくりこない。
(まあそれは馬主の特権か)
いつかちゃんと競馬を開催出来るようになったら、
馬主はもちろん満員のお客さんを入れて興奮したいな、
それにはどのくらいかかるんだろ、結婚式の日にはオープンさせたい。
「ふむ、向こう側の直線でぶつかり合っているな」
「えっフィーナさんよく見えますね」「なんとかな、これは上の階から見たいな」
「イザベラさん、斜行とか妨害とかは審議なんじゃ」「魔物ですからね、噛みつかない限りは許容しましょう」
そして馬群は4コーナーを回って、
直線コースだ、姫が背伸びして見てるな、
おお横に広がって良いレースだ、みんな頑張れー!
「さあ2番と3番、エビナベラとタバラベラが競っている、
しかし大外から一気に8番がやってきた、これは凄い脚だ、
最後方からごぼう抜き、一気に先頭に立った所でゴール、オーサキベラ騎手の勝利です!!」
自然とみんな拍手、
うん、これは素晴らしい、
早く1日12レースやって盛り上がりたい。
(あっ、勝った馬と騎手が陛下の前まで来た!)
そしてヘルメットを脱いで一礼するオーサキベラさん、
陛下も満足そうに頷いているな、気に入って貰えたようだ。
「ハルク殿、この競争は確かに面白いのう」
「はい、売上が期待できます」「入場料のことか?」
「あっそうか、これ賭けるんですよ、どの馬が勝つかに」「なんと!」
そこから説明しないといけないのか、
とか思っていると陛下の息子さんが飛び跳ねてる。
「父上、この馬に乗る! 走って勝つ!!」
「ほうラング、機種になりたいと申すか」「ここで、ここで!!」
「という願いを息子が出しておるが」「ええっと黒猫獣人だから乗りこなせる感じですね、はい」
これまた意外な願いを、
でも普通の馬のレースもやるようになったら、
前世だと子供が騎手するポニー競馬の全国大会もやっていたな。
「乗りたい、乗ってあんな風に勝ちたい!」
「イザベラさん」「子供の個体を幼い頃から人工で育てれば、あるいは」
「時間がかかりそうですね」「もしくはワイバーンレースでもしますか!」
写真判定が大変そう。
「……ハルク殿、思ったのだが」「はい陛下」
「ここを騎士団の訓練所にするのはどうだ」「えっ」
「これだけ広いのだ、あと内側に砂のコースもある、歩兵の訓練にも良かろう」
これまた意外な提案、
てっきりこことは別で造らされると思っていた、
でも確かに、スタンドもあるし競馬非開催の日は騎士団の訓練に貸せるな。
「わかりました、その方向で!」
「園長、そろそろ陛下に競馬開催のご説明を」
「そうですねイザベラさん、ではスタンドの中で」
寺銭とか儲かる仕組みを説明しなくっちゃ、
うん、上手くいけば他の場所に右回りのコースも作れるかもねっ!




