第177話 姉上からの真面目な話 後編
真面目な話、
姉上から出た『イアン』という名前、
深く深く考えたら、ようやくその正体が出てきた。
「あっ、イトコだ!」
「そうよ、手紙の送り主はイアンの実家」
「叔父でしたっけ」「かなり遠い伯爵家だけど何度かウチに来た事あるわ」
あー、2度くらい顔だけ見たような、イアン。
「そのイトコから、どういった手紙が」
「そもそもイアンの立ち位置、わかってる?」
「兄上の次、兄上に何かあったときの跡継ぎ、ってコレ確か父上から聞いた!」
そう、僕が追放される時に言ってた!!
「まあそうなんだけど、イアンは我が国の第二都市プラッタで、
ずっと勉強しているのよ我が辺境伯家のために、御爺様からの命令で」
「あー、ステファトフ爺ちゃん、今回の件で死んだって聞いたけれども」
今回って旧辺境伯領、
前の城塞都市が滅ぼされた件ね、
結構時間経ってるけど……僕のせいではない、多分。
「なんだか今でもそれが生きてると思ってるみたいなの伯爵家ごと」
「えええ、滅びたのに気付いていない?!」「まあ、かなり遠いから」
「それでも王都で聞くでしょう」「第二都市にずっと居るみたいよ、送り主の住居もほら」
本当だプラッタからだ。
「で、手紙の内容は何と」
「辺境伯家からの仕送りが途絶えて久しいがどうなっているかですって」
「いや僕に言われても」「そうね、だって宛先は父上ですもの」「じゃあ無視でいいんじゃ」
首を左右に振る姉上。
「厳密には辺境伯当主宛てなの」「と、いうことは」
「どうする? きちんと就学完了させて、何かに使う?」
「そういえば父上は僕より遥かに優秀だって」「そりゃあハルクに比べれば誰でも……と、当時はねっ!!」
うん、姉上の肌が変色したのが見えた、
言い直してすぐに治ったけれども……しかしう~ん。
「ていうか面識はあった気がしますが会話した記憶が無いんですが」
「でしょうね、無視してたから」「そうだったんですか」「存在自体を認めてなかったみたいよ」
「……認めてて僕を虐めていた姉上は」「謝まるわよごめんなさいごめんなさい何なら全裸土下座で」「いや肉親のは」
ていうかアイドル衣装がもはやそれに近い。
「それでどうする?」「いや放っておいて良いんじゃ」
「んー、嫌な思いをするかも」「姉上が来た時みたいに?」
「もう、それクライヴもだけど父上、主に母上のせいよ、言い訳はしないけど」
姉上、絶えず軽く呪いに怯えているな、うん、ざまぁだ。
「そもそも父上兄上が死んだのを知らないと」「でしょうねえ」
「じゃあ手紙が僕に来てるなんて」「それこそハルクが追放と言う名の死んだままに」
「そこは知ってるんだ」「私にも連絡来たものクライヴから嬉々として、だからきっと」
まあ確かに死んだら『死にましたよ』の手紙は出せないか、
それこそ出すなら僕の仕事だ、ていうか存在自体忘れてた僕も悪いか、
でもあっちはあっちで最初から僕を無視していた訳だしなあ、うーん。
「それで、そんな手紙を黒猫獣人から渡された姉上も困ったでしょう」
「なんでも私は数少ない父上側の、あとクライヴ側の生き残りらしいわ」「だからですか」
「でも私の今の給料で支援できると思う?」「おむすび2個が限界ですね」「おにぎりのこと? まあそうね」
追放されて来た時も持参金とか無かったもんな、まあ僕もか。
「で、姉上は僕にこの手紙を回したいと」「現辺境伯でしょ」
「まあ継ぎはしましたが、正直言って父上兄上母上関係とは、言わせて貰えば姉上とも義務は」
「裸でベッドにでも行けば良い?」「いや急にそんな何を、ってあくまで全裸土下座のことだよね? ねっ??」
嫌いな実姉が全裸でベッドに潜り込んでくるとか何の罰ゲームだよ、しかも子持ち。
「そこまでですわ」「ほーら正妻ストップが入っちゃった」
「じゃあこの手紙は無視するの?」「イアンって僕の事を無視してたんだよね?」
「そうね、だからハルクが返信したらびっくりするでしょうね」「無碍にして良い?」「相手は一応は伯爵家よ」
ここ微妙なんですよ、
辺境伯っていうのは規模がピンキリだが、
一応は一般的に伯爵と同程度とされている、この世界の話ね、前世は知らね。
(まあ実際には、こっちは国王陛下とエンシェントドラゴンの後ろ盾がある)
とはいえ一応は同盟貴族になるのか。
「アイリス姫は公爵家としてどう思いますか」「無視で良いですわ」
「フィーナさんは」「姫の言う通りだ」「かといって手紙破るのもなあ」
「私はお奨めしないわ」「姉上それはイアン側としてですか」「辺境伯家の出戻り娘としてよ、子供を奪われたね」
ちょっと呪いが浮き出て慌ててる、
でもまあそこまで悪意の無い嫌味なのかすぐ消えた、
とにかく真面目な助言ではあるらしい、うーん、ここは……
「ハートちゃ~ん」「なぁ~あぁ~にぃ~☆」
「電車のホーム見てて、リストラした部下に線路に蹴落とされて幼女になったおっさんとか居た?」
「元ネタに怒られるゾ☆」「それはそうと黒猫獣人なりに聞いててどう思った?」「あくまで事務的に現状書いて絶縁すれば~?」
つまりは正式に無視しろと、
ウチに今後無視されるとなると、
色々と堪えそうだが、やられた事をやり返すだけだ、倍返しになるかな?
「じゃあ丁寧に事の成り行きと、僕から見たイアンとの関係を整理して書いて、
今後一切、援助もしないし絶縁する、同盟貴族でもなくなる事をイアンと辺境伯家に出すよ」
「あっ嫌な予感が」「姉上、それは」「イアンがここへ追放されて来る」「姉上みたいに?」「どうするのよ」
ラブライス! に男性メンバーは要らないなあ。
「ウチには捨てるなって追記しておこうっと」
結婚式も招待しなくて良いよねっていう。
コンコンッ
「失礼致します」「あ、どうぞ」
「リリッペちゃん、そろそろ」「あっマネージャー!」
「姉上、これから営業?」「ええ、タワマンで」「じゃあ目一杯、露出衣装で踊ってきてね」「いやああぁぁぁ……」
これが地下アイドルの現実である、いやほんと、真面目な話。




