第178話 根回しからの貴族派閥
夕食は第2タワマンでピザ&パスタ食べ放題レストラン、
店長のチョイ悪黒猫獣人おばさんことジローベラモさんのワイルドなこと、
見た目とその雰囲気から言って只者じゃあないね、なんとなくだけど口を開けば、
『アタイも昔はさ、若い頃は殺しと薬以外の事は全部やったさね』
とか言いそう、いやあくまで偏見です接客は普通だったし!
娘さん(という設定)のルーズソックスベラさんとギャルベラさんが、
ちょっとそのやんちゃ、いやお転婆か、を受け継いでいる感じがこれまた……
(で、宰相閣下ファミリーを招待してのディナーの場で御相談です)
ただ今回は料亭みたいな密会ではなく、
自らピザやらパスタやらサラダやらを取りに行くビュッフェスタイルなので、
双方の家族が集まっての、ややオープンな感じ、まあ周囲に聞かれて困るような人間は居なさそう。
「ほう、つまりハルク辺境伯は独立して新たな派閥を作ると」
「宰相閣下、ベストはそれなんですが、黒猫貴族の道は遠そうなので」
「まずは先に叔父の所の伯爵家と手を切って、余計なものを削ぎ落とすとでもいうか」
まあ旧領民を一時的に受け入れてくれた、
近隣の貴族とはそこそこ上手くはやって行きたい、
って言っても王都への道の途中にあるってだけの関係だけどね。
(派閥と、ご近所づきあいは別ってことで)
確か僕が前の辺境伯で役立たず息子だった頃の記憶だと、
ってそんなに昔じゃないけど、近隣は結構ウチの農産物やらの、
おこぼれで美味しい思いをしていたはず、そのあたり現在はフィーナさん&黒猫の誰かの担当だから今どうなってるのかは知らない。
(だからとりあえず、その辺りは置いといてですね)
叔父&イトコんとこの伯爵家と切れれば、
派閥という意味ではウチは完全独立になる、
そうなると国への発言力は弱まるがそれは以前の話、いまは直だ。
「逆に変なのがわらわらと寄ってくるぞ」
「ですか、まあそうでしょうね」「アイリス姫の公爵家のように、国王派閥に、分派になるか?」
「そこまで近すぎるのもちょっと」「陛下のために働くのではなかったのか」「我が国の貴族は全てそうですが」
建前上はね、反国王派貴族だって、
名目上は、建前は陛下のための貴族だ、
中央のそういう争いに興味は無いけどってアイリス姫はそのとばっちりで追放されてきたんだっけ。
(ラブライス! の古参2人なら詳しく知っていそう)
まあ必要になったら聞こう。
「ふむ、ではこうするのはどうだ、ウチの派閥に」
「ええっ宰相派閥ですかあ?! ってそれもそれで陛下と近いのでは」
「やはりそう感じるか、まず整理するとだな、とその前にドリンクバー失礼」
宰相自ら汲みに行った。
「あっ、アルコールは別料金ですからー!」
「わかっておる、呑むのは話が終わってからだ」
この隙にフィーナさんが、
ささだーっと来て僕に耳打ち。
「無理して宰相派に属さなくとも、もう我々は無派閥でも1つの大きな、一大派閥だ」
「まあそりゃあそうですけど、とりあえず話を聞きます、もちろん最終決断は今ここでは出しません」
「どんなに美味しい話でも飛びつくなよ」「それよりフィーナさん、ほっぺにデザートピザのオレンジソースが付いてますよ」
宰相閣下が家族のテーブル経由で戻ってきた。
「妻と子がこの店は王都にも出ないのかと」
「基本、ここのお店はハルクパーク限定ですがテイクアウトなら黒猫ドローンで」
「王都までか!」「冷めやすい溶けやすいのは苦しいですが」「それは良い事を聞いた」
話を戻そう。
「宰相派って国王陛下派ですよね?」
「そもそも宰相は国王の相談役であり唯一と言って良い、ストップをかけられる関係だ」
「あ~昔、父上が夫婦みたいなものだって言ってた記憶が」「それも厳密には違う、派閥が別だからな」
難しいのね。
「では宰相派に入ると」
「国王陛下の傍に居ながら対等に近い関係で物が言える」
「物申せるってやつですか」「ハルクパークの、辺境伯の目指す位置はそこではないのか?」
そこも微妙に違うんだけどなあ。
「すっごく極端に言いますが」「何だ」
「嫌な思いをさせられた相手以外とはみんな仲良くしたいです」
「すなわちそれは」「派閥争いはもうこりごり、と僕もアイリスも」
遠くで、ってそれほど遠くでもないが姫も頷いてら。
「宰相派閥から側室を出してやろうと思ったのだが」
「いやいやそんな」「さすがにフィーナ嬢ほどの巨女は難しいが」
「お心遣いは感謝ですが、実は新たな側室のメドがですね、フィーナさんとは別で……」
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一方その頃、夜のとある公園では。
「こんばんわ、はい差し入れのおにぎり12種を2個ずつ」
「あっ黒猫さん、ピンクのマフラーの」「ありがとうございますピンクベラ様」
「それでスージーさんケティさんにご質問なのですが」「はい」「何でしょうか?」
おまけで無糖紅茶ドリンクのペットボトルを2本渡すピンクベラ。
「イアンというお方を御存じですか?」
「えっと、聞いた事があるような、無いような」
「……あっクライヴ様のいとこですね、何度かお姿は……はっ」
クライヴ様、と言ってしまった事に口を押えるケティ。
「特に親交は」
「いえまったく」
「むしろクライヴ、に下がるように言われました」
ふむふむ頷くピンクベラ。
「わかりました、その頃はまだお二人が園長との繋が理の可能性があると思っていたのかも知れませんね」
「あのそれで、そのイアン様が何か」「ひょっとして私たちを身請けしていただけるとか? でも私たちはハルク様に」
「それでは失礼致します、そうそう、冒険者も沢山来るようになるので、ここへ迷い込むかも知れませんよ、掃除をお忘れなく!」
去って行ったピンクベラ。
「ケティ、それではひょっとして」
「ええケティ、ハルク様と何かしら繋がりが……!!」
妄想に近い期待を抱いた2人であった。




